あるツイッターユーザーが最近、中国の三峡ダムが歪んでいるとして投稿した写真が物議をかもしています。ダムの決壊を懸念する声に対し中国当局はこれを否定していますが、民衆の疑念は晴れていません。ドイツ在住の水利専門家で、三峡ダムに詳しい王維洛(おう・いらく)博士は、三峡ダムは動くように設計されており、三峡ダムの脆弱性は、その設計によって裏付けられていると指摘しています。
7月1日、アカウント名「冷山」さんがツイッターに「三峡ダムが変形している。ひとたび決壊したら、中国の半分の人民が塗炭の苦しみにおちいる!共産党とそのファミリーもおしまいだ!」と投稿しました。
この人物はさらに、現在と過去の三峡ダムの比較写真も貼り付けました。左側の写真は三峡ダムがまっすぐな様子を撮影したものですが、右側の写真の三峡ダムは明らかに変形しています。
この写真がインターネットに投稿されると、ネットユーザーは次々に不安を表明しました。あるユーザーは「中国共産党の工事建設を信用してはならない。手抜き工事に材料のごまかし、リベートといった事例があふれている。三峡ダムの耐久性を保証できる人は誰もいない。問題が発生するのは時間の問題だ」と憂慮しています。
その後、人民日報や中央電視台などの官製メディアは次々と、三峡ダムのゆがみはグーグルマップの衛星画像アルゴリズムの誤差によって生じたもので、ダム自体の問題ではないとネット上のうわさを否定しました。
これに対し、ツイッターユーザーの冷山さんは再度「うわさを否定したことは何を意味するか分かるよね!宜昌(ぎしょう)、武漢から南京、上海の同胞たちよ、できるだけ上流に移動しろ」とツイートしています。
ドイツ在住水利専門家 王維洛博士
「三峡ダムには、誰も知らない全体構造上の秘密がある。三峡ダムは動いている。このダムは重力式コンクリートダムで、巨大なコンクリートブロックで構成され、岩石の上に据えられている。住宅のように地面に穴をあけ、鉄鋼の柱を打ち込んだものではない。この工法で設計された場合は倒れることはないが、もし側面から捻じ曲げられた場合、2つのダムのブロックが接している部分で継ぎ目の部分が押されて隙間ができる。そうなったらこのダムは終わりだ」
王維洛氏は、「設計当初、ダムが動くことは考慮されており、一年で1ミリ未満だが、前に移動すると考えられていた。以前はこのデータが公表されていたが、現在は発表されなくなった」と指摘しています。
王博士はさらに「当初このダムは非常に頑丈に作られていると言われていた。だがこれはダムに水が入っていない状態のことだ。三峡ダムの水が上流から下流へと流れる際の衝撃力は大きい」とも述べています。
ドイツ在住水利専門家 王維洛博士
「ダムにおいて最も危険なものは中の水だ。特に水位が高い時が非常に危険だ。なぜなら水は高所から落下する時の衝撃力が大きいからだ。安全性を考慮する際、もし米国や台湾から爆撃をしかけても、爆破は難しいだろうと言われていた。だがその時、三峡ダムがどのような状態にある場合かは言わなかった。三峡ダムに水はほとんど入っていなかったため、壊滅的な結果は起きないと言われていた。だが、何をもって壊滅的な結果とするのかについては説明されなかった」
王博士は、三峡ダムの表面は一見すると頑丈そうだが、内部構造はチーズのように中が空洞になっていると説明しています。三峡ダムの中間の放水用ダムブロックには合計67の孔が横にあけられているうえ、内側にはさらに点検用配管、排水管があり、加えて3つの溝が設けられています。この3つの溝と多孔構造によって、三峡ダムは鉄壁のダムではないことが決定づけられていると説明しています。
また王博士は「三峡ダムにはさらに、2つの五級水門と船舶昇降機という船舶運航施設が設置されている。これが世界の多くの著名なダムと異なる点で、他のダムにはこのような船舶運航施設はない。三峡ダムの2つの水門にはそれぞれ深さ45.2m、幅34mの深い横切りダムがあり、水門の両端にはそれぞれ鉄製の門がある。1つの門が開いているとき、もう一つは閉じている。するとこの閉じている門は三峡ダム221億立方メートルの水に耐えなければならず、いったん水門に問題が生じたら、ダムの水が一気に流れる。これがダムの不安材料だ」と憂慮しています。
王博士は「三峡ダムプロジェクトは2003年に試験運用が始まってから16年の間、いまだ検証作業が行われておらず、このダムの品質を担保しようという人は誰もいない。現在、みながネット上でこの問題を議論することには大きな意義がある。中国当局は国民に何らかの説明をしなければならない」と述べています。