中国・四川省自貢市で2月24日から25日にかけて、マグニチュード(M)4以上の地震が3回発生し、少なくとも4人が死亡しました。シェールガスの採掘が地震を誘発したとして、地元住民1万人以上が県政府ビルを取り囲み、採掘の停止を求めました。
四川省自貢市栄県では2月24日と25日、マグネチュード4以上の地震が連続3回発生しました。25日午後1時15分にはマグネチュード4.9の地震がありました。一連の地震で多くの建物が倒壊し、少なくとも4人が死亡し、多くの人が負傷しました。地元で行われているシェールガスの採掘が地震を誘発したとして、多くの住民が抗議を行いました。
25日、1万人を超える住民が地元の県政府ビル前に集まりました。警察と衝突し、多くの住民が警察に連行されました。政府ビル前では多くの住民が正門の柵を押し倒しました。のちに、県長はシェールガスの採掘をしばらく停止すると宣言しました。
四川省自貢市 鐘さん
「政府はシェールガスの採掘は国の資源部、つまり党中央が許可したプロジェクトなので、地元の市や県政府には権限がないと言っている」
地元住民の鐘さんによると、26日朝に再度地震が発生。ただ震度は前日より弱かったそうです。前日の25日の夜には、多くの住民が地震を恐れて家に帰らず、政府ビル前の広場に止まっていたといいます。
四川省自貢市 鐘さん
「シェールガスは希少資源であるため、中央政府が栄県に多くの投資を行なっているので、採掘停止は不可能だと言っている。彼らは引き続き採掘する。仕方ない。丸腰の庶民に何ができる?」
中国のシェールガス生産量はアメリカとカナダにつぐ世界3位です。四川省南部は中国最大のシェールガス生産基地で、中国石油天然気集団(中石油)川南シェールガス基地だけでも、1日あたりの生産量は2000万立方メートルに上り、中国全体の4.2%を占めています。
地元住民によると、自貢市でシェールガスの採掘が始まってから、小規模の地震が絶えず、地元政府に訴えてもなしのつぶてだそうです。さらに、政府は情報を封鎖し、四川省のメディアには撮影禁止が通達され、政府系メディアの報道を転載するよう求められています。
四川省自貢市 呉さん
「ここでは地震がよく発生している。以前は比較的弱い地震だったが、最近はますます大きくなっている。新年期間中は採掘が止まっていたため、地震がなかったが、正月休みが終わると、また採掘が始まり、また地震が起きている。毎日地震が起きていて、怖くてどうしようもない」
四川省の地質学者、範暁(はん・ぎょう)さんは、シェールガスの採掘には地震を誘発する危険性が伴うため、栄県の地震は誘発された「人工地震」である可能性も排除できないと述べます。
四川省地質鉱産勘査開発局元総エンジニア 範暁さん
「シェールガスは普通の天然ガスと違い、分散した状態でシェールの中に存在するため、必ず地下に高圧の水で岩盤を破り砕き、ガスを出させて採掘する」
範暁さんはさらに、現地の地下に地質断層が存在する場合、ガス採掘の際に与える高圧によって、地震の力学的状態に影響を与え、断層の活動が活発になる可能性があると示します。
四川省地質鉱産勘査開発局元総エンジニア 範暁さん
「シェールガスの開発の前に、まず環境リスク評価をないければならない。つまり、地下の地質条件に対して調査し、理解しないといけない。活断層があるかどうか、過去に地震活動はあったかどうかなど。もしリスクの高いところである場合は、採掘は避けたほうが良い」
範暁さんは、政府はシェールガス採掘の前に、現地の地質条件について調査を行い、過去に発生した地震の背景を含む環境評価を行うべきだと指摘します。
四川省地質鉱産勘査開発局元総エンジニア 範暁さん
「予知できないリスクは確実に存在する。しかもすでに損害が発生している。だから採掘を中止し、少くなくともしばらくは停止し、関連研究の評価を行うべきだと思う。これは必要だと考えている。もしすぐ採掘を回復するのは適切ではない」
次世代のエネルギー資源として注目されているシェールガスですが、深い泥岩(でいがん)層に蓄積されているため、一般の天然ガスより採掘が困難であるとされています。四川省はもともと地震の多発地域であり、シェールガスの採掘開始以前から地震が発生しています。このような地域がシェールガス採掘の重要な基地になることで、地元住民の間では不安が広がっています。