中国人旅行客がスウェーデンで起こした、現地警察官に対する「当たり屋」さながらの行為や、国営テレビ局記者が英国で騒ぎを起こした事件はどれも国際世論をにぎわしました。一方、現地の中国大使館は当事者を擁護し、人権と言論の自由の侵害だと主張しています。では同じ事件が中国で起きた場合、当局はどのように対処するのでしょうか。
中国では「当たり屋」事件が頻発しており、ネット上では「まだまだ躍進する国民運動」と揶揄されていますが、最近ではこの運動が国外まで広まったようです。
9月上旬に中国人観光客3人がスウェーデンのホステルで大騒ぎし、「人権」を叫び警察官にぶつかって倒れたふりをした様子が、「スウェーデンニュース」で短編コーナーにまとめられ、中国語の音声まで付けられました。
駐スウェーデン中国大使館がスウェーデン警察とテレビ局を激しく批判し謝罪を要求したところ、番組側は「中国に住んでいる中国人」に対しては謝罪しましたが、中国政府に対しては揶揄する姿勢を崩しませんでした。
では、同じことが中国で起こったらどうなるでしょう。
ニューヨーク大学の客員学者で人権派弁護士の滕彪(とう・ひょう)さんは、一般中国人が「人権」を叫んで警察に「当たり屋」をやったら、悲惨な結果になるだろうと語っています。
ニューヨーク大学の客員学者 滕彪氏
「すぐに騒動挑発罪が適用され、さまざまな理由をつけて連行され処分されるだろう」
米国在住の中国問題研究家、張健さんは、もし外国人観光客だったら中国当局は別の対応をするだろうと考えています。
在米中国問題研究家 張健氏
「外国人旅行客が中国国内で同じことをした場合だが、実際にネット上でこの手の話をよく見かける。例えば外国人が鞄や自転車をなくしたといった一般的な状況の場合、中国の警官はすぐに探し出してくれる。だが相手が同じ中国人の場合は無視する。外国人が悪意を持って犯罪を犯した場合や悪意を持って「当たり屋」をやった場合、中国の警官の対応は場合によって異なってくる」
昨年の両会(りょうかい)で中国共産党全国政治協商会議(政協)委員の潘慶林(はん・けいりん)氏から、改革開放政策を進める際に行われてきた外国人に対する一連の譲歩政策により、アフリカ人の不法な入国、滞在、就労が増加し、数々の深刻な問題が起きていることが提起されました。データによると、広東省のアフリカ系人口は50万人に達し、うち合法的な入国者はわずか2万人だそうです。一方、アフリカ系人口は増加の一途をたどっています。
滕彪氏
「だから当局は海外向けと国内向けに2つの異なる手段を取っている。対外的には、当局は民族主義を掲げた強硬策を取り、国内に対しては、民衆の基本的権利や自由をあらゆる手段で抑圧する」
9月末、中国国営放送中央テレビの女性記者、孔琳琳(こう・りんりん)氏が英国保守党の年次総会で、「言論の自由」を振りかざし騒動を起こしました。
孔琳琳記者は質疑応答以外の時間に大声を出して、保守党人権委員会、ベネディクト・ロジャース氏の「中英連合声明を遵守し、香港の一国二制度を保障する」との発言に対し、「反中国!中国分裂主義!」などと批判したうえ、同記者に退出を促した男性に平手打ちをくらわせました。
事件後、駐英中国大使館はインターネットを通じて会議主催者に謝罪を要求しましたが、その際に記者の暴行には言及せず「英国は一貫して言論の自由を標榜してきた国であるにもかかわらず、記者が質問し意見を表明したことが妨害されただけでなく、身体の自由も奪われた」と主催者側を批判しました。
滕彪氏
「中国政府の最後の表現もまた「当たり屋」行為だ。この中国人の言っていることは明らかに不条理で、表現も適切でない。だが中国側はそれを棚に上げてチャンスとばかり言いがかりをつけている」
もし、外国人記者が中国当局の会議で同じことをやったらどうなるでしょうか。
張健氏
「外国人記者の場合、質問内容が厳しい内容だったら中国側が唯一取れる手段は、中国人の人権は米国人の5倍保障されているのを知っているか?などと乱暴な回答をするくらいだろう。その後、どのテレビ局かと問われ、恐らくプレスカードを取り上げられる」
滕彪氏
「中国当局は西側記者の取材に対しても、彼らの言論の自由に対しても常に規制をかけている。多くの会議や記者会見では、どの記者が参加してどの記者が質問するか事前にすべて決まっている。だから欧米人記者が会場で騒ぎを起こすことはめったにない。だがもしそんなことが起きたら、ビザが取り消されて国外退去させられるだろう」
張健さんは、中国当局は自国民が海外で人権や言論の自由を主張するのを支持しているように見えるが、権利の保証を求めて中国大使館にやってくる中国人には目もくれず、中央テレビも国内では、庶民の言論の自由を守るため政府に質問などしたことがないと述べています。