「中国の不動産バブルはもうすぐ崩壊する」と、数年も前からささやかれてきたことですが、なぜいまだに目に見えて崩壊しないのでしょうか。何か、からくりがあるのでしょうか。本日は、中国の不動産開発企業の実態に迫ります。
今年に入ってから、中国の大手不動産開発企業数十社が、相次いで融資計画を発表しました。1月に発表された70件以上の融資計画によると、中国の不動産企業は総規模1635億元、日本円でおよそ2兆6642億円にのぼる資金を調達しようとしています。しかし、資金の大半は債務返済に充てられると見られています。
英フィナンシャル・タイムズ(2018年11月12日)の報道によると、今年中国の不動産開発企業はオンショア市場で3850億元、日本円でおよそ6兆2735億円規模の社債が満期を迎えます。市場では、経済の失速と流動性ひっ迫の懸念を背景に、中国不動産開発企業による社債のデフォルト(債務不履行)に対する不安が広がっています。
中国メディアの報道によると、中国の不動産開発企業は昨年、社債発行で調達した資金の8割を、満期を迎えた社債の償還に充てました。このような状況が、今年も続くと見られています。
いっぽう、不動産開発企業の在庫圧力も高まっています。上海の不動産調査会社、上海易居房地産研究院の統計によると、2018年末現在、中国100の都市の新築商品住宅の在庫は、4億5734万平方メートルに達し、市場がこれらの在庫を消化するには10か月近くかかるとのことです。
中国の不動産業界に詳しい李国偉(り・こくい)さんは、中国当局は3月に開催予定の両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)で、新たな不動産市場政策を打ち出す可能性があるとの見方を示しました。
中国不動産問題研究家 李国偉氏
「2019年3月以降、中国の不動産バブルの崩壊が始まると盛んに伝わっている。3月の全人代でこれらの政策が打ち出され、バブルを少しずつ破裂させていき、不動産の値上がりはもうないということが目に見えてくるだろう。これは当局の言い方だが、一気に崩壊させることは絶対しない。しかし、この話が出た時点ですでに崩壊に瀕している」
中国当局が近年、金融市場のシステミック・リスクを恐れているため、不動産開発企業の融資が制限されています。一部の企業は債務返済のために、海外金融市場において高金利社債を発行するにまで至りました。
不動産開発企業「中国奥園グループ」は1月3日、7.95%の利率で2億7500万ドルの社債を、2021年の満期で発行すると発表しました。15日には再度、2022年満期の、利率8.5%、発行額5億ドル規模の社債を発行しました。
不動産企業「当代置業」も1月初め、香港市場で2020年満期の債券を発行すると公表しました。発行額は1億5000万ドルで、15.5%の高い利率で設定されています。
1月25日には、遠洋集団(シノオーシャングループ Sino-Ocean Group)が、総額5億ドルの外国債券を発行しました。
報道によると、海外の金融市場で債券を発行できるのは、いずれも大手企業です。中小企業の場合、社債発行を申請しても国内の証券取引所で止められ、海外から融資を募ることはほぼ不可能です。
中国不動産問題研究家 李国偉氏
「中国の不動産はすでに工事が止まっている。100棟のうち、98棟は工事が止まっており、建築労働者が動くのが見えるのは2棟のみだ。中国の工事速度は非常に速く、1日に7階分を建てる。しかし、3年半も工事しているのにまだ階数が伸びていない。多くの国有企業も、このように見せかけている」
李さんによると、中国国内の住宅市場は現在「繁栄から程遠い状況」で、殻しか残っていないと指摘します。多くの不動産開発企業は資産を海外に移転しておきながら、住宅市場の実態を隠して海外市場で資金調達を図っていると批判しました。
中国の金融学者、何軍樵(か・ぐんしょう)さんは、中国の不動産開発企業が海外での社債発行が可能だった理由は、中国経済を下支えできるのは不動産市場しかなく、中国当局は不動産バブルを簡単には崩壊させないと、海外の投資家が判断したことにあると示します。
中国の金融学者、何軍樵氏
「経済危機はとっくに発生している。中国の株式市場は、2015年の人為的な暴落を除けば、ここ10年下落し続けている。正直にいうと、上海総合指数も1000点の水準しかない。多くの新株を発行したからだ」
何さんは、中国経済の崩壊がまだ目に見えないのは、中国当局が絶えず紙幣を刷り続けてきたことと、インフラ建設拡大による景気刺激策を実施してきたからだと指摘します。