【動画ニュース】孔子学院の普及を狙う中国 米・オランダでは同学院の閉鎖を発表

中国国務院はこのほど、教育指針「中国教育現代化2035」を発表しました。2035年までに教育強国入りする目標を掲げていますが、教育に対する中国共産党の指導的役割を強調しているだけでなく、さらには孔子学院や孔子教室の普及強化についても言及しています。一方、オランダと米国の大学では先月、孔子学院が閉鎖されました。

国務院が先日発表した新たな教育指針「中国教育現代化2035」には、重大戦略任務の一つとして「『一帯一路』教育アクションを推進し、孔子学院と孔子教室の特色ある発展を推進する」と記されています。

孔子学院は、以前は教育部下部組織の「国家漢語国際推進指導小組(チーム弁公室」が管轄していましたが、この機関は2008年に廃止されてその後は教育部に引き継がれました。現在、この機関は対外的には孔子学院本部/国家漢弁と称しています。

2013年、中国当局は「一帯一路」国家戦略を発表し、孔子学院を「一帯一路」教育アクションの重要部分に位置付けました。「一帯一路」の他の投資プロジェクトと同様に、海外で孔子学院を普及させるためには巨額の資金が必要になります。米国の前国務長官、ヒラリー・クリントン氏は2010年の米国議会公聴会で、「孔子学院1カ所を立ち上げるためには100万ドル(約1億1000万円)が必要で、年間の維持費は20万ドル(約2200万円)を超える。米国政府の予算では、中国のような大型支出はできない」と発言しています。

中国近代史の元教師 封京平氏

「中国の広大な農村地域の教育は今も遅れている。教室がない小学校もあり、教育環境の改善に巨額の資金を必要としている。だが中国当局は中国人の貧困には目もくれず、自国民の利益を優先するどころか、孔子学院の普及活動といった政治的な目的のために大量の資金を海外で使っている」

米国在住の時事評論家、邢天行(けい・てんこう)さんは、中国共産党は一貫して政治を第一義に据えてきたため、2035年までに孔子学院を大幅に普及させるという計画も、いくつもの政治的目的あってのことだと指摘します。

在米時事評論家 邢天行氏

「国内の金を国外のいわゆる非営利組織に使って、彼らの言う『教育の普及』を誇示する。中国共産党の党文化は、世界中からはさげすまれている。中国共産党はこの(イデオロギー)問題を掲げることができなくなると、あいまいな概念を打ち出し、政治的目的を果たすために「孔子」をシンボルにした」

中国当局は今回の「中国教育現代化2035」の中で、教育の基本原則は「党の指導の堅持」だと強調し、さらに「各級各タイプの学校の党の指導と党建作業の強化」を求めています。党建とは、中国社会を完全にカバーする党組織の構築を指しています。

野心に満ちたこの教育計画が発表される少し前に、オランダ最古の大学、ライデン大学は2月19日、今年8月の契約満了をもって、ライデン大学の孔子学院を閉鎖すると発表しました。大学側は契約を延長しない理由について、「孔子学院の活動内容が、大学の中国戦略とここ数年で制定された方向性と合致しなくなったため」と発表しています。

また、米ミネソタ大学も2月21日、今学期の終了後、ミネソタ大学内の孔子学院を閉鎖すると発表しました。同大学の学生主導メディア、ミネソタデイリーは大学側の話として、この閉鎖は優先順位の調整と新たな連邦政策が理 由だと報じたほか、孔子学院は中国文化と中国語の教育機関であり、ここでは言論の自由が保証されていると言いながら、実際には「全国各地の孔子学院で学術研究の自由が侵されており、立法者や国内組織、連邦捜査局から注視されている」とも報じています。

中国近代史の元教師 封京平氏

「中国の伝統文化を広めるためなら、誰も反対しない。しかし、中国当局の目的はそんなに単純ではない。実際は、彼らの価値観を普及・浸透させ、他国のイデオロギーを転覆させることを目的としている。だから孔子学院の閉鎖は賢明な判断だ」

米国全国学者協会 と発表しています。この協会の調査報告によると、孔子学院は中国共産党の政治史と人権問題については触れず、米国の学生を中国当局の公認する歴史以外何も知らない人間に育成するものだと記されています。

ここ数年でカナダ、フランス、スウェーデンなどでも大学内の孔子学院の閉鎖が相次ぎ、孔子学院は政治的目的のために設置され、学術研究の自由に干渉する機関だとの認識が広がっています。

 

 
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