ネットユーザーが「三峡ダムが変形し、決壊する可能性がある」と指摘したことで、中国人の間に懸念が広まりました。中国当局は当初この情報をデマだとして否定しましたが、その後、堤体に変形が生じていることを認めるも、堤体の変形は弾性状態にあるとしています。当局が一転して変形を認めたことで逆に疑念の声が高まり、さらに三峡大滝景観区が緊急営業停止を通知したことで、懸念はさらに高まっています。
ツイッターユーザーが指摘した三峡ダムが変形しているとする情報はインターネットを通じて中国社会に瞬く間に広がり、安全性を懸念する声が挙がる一方で、長江の中下流域に住む住民らは不安を募らせています。中国メディアは当初、ダムの変形を否定しましたが、その後メディアを通じて専門家の話として「三峡ダムは変形しているが、変形は『弾性状態』にある」として、三峡ダムは安全だと改めて強調しました。
中国地震局の技術者は、三峡ダムは絶対に安全なプロジェクトであり、地球の重力を除き、洪水や地震といった外部からの力によってダムが変形することはあり得ないと述べています。
カナダ在住構造工学専門家 竹学葉氏
「彼の言うことは理にかなっている。施工品質が設計要件に達しているのなら問題は生じないはずだ。だが彼の言う『絶対に安全な』とは、土石流や落石がなく、山に地滑りが起きず、水が予想量に達せず、予想量を超えず、施工品質が保証できるといったことを指している」
カナダ在住の構造工学専門家、竹学葉(ちく・がくよう)氏は、人類の限られた知識と経験、物事の客観的な認識はすべて、経験に基づいたものだと語っています。
三峡ダムの施工品質について、一部のコンクリート強度が設計要件に達しておらず、さらに一部はコンクリートの攪拌時に中に空洞が生じている可能性があると指摘する報道もあり、竹学葉氏はこれを致命的な問題だと認識しています。
カナダ在住構造工学専門家 竹学葉氏
「コンクリート強度が高くなく、硬さが十分でなければ、水がしみ出てくる。結局のところ施工時に設計指標に達していたかどうかは、やはり非常に重要だ。また工程の確率論からいうと、絶対に問題の起きない構造など誰も設計できない。なぜなら、人知では知ることのできない外的要素が常に存在するからだ。よってこの予測できない外的要素が、ダム構造の機能喪失を招く要素になる」
香港に本部を置くチャイナ・メディア・プロジェクト(China Media Project )は、三峡ダムをめぐる憂慮はすでに国の栄誉に関わる問題となっており、技術的安全性の範疇を超えていると指摘しています。この五日間、三峡ダムに向けられた関心は「反中国勢力」の陰謀というものでした。三峡ダムプロジェクトが1980年代に始まって以来、環境や人に与える影響について本当の議論は一度も行われていません。
ドイツ在住の水利専門家、王維洛氏も、三峡ダムは重力式コンクリートダムであり、堤防の軸線の長さは2309.47メートル、ダムは数十個の独立したコンクリートダムブロックで構成されており、各ブロック間の隙間は処理が施されているが、数十個のコンクリートブロックは岩盤に置いてあるだけで固定されてはおらず、コンクリートの自重によってダムの安定を維持しているとして、三峡ダムの水位の絶え間ない変化が、三峡ダムの基盤とダムの頂部のずれと変形を促し、三峡ダムの経済的耐用年数を縮めて安全性を下げていると指摘しています。
竹学葉氏は、王維洛氏は工程に関する一次資料を持っているため、そのデータは非常に信頼できるものだと語っています。竹学葉氏は、いわゆる重力式ダムとは、ダム自身の重量に頼るものであり、基礎に設置されて水をせき止めると、全体の体積が非常に安定して簡単にダムの決壊が起きるものではないと指摘しています。
カナダ在住構造工学専門家 竹学葉氏
「震度が一定のレベルに達すると、跳ね返る水の水圧が大きくなってダムが跳ね返る。この一回の跳ね返りで上部に水があり、水位が高くさらに押されたとしたら、その重力式コンクリートダムは重量を失ったのと同じ状態になり、不安定になる。よって地震が起きた場合、ダムの下部の施工品質が良好でなく、継目が大きかった場合、入ってくる水が多くなり、揺れたときにダムに悪影響を及ぼして、ダムが倒れる可能性がある。そうなった場合をダムが決壊したという」
竹学葉氏は、豪雨によってダムの水かさが増し、上流の水位がすさまじい勢いで押し寄せてきたら、土砂が流れ込んで両側の山が地滑りを起こす可能性があると指摘しています。
カナダ在住構造工学専門家 竹学葉氏
「ひとたびダムに地滑りが起きたら、土砂がダムの中に流れ込んで水が波打ってあっという間に下流に流れてくる。もともとしっかりと立っていたダムは、そのように水が流れてくると倒されてしまう。すると数億人に影響が及ぶ。長江の中下流の平原すべてが被害を受ける可能性がある。やはり大変なことだ」
ダムの安全性を懸念する声が高まると、三峡大滝景観区が初めて閉鎖されました。これについて当局は理由を説明していませんが、景観区は、上流の工事が水をせき止める段階に入ったため、滝の流れが止まるからだと通知しています。景観区は7月6日から一週間、観光客の受け入れを一時停止するとしていますが、営業再開日は別途通知すると発表しています。