中国メディアが、中国で第三世代身分証のコンセプト設計が進められていることを明らかにしました。新たな身分証には位置特定機能が追加されるほか、個人の指紋や血液などの情報も記録され、専門家は、ハイテク技術を使った当局の国民監視体制が極まったと考えています。
中国の捜狐を始めとする複数のメディアが、コンセプト設計段階にある第三世代身分証に追加されるとみられる6つの機能を報じました。カードには位置特定機能、指紋や血液などの身体情報が記録されるほか、銀行カード、クレジットカード、社会保険カード、ショッピングカードなどの機能も追加されるとみられています。
この報道で、中国社会に大きな動揺が広がっています。特に位置特定機能については、警察による民衆の監視をしやすくするために追加されたと多くの人が考えています。
在米コンピューター専門家 邱さん
「身分証の位置特定機能は(民衆の)監視に使用するためのものだ。これは間違いなく個人の動きを追跡するための機能で、他の使い道などない。めちゃくちゃな話だ」
あるネットユーザーは、これはハイテク技術を使った奴隷制度だと指摘し、別のユーザーは、この機能はナチスの強制収容所管理よりも恐ろしいと考えています。
さらに別のユーザーは「この機能によって、私たちの一挙手一投足が常に監視される。いつでも行方不明にさせられる可能性がある」と指摘しています。
時事評論家 藍述さん
「中国当局が人民に対して抱く恐れは極限に達している。だから様々なやり方で社会を支配しようとし、手段を選んではいられない。今行われている中国社会支配方式は、中国全土を大きな監獄に変えるものだ。すべての国民が囚人同様にみなされるようになった」
あるネットユーザーは、第三世代身分証は2年前に河南省で発行手続きが始まっており、身分証を発行する際にDNA鑑定が行われたほか、指紋も採取されたことを明らかにしています。
実際に、2011年の両会ですでに第三世代居住民身分証が議題に上り、その後から国営メディアが第二世代身分証のさまざまな欠陥を続々と報じ始め、次世代の身分証の必要性をアピールするための宣伝工作が行われました。
2015年に中国政府が公布した「社会治安・テロ防止システムの構築に関する意見」によると、今後は国民のすべての情報を身分証カードに記録し、カード内のすべての情報は中央公安システムの内部データベースにリンクさせて各地の公安部門がいつでも閲覧できるようにすることが明らかになっています。第三身分証の目的は、誰の目にも明らかです。
中国メディアは先日、南京の清掃作業員監視システムについて報じました。ある清掃会社は作業員に、勤務中にスマートブレスレットを着けるよう求めています。ブレスレットには作業員の所在地を責任者に報告する機能がついているほか、作業員が就業時間中に一つの場所に20分間とどまっていると、「がんばれ!がんばれ!」と労働を鼓舞する音声が自動で流れるようになっています。
いっぽう、中国に監視技術の使用を規制する法律が存在しないことも指摘されています。
時事評論家 藍述さん
「中国当局は民衆を支配しているが、民衆が政府に不満を抱えていることも知っており、民衆を恐れてもいる。そして当局が支配体制を厳しくすればするほど、民衆からの反発も激しくなる。だから当局は民衆を恐れれば恐れるほど、さらに厳しく民衆を取り締まる。この悪循環から抜け出せなくなっている」
さらに人々は、第三世代身分証に血液情報を記録するのは、臓器狩りを行いやすくするためではないかと憂慮しています。
米国在住のコンンピューター専門家、邱(きゅう)さんは、ハイテク技術は悪用されるとひどいことになるが、正常な社会で使用されれば社会により良いサービスを提供できると述べています。米国では以前から、コンピューターチップへの個人血液情報の記録が行われていますが、これは希望者が任意で行うもので、目的は救急救命時での使用です。
在米コンピューター専門家 邱さん
「米国では、血液型を始めとするさまざまな個人情報が記録されたカードを携帯する人がいる。交通事故に遭ったときもこのカードがあれば、救命医療に役立つ」
あるネットユーザーは「中国の第三世代身分証から、SF映画に出てくる邪悪な帝国のひな型が感じ取れる。次に待っているのは、個人情報が記録されたマイクロチップの強制的な体内埋め込みだ」と指摘しています。
藍述さんは「中国当局の技術によって実現できることなら何でもできる。だがその代わり、これを不満に思う民衆から必ず反旗を翻されるだろう」と述べています。
あるネットユーザーはツイッターに次の投稿を残しました。「今、中国メディアが第三世代身分証について報じているのは、情報を流して国民の反応を探るためだ。異論がなければすぐに位置特定機能が追加され、異論が出たら当局は、直ちにそうした意見をつぶすだろう」