ファーウェイCFOの孟晩舟容疑者がカナダで逮捕された後、保釈金を払って釈放されました。これに伴い、ファーウェイが中国政府の国民監視体制に深くかかわっていることが明るみに出ています。
2005年、中国公安部はいわゆる「平安都市計画」を立てました。これはビデオ監視システムを主軸として都市部住民を監視するシステムで、「天網プロジェクト」とも呼ばれています。
この「天網」システムにより、中国当局は監視カメラや顔認証などを駆使して都市住民を監視し、農村地域では「雪亮(シュエリアン)プロジェクト」と呼ばれるシステムを使ってテレビや携帯電話などから個人情報を収集し、住民を厳格な監視下に置いています。この「天網プロジェクト」と「雪亮プロジェクト」のビデオ監視システムにファーウェイが深く関わっているのです。
2014年に発表された『中国平安都市発展白書』には、中国の「平安都市」ハードウェアサービスプロバイダ市場においてファーウェイが主導的立場にあり、全面的な「平安都市」製品とソリューションを提供したことが記されています。
時事評論家 夏小強氏
「ファーウェイは、江沢民時代に完成したネット情報検閲・ブロックシステムの金盾に関与し、ファイヤーウォールの製造に関わり、ネット上での人々の活動を監視している。さらに、ファーウェイは天網プロジェクトと平安都市プロジェクトに大きく関わった」
中国当局の「平安都市」計画については、昨年までに1億7000万台もの監視カメラが中国全土に設置されたことが明らかになっています。公安部門が直接掌握する「天網」監視カメラはその中の2000万台で、その他は中国共産党の管轄下にあり、一部はすでにネットワーク監視に組み込まれています。今後3年間で新たに4億台の監視カメラが追加設置される予定です。
時事評論家 夏小強氏
「ファーウェイが構築したこれらの民衆監視システムによって、すべての中国人が当局の監視対象になったと言える。全員が当局の囚人だ。一人一人が当局の人質となってしまった」
天網には無数の監視カメラのほかにも、顔認証という重要な機能が備わっています。世界最高の顔認証技術を有する中国の科学技術企業のいずれもファ ーウェイと緊密な協力体制を敷き、当局の「天網プロジェクト」に深く関与しています。
時事評論家 夏小強氏
「顔認証システムという高度な技術を国民の監視に利用している国など、世界中を見渡しても中国だけだ。なぜならこのシステムは個人のプライバシーを侵害するからだ」
江沢民の息子、江綿恒(こう・めんこう)の主導で整備された「金盾 」プロジェクトにおいて、ファーウェイの製品が全国で広範囲に使用されています。例えば2000年12月には、金盾プロジェクトのコア設備にファーウェイのネットワークアクセスサーバー(A8010 Refiner)が採用されました。
ファーウェイの技術向上に伴い、中国当局はビッグデータプラットフォームを通じてナンバープレートや顔、Wi-Fiなどのデータのリアルタイムな検索と分析を実現しました。ファーウェイのウェブサイトには、同社が新疆ウイグル自治区当局と提携し、公安用監視ビデオなどのクラウドプラットフォームと監視システムの建設を支援したと記されています。
ファーウェイは中国国内で当局に民衆監視システムを提供しているだけでなく、他の独裁国家の民衆監視にも深くかかわっています。
米情報部門の高官は、ファーウェイがかつてアフガニスタンで、タリバン政権に電話通信システムを設置したことを明らかにしています。また米下院情報委員会は、ファーウェイがイラン政府に、反対派を監視するための無線測位技術を提供したと発表しています。ファーウェイはこれにより、イランの電気機器会社Zaeim Electronic Industriesと技術提携を結びました。
時事評論家 田園博士
「タリバン政権がテロ集団だということは誰の目にも明らかだ。中国当局とファーウェイは利益のために、アフガニスタンにおける国家戦略と利益のために、ファーウェイの技術者を派遣してタリバンの電話システムや通信システムをアップグレードした。これは我々中国人の数千年に渡る道徳観念と教えに完全に反するものだ」
米国の電子工学専門家・龔書佳(きょう・しょか)博士はラジオ・フリー・アジアの取材に対し、1999年にドイツの多国籍企業シーメンスで働いていた時にイラクの電信事業に入札した時の例を挙げました。当時、イラクは大規模なモニタリングシステムを要求しましたが、シーメンスはこの種の技術が欠けており、また職業倫理的な観点からも不適切と判断しました。その結果、落札したのがファーウェイでした。龔さんは、ファーウェイにはモラルを考慮する姿勢がないと指摘しています。