米国国籍を持つ中国国際航空(エアチャイナ)の元職員、林英(リン・イン)はニューヨークの裁判所で、在職中に中国の軍関係者の荷物を北京へ密輸し、外国政府の代理人を務めた罪を認めました。
今年48歳の林英(リン・イン)被告は、米国国籍を取得し、ニューヨーク市クイーンズ区在住。2002年から2016年の間、エアチャイナに勤めていました。2009年にはマネージャーに昇進し、主に常連の利用客や政府官僚など、中国からのVIP客を担当し、彼らの荷物をニューヨークから北京へ送っていました。
4月17日、林被告はニューヨーク東部地区地方裁判所で、米国司法省に知らせずに中国の軍関係者やエアチャイナの指示にしたがっていたと述べました。
裁判所の文書によると、林被告はニューヨークのJFケネディ空港で地上業務に従事していた期間中、別の客の名前を使って国連駐在の中国軍関係者の荷物を密輸しました。また、中国駐ニューヨーク総領事館の職員から荷物を預かり、飛行機利用客の名前で中国へ密輸しました。これらの行為は、航空機に搭乗していない人の手荷物の預かりを禁止する米国運輸保安庁(TSA)の規定に反しています。
在米人権弁護士 葉寧氏
「被代理人が国家政権である場合、代理人は必ず米司法省に報告する義務がある。秘密裏に軍隊のために何かをやった場合、内容にもよるが、もし情報収集や米国が輸出を制限している軍民両用の製品または軍事ハイテク製品などを購入した場合、スパイ行為に当たる」
林被告が密輸した軍関係者の荷物の中身について、検察の起訴状では明らかにしていません。一方、起訴状によると、林被告は「エアチャイナは中国の会社だから、職員がまず忠誠を示すのは中国であるべきだ」と言って、他の従業員にも中国の軍関係者に協力するよう求めていたそうです。
在米人権弁護士 葉寧氏
「他の米国在住の人たちに中国政府への忠誠を求めたこと自体、中国のために働いていた証拠だ。林被告は当局の代わりに同胞に対して洗脳を行なっており、この意味でも、彼女は中共の代理人を務めた」
見返りとして、中国当局は林被告に、数万ドルの高級酒やタバコ、電子製品を免税で購入できる権利や、中国大使館の指定会社によるクイーンズ区内の自宅2軒の無料内装工事などの特権を与えました。
ジョン・デマーズ(John C.Demers) 司法次官補(国家安全保障担当)は、「この事件は中国共産党政権が米国で違法行為をするために中国の会社の従業員を利用していることの明白な例だ。米国の土地で、中国軍の動きを隠ぺいするのは犯罪行為であり、中国軍と林被告は民間企業を利用して、米政府の合法的な取り締まりを避けた」と述べました。
時事評論家 田園博士
「中共の代理人を務めた他にも、林英はこれらの人が米国で入手した米国の機密、あるいは米国の経済情報を北京に送り、中共に渡した可能性もある。林英が一体いくらもらって中共のために働いていたか、これについては全くわからない」
ニューヨーク州東部地区の連邦検察官リチャード・ドノヒュー(Richard Donoghue)氏は、この事件は米国にいながら、中国または他の外国政府のために働く個人によるスパイ活動の深刻な脅威を示していると述べました。
時事評論家 田園博士
「中国系住民が米国で中国政府の代理人になることは、米国にとってますます容認できないことになっている。米国の国家安全に直接的な危険をもたらしているだけでなく、米国企業や研究機関の知的財産権やその他の経済情報にとっても重大な脅威であるからだ」
近年、米国政府は「外国代理人登録法」の執行を強化しつつあります。専門家は、林英事件は代表的な事件で、スパイ行為でなくても、中国共産党の支持に従った行為である場合、制裁を受ける可能性が高いと指摘します。
時事評論家 橫河氏
「この事件は一里塚と言える代表的な事件だ。これまでに、登録無しに中共の代理人を務めたいくつかの事件があったが、いずれも主な罪はスパイ容疑だった。今回の事件はスパイの容疑はなく、もっとも深刻な罪として、外国政府のために働いたことが指摘されている」
FBIニューヨーク支局のウィリアム・スウィーニー( William Sweeney)副支局長は、この事件は唯一無二の事件ではなく、この事件をきっかけに、中国やほかの外国政府が米国の法律を違反しても制裁を受けないといったことを根絶させたいと述べました。
時事評論家 橫河氏
「米国にいながら中共に忠誠を誓い、中共のために必死になっている親中共派に警鐘を鳴らした事件だ。多くの人の行為が中国共産党代理人に当たり、米国の法律で制裁が可能になった。これまでは制裁しなかったが、この事件をきっかけに、制裁が可能になった。米国法律に違反すると責任は自分で負うことになる。中共はこれらの人を庇護しないし、庇護しても結果は変わらない」
林被告は最高で10年の懲役刑に直面しています。さらに、14万5千ドルの個人財産を没取されるほか、米国国籍取得時に不正があった場合、米国国籍も取り消される可能性があると警告されました。