3月31日、中国軍の戦闘機2機が台湾海峡の上空で中台間の中間線を越えて台湾本島側の空域に侵入しました。台湾側は多数の戦闘機を緊急発進させたほか、対空ミサイル部隊にも即応態勢を取らせました。これに対し、台湾政府は両岸関係の現状を破壊する挑発的な行動であると強く抗議しました。
中国軍の戦闘機、殲11が3月31日午前11時ごろ、台湾海峡の中間線を越えて台湾の空域に侵入し、台湾国軍の戦闘機と10分にわたり対峙しました。台湾政府は中国側の意図的な挑発であるとして、強く反発ました。台湾外交部も同区域の友好国に知らせると同時に、中国当局の軍事威嚇に抗議しました。
台湾外交部 吳釗燮部長
「これは故意的で挑発的な行動であり、非常に危険な行動でもある。強く糾弾すると同時に、外交部はすぐ同区域の友好国家に知らせた」
台湾がアメリカに近づきすぎていることが今回の事が起きた原因であるとのメディアの指摘に対し、台湾外交部の吳(ご)部長は、台湾は中国共産党の脅迫や挑発を受け続けているため、外部に助けを求める必要があると述べます。
台湾外交部 呉釗燮部長
「台湾が何処かの国と仲良くしすぎたから、中国がこのようにするわけではない。その逆で、中共が台湾に対し脅迫と挑発を続けるからこそ、台湾は外部に助けを求めねばならない」
台湾の立法委員、王定宇(おう・ていう)氏は、中国軍の戦闘機が中間線を越えたことは何度かあり、意図的な行為でない場合がほとんどだが、今回は政治的意図に基づく行動であると指摘します。
民進党立法委員 王定宇氏
「すぐ戦争になるという脅威ではなく、政治的意図のある行動である。稀に見る行動であるため、引き続き観察していく必要がある」
同じような挑発的な中間線越えは2011年、馬英九総統の就任時にもありました。当時は戦闘機F16の更新を行う予定だった台湾に対して態度を示したが、今回は戦闘機殲11まで出動して、米軍の爆撃機B52の南シナ海飛行に対する不満を示すと同時に、国内の矛盾を外に向けさせるのが目的だと、専門家は指摘します。
台湾国防資源及び産業研究所 蘇紫雲所長
「中国共産党は最近、経済などの多くの問題を抱えている。貿易戦の影響や、EUも最近北京に対し強硬な態度を取っている。だから第一の可能性は焦点を移す事。第二は、米軍爆撃機B52の台湾海峡周辺での活動が増えている。長距離飛行可能な制空戦闘機を出動させたことから、米軍の活動に対する威嚇であると見ている」
一方、中国の官制メディア「環球時報」は1日の社説において、「台湾海峡の中間線は一つの心理的ラインにすぎず、中国は中間線を認めたことは一度もない」としています。また、アメリカの軍艦が今年3回も台湾海峡を通過したと指摘し、「中国の戦闘機が偶然中間線を越えたのか、それとも今後これが常態になるのかは、アメリカと台湾当局の今後の動きにかかっている」と
主張しています。情勢の変化によっては、中国の海軍と空軍はいわゆる「中間線」のことを完全に無視し、台湾海峡全体を中国軍の行動区域にし、さらなる行動に出る可能性すらあると述べています。