中国科学院は近日、ヒトの遺伝子を移植した、知力の高いサルを誕生させたと発表しました。一方、多くの科学者はこの種の実験には倫理の問題が存在すると批判しています。
この研究は昆明動物研究所と中国科学院の研究員が、アメリカのノースカロライナ大学の研究員と共同で行なったもので、大脳の発達に重要な役割を持つ人間の遺伝子「MCPH1」を11匹のアカゲザルの脳に移植しましたが、うち6匹は死亡しました。
中国の研究チームは、この研究を通して、自閉症など、発達障害から来る脳の病気の原因究明および治療のための情報提供に役立つと主張しています。
一方、倫理上の懸念も指摘されています。アメリカ・コロラド大学の霊長類比較研究分野の遺伝子学者、ジェームズ・シカラ(James Sikela)氏は、「遺伝子を移植したサルを利用してヒトの遺伝子研究を行うのは非常に危険だ」と批判しています。
また、この研究の共同著者である、ノースカロライナ大学のコンピューター科学の専門家マーティン・ステイナー(Martin Styner)氏は、「この研究はヒトの大脳に近い脳を作るために行われているが、正しい方向ではない」と述べています。
ウィリアム・アンド・メアリー大学の自然人類学の名誉教授、バーバラ・キング(King,Barbara J.)氏は、この種の実験は「道徳の悪夢」であると述べています。