4月15日、フランス・パリのノートルダム大聖堂が火災に見舞われ、世界中の人々が心を痛めました。いっぽう、中国のネット上では一部のネットユーザーが歓声を上げました。
ノートルダム大聖堂はフランス国民が誇る世界遺産で、800年以上の歴史を持っています。15日に発生した火災で大きく破損し、多くの人が心を痛め、涙を流しました。いっぽう、中国のネット上では「100年前にイギリス・フランス連合軍が円明園を焼き討ちしたが、今回の火災はその報いだ」との発言が多く見られ、多くのネットユーザーが賛同し、「いいね」を押しています。
時事評論家 唐靖遠氏
「ノートルダム大聖堂には悠久の歴史と豊富な内包があり、人類共通の文化遺産である。理性的で正常な感情を持つ人なら、この災難を喜ぶはずがない。この種の壊滅的は災難に拍手喝采を送るその背後には、極端な民族主義が隠れており、憎しみのためにさらに憎むということは人間の正常な感情ではない。長期にわたる共産党文化の教育で、人間性に欠陥が生じた結果だ。共産党思想の特徴は、暴力、憎しみ、破壊、世界文明に対する蔑視、敵視などである」
専門家は、この種の狭隘な民族主義や憎しみはいずれも虚言の上に成り立つものであると指摘します。円明園事件は第二次アヘン戦争期間中、イギリスとフランスの使節団が清の皇帝に跪くのを拒んだことで、清国政府は彼らを円明園などに拘禁し、さらに拷問を行い、20人あまりが死亡したことに端を発しました。このことはイギリス軍を怒らせ、最終的に円明園の財宝を奪い、建築物をすべて焼き払うことで、報復を行いました。いっぽう当時のフランス軍のトップは円明園の焼き討ちに反対し、イギリス軍との連合行動を拒んだと伝えられています。これらのことは中国では教えられていません。
時事評論家 張健氏
「円明園が焼き討ちされた真の原因が分かる人は何人いるのだろうか。焼き討ち事件後、米国は庚子賠款を返却し、清華大学を設立したことを彼らは知らない。共産党は政権掌握後、狭隘な民族主義を煽り立てることで、国内圧力のガス抜きをしている。911テロ事件の時も、一部ネット民が「熱烈に慶祝する」などの言葉を使った。これらは長期にわたって中共に洗脳され、人間性がねじ曲げられた結果だ」
習近平主席は3月下旬にフランスを訪問したばかりで、フランスとの関係強化を望んでいると示していました。
中国のネットユーザーの反応に対して、国営メディアの中央テレビは即刻文章を掲載し、「狭隘な民族主義に操られている」「愛国は間違っていないが、理性を保つ必要がある」などと、ネットユーザーらを批判するといった珍しい行動に出ました。これに対し専門家は、政治的な考えからとった行動にすぎないと見ています。
時事評論家 張健氏
「中国共産党は外交面で大きな困難に直面しており、EUとの関係を強化しようとしている。官製メディアは狭隘な民族主義を抑圧したいが公にはできないため、このような緩兵之計を使うしかない」
火災発生後、現場に駆けつけたマクロン大統領はノートルダム大聖堂の再建を約束し、国内外に寄付を呼びかけています。幸い、壊れた文物は修復が可能ですが、失った文明の立て直しは、さらに大きな課題かもしれません。