「逃亡犯条例」の改正に反対して香港で起きた2回の100万人を超える大規模デモは、世界中から注目されていますが、中国当局だけが戦々恐々としています。香港の情報が中国本土に伝わるのを恐れて情報封鎖はもちろん、各種フェイクニュースまで作り出し、中国人の耳目を惑わしています。
近日、台湾のSNSで活躍していた、自称高雄市出身の李傑(り・けつ)というネットユーザーがフェイスブックに、「台湾の蔡英文政権が香港のデモに10億元を支援した」と投稿しました。この投稿は1日のうちに800回以上シェアされました。
中華民国総統府 報道官
「我々はすでにはっきり説明したが、このようなことはない。全くのフェイクニュースだ。警察にも検挙するよう届け出た」
警察の捜査の結果、台湾には該当するユーザーはいなく、IPアドレスはシンガポールになっていました。また、名前の「傑」という字も、台湾で使う繁体字ではなく、大陸の簡体字が使われていることに気づきました。
時事評論家 唐靖遠さん
「最近の傾向として明らかなのは、一部のネットユーザー名義で流されているフェイクニュースは、その内容が中国の官製メディアの論調に合わせている。香港人が基本的な人権と法治を守るために、自発的に立ち上がった抗議活動を、外国勢力が操っていると泥を塗っている」
香港のデモに関するフェイクニュースは後を絶ちません。
6月9日、香港では「逃亡犯条例」改正に反対して、103万人がデモに参加しました。中国共産党中央宣伝部傘下の「チャイナ・デイリー」は10日、反対デモに参加したのはわずか24万人で、ネット上または街頭で条例改正を支持している人は80万人に上ると報じました。これに対しあるIT専門家は、いわゆる80万人が署名したいうサイトのソースコードを調べた結果、このサイトでは60秒ごとに8人の偽の署名を自動生成していたと明かしました。さらに、サイトの登録情報から中国政府系新聞文匯報(ぶんわいほう)が背後で操作していることがわかりました。
時事評論家 橫河さん
「中共の宣伝は、特に対外宣伝において用いられる重要な手段がある。つまり、一部分の事実だけを報道するが、もしこの事実がない場合は、報道のために作り出すことも厭わない。80万人の支持署名の自動生成もこの類のものだ」
6月16日には、再度200万人の香港市民が街頭に繰り出し、条例改正案の撤回を求めました。「チャイナ・デイリー」は17日、香港で16日に保護者100人が、「アメリカの香港に対する干渉に反対」するデモを行なったと報じました。
時事評論家 唐靖遠さん
「外国勢力が操っていると泥を塗ることで抗議活動の合法性と正義性を相殺しようとしている。中共が一国二制度を破壊したことで起きたデモの責任を、他になすりつけようとしている。つまり、フェイクニュースで安定維持を図っている」
時事評論家 橫河さん
「香港に詳しい人なら、中共がどんなに惨めなのかが分かるはずだ。香港で数十年かけて親中共勢力を育ててきたのに、100人程度しか集められず、気の毒すぎる。しかし事情があまり分かっていない西側の人々は、この人数でも少なくないと感じるかもしれない。対外宣伝と行っても金をばらまいて、騙せる人を騙すだけだ」
一方、中国本土では香港のデモに関する文章や写真、動画が厳しく封鎖されています。陝西省のあるネットユーザーは、香港のデモの写真を転送しただけで、地元警察に呼び出されました。また、北京や上海の地下鉄駅では警察が市民を止めて、携帯電話の中身を調べていたと伝えられています。
時事評論家 橫河さん
「中共は今四面楚歌に追い込まれ、国内外ともに窮地に立たされている。100万人の中共の政策に対する抗議がもたらす結果として、中国の民衆も香港人に励まされ、自分の権益を勝ち取ろうとするかもしれない。中国の民衆には抗議の理由がもっと多いし、もっと多くのことで抗議する必要がある。これは中共にとって一番見たくない結果であり、耐えられないことでもある。だから情報を封鎖するのだ」