香港では、不動産価格の高騰と住宅への高い課税にあえぐ中産階級が、海外の不動産物件を購入するケースが増えています。その一方で、ある不動産会社を通じて米国の物件に投資した中国人や香港人が詐欺に遭うケースが相次いでいます。警察当局の発表によると、これまでに28人が被害を訴え、被害総額は1840万香港ドル(約2億6250万円)に上るとのことです。
家賃収入を目的とした海外不動産購入がブームとなる一方で、香港人や中国人が米国ヒューストンの物件を購入したところ、思いがけない被害に遭うケースが相次いでいます。
香港市民、郭(かく)さんは2013年9月に、香港の不動産会社、プレミア・キャピタル・グループ(Premier Capital Group、美亜置業投資有限公司)を通じてヒューストンにあるリフォーム済みの物件を7万2000ドル(約800万円)で購入しました。この会社からは当初、2年間の賃貸期間に毎年8%の投資回収率を保証すると説明されましたが、2年間が過ぎると家賃収入が途絶えたため、郭さんは詐欺に遭ったことに気づきました。
被害者 郭さん
「詐欺に遭ったと思っている。不動産会社から、この物件は立地がよく家賃収入もあると聞かされたのに、そもそも借り手の付くような物件ではなかった。さらに、私が買った物件はぼろぼろだった。不動産管理会社はそこを修理工場として使用していて、別の物件に足りない部分があると、私の物件から外していった。それから私に修繕費として3万ドル(約340万円)を支払えと言ってきた」
企業幹部のコニーさんも騙された一人です。2017年に8人のグループで現地を視察したところ、物件の所在地が、不動産会社が公告していた中産階級の居住区ではなかったことが分かりました。
香港市民 コニーさん
「行ってみると、生活保護の受給者、家賃さえ払えない人など、低所得者ばかりだった。内装工事を済ませて、彼らに1年間住まわせたら、中はぐちゃぐちゃになる。ものを壊して、大量のゴミを残していく。すべての費用が高額で、ゴミの処理代だけで500ドルも取られる。永遠に覚めない悪夢のようだ」
郭さんとコニーさんは、これ以上修繕費を支払いたくないと考えていますが、そのためには物件を安く売却するしかありません。その場合、数十万香港ドルもの損失が見込まれます。この会社の別の物件に投資した人物も同様の被害を受け、実際に購入した物件が、会社から説明を受けた物件と全く異なっていました。
香港メディアの「ファクト・ワイヤー(伝真社、FactWire)」は今年1月、プレミア・キャピタル・グループの幹部5人が昨年6月に詐欺共謀罪で逮捕され、現在保釈中で今後調査される予定だと報じました。しかし同社は今も、中国と香港で海外の不動産物件を販売し続けています。