米国のトランプ大統領が12月19日に署名したことで「チベット旅行法」が成立しました。これにより米国は、米国人のチベット立ち入りを阻んだ中国政府高官に対し、米国入国を拒否することができます。
この「チベット旅行法」では、米国務長官が90日の間に米国民がどの程度チベットを訪問したかを評価して国会に報告すること、そして米国人のチベット入りを阻んだ中国当局の高官を名指しし、議会に毎年報告書を提出することが求められています。
この法案によると、中国政府は米国人の記者や外交官、一般旅行者を、何の規制もなしにチベットに迎えなければなりません。そうしなかった場合、米国側は関連の中国政府要員を処罰することが規定されています。処罰内容には、ビザの発給拒否や米国への入国禁止などが含まれます。
ダライラマ法王チベット宗教基金のダワ・ツェリン代表はこの法案について、非常に画期的で重要な意義を持つと評価しました。
ダライラマ法王チベット宗教基金会 ダワ・ツェリン代表
「外国メディアやそれ以外の人がチベットに入れなかったと訴えると、中国政府はチベット入りを禁止したことなどないと言い放つ。米国は法律を利用して、中国がチベット入りを許可していないことを証明する。中国が米国人を受け入れないなら米国も法律によって制裁すると決めた。これは、毎年米国議会に報告する義務もある」
米ワシントン在住の人権派弁護士、葉寧（よう・ねい）さんは、これは歴史の節目となる大事件だと述べ、このことから、米国の対中政策が根本から変化したことが分かると指摘します。
ワシントン在住の人権派弁護士 葉寧氏
「中国に一方的に最恵国待遇を与えることから、平等待遇に舵を切った。相手の出方に遠慮はしないということだ。毒を以て毒を制すと言うが、これは非常に厳しい。対中政策の根本が180度変わったと言ってよい」
「チベット旅行法」が今年９月に米国下院を通過し、12月11日に上院を通過した後、主な発起人である共和党のマルコ・ルビオ上院議員は、この法案は長年の米中関係に欠けていたものだと述べました。中国の外交官、ジャーナリスト、旅行客は米国各地を自由に旅行できるのに、中国は一度たりとも米国市民の自由なチベット入りを許可したことがないと指摘しています。対等外交の原則にのっとり、二国間で相手国の市民に平等な権利を与えるべきだと主張しています。
2008年、チベットでは僧侶による大規模な抗議活動が起きましたが、当局による弾圧を受けました。その後、チベットは当局によって立ち入り禁止区域に指定されました。現在、外国人は当局に特別許可を申請しなければ、チベットに入ることはできません。
ワシントン在住の人権派弁護士 葉寧氏
「中国当局は、チベットで行われているチベット民族絶滅政策や、それによりもたらされた結果を西側のジャーナリストに暴かれるのを恐れている。だからそもそも西側メディアはおろか、旅行者までもこの地に入れようとしない」
米国に本部を置く「チベット国際キャンペーン（ICT）」のマッテオ・メカッチ会長はトランプ大統領の法案署名後、これは米国が中国当局に反対するチベット人を支持した、歴史的瞬間だと述べました。
ダワ・ツェリン代表は、この法律はチベット問題の解決に一定の役割を果たすはずだと考えています。
ダライラマ法王チベット宗教基金会 ダワ・ツェリン代表
「これは非常に重要なタイミングだ。私たちは、米国が中国の政府高官個人を直接指摘した時に、非常に効果的だと信じている。もちろん、チベット問題を一足飛びに解決できるわけではないが、非常に良いスタートだと思う」
時事評論家の林和立（りん・わりつ）さんは、米国はチベット問題に係わる中国人高官を米国に入国させないだけでなく、米国内の彼らの財産を凍結することもできることを挙げ、この影響力は過小評価できないと述べています。
葉寧さんは「米国はこの50年間、中国に最恵国待遇を与えてきたが、米中関係は非常にアンバランスだった。米国があらゆる面で対等な条件を中国に要求した場合、中国当局に非常に不利になる」と分析しています。
ワシントン在住の人権派弁護士 葉寧氏
「この流れがいったん始まったら、勢いは止められないだろう。平等な待遇という名の神器がいったん奉られたら、中国はすぐに行き詰まる。知る権利や通信の自由、言論の自由や出版の自由などを中国当局が保障できるわけがない。これらすべてが、中国当局の核心的利益を揺さぶるからだ」
ホワイトハウスの前首席戦略官兼上級顧問、スティーブン・バノン氏はかつて、中国当局は米国の最大の戦略的競争相手だと率直に述べ、両国の政治制度、イデオロギー、文化や宗教などは相いれないと指摘しました。バノン氏はまた「米国は今、最も重要な時期にいる。米国の超大国としての実力を発揮して中国の共産党政権を封じ込め、これを倒すことも可能だ」とも述べました。
