中国では現在、企業倒産と国外移転に伴う店舗の閉店ラッシュが続いています。中小都市や香港、深センとその周辺だけでなく、経済的に発展した長江デルタにも広がり、閑散としたショッピングモールが目につくようになりました。すでに下降中の中国経済が、米中貿易戦争の硝煙の中、首の皮一枚がつながった状態にあると分析する人もいます。
上海、江蘇省、浙江省、安徽省からなる長江デルタは、中国大陸で最も発達した経済地域の一つです。
しかし米中貿易戦争の激化に伴い、当局から重要な戦略的地位を備えた国際ゲートウェイと位置付けられていた長江デルタでも、「営業停止」する店が目立つようになりました。
江蘇省の省都、南京市では、地下鉄駅の近くやその周辺の住宅街、人通りの絶えない金都匯広場であっても状況はよくありません。一日当たりの利用者数が3万から4万人の地下鉄の駅からわずか240メートルのところに位置する京新広場は、ショッピングモールの複数の入り口にあるディスプレイも消えたままで、通りに面した一階店舗でさえも内装の解体や品物の梱包が行われており、座り込んでおしゃべりに興じる清掃員だけが残されています。
上海に住む汪建華さんは、上海で閉店した店舗は多いわけではないが、権利を譲渡する店が特に多いと語り、上海は大都市として、不況のあおりを食らった街並みが露呈するのを避けるために、別の方法を採用していると説明します。
上海市民 汪建華さん
「上海は今整理を行っている最中だ。住宅街で店をやっている住民はすべて閉鎖させられ、解放軍部隊がやっていた店もすべてたたまれた。学校も商売してはならない。上からの命令で店舗を圧縮している」
圧縮された店はやむなく商業エリアに移転しました。このようにすれば、上海に営業をやめた店舗が建ち並ぶこともなくなります。
しかし、上海のオフィスビルはやはり空室が目立ち、上海の衰退を隠すことはできなかったと、汪建華さんは語ります。
中国経済の牽引者である南部の広州も例外ではありません。かつて多くの店舗でにぎわった広州の街も、閉鎖した店が目立ちます。
あるネットユーザーは「今、外食するほど心にゆとりのある人がいるだろうか。食費を切り詰め節約に励み、さらに重税を納付し、住宅ローン、医療費を支払い、子どもや親を養わなければならない。こんな状態では支出を賄いきれない。毎日4~5元(約60~80円)のマントウやインスタントラーメンが食べられればまだましだ。魚や肉など食べたくても無理だ」と吐露しています。
中国問題研究家 李さん
「民衆はすでに身を切られるような苦しみに耐えている。手首を切り取られただけでなく、腕や足まで断ち切られ、心臓だけがまだ動いているような状態だ。中国経済全体が首の皮一枚でつながっている状況で、どの地方も、限界を超える瀬戸際に立たされている」
天津のある老人が撮影した映像には、以前は大変な賑わいだったデパートも、今や人っ子一人おらず、午前十時という最もにぎわう時間でさえ、広い通りを歩いているのはほんの数人という様子が見られます。この老人は、全国で多くの都市がかつて繁栄したが、今では誰も訪れないと語っています。
中国問題研究家 李さん
「核心部門だけが動いているのを除けば、非核心部門は官僚だろうが、公務員だろうが、国家機関傘下の団体であろうが、企業であろうが、特にもっと数の多い民衆は、生活が苦しくて暮らしていけなくなっている」
あるネットユーザーは「特に中小都市の旧市街地には営業している商店街はほとんどない。ニュータウンの店はもっとさびれている。個別の商店だけがかろうじて営業している」と語っています。
安徽省 呂千栄さん
「私が江蘇省にいたころに常州で見たのも、今、浙江省舟山で見ているのも、全国的にもみな同じで、多くの商店街がシャッターを下ろしている」
米中貿易戦争の影響を受け、広東省の昨年の購買担当者指数(PMI)は下落が止まらず、12月の時点で広東省当局は、この経済指標の発表を中止し、「国家統計局が発表を許可しない」としています。
また外国企業の中国撤退の動きが加速し、ヒューレット・パッカード、デル、マイクロソフトなどの世界的なテック企業も次々中国を後にしています。7月4日には、深セン市の老舗電子メーカー「深圳聚電智能科技」が倒産を発表しました。
中国問題研究家の李さんは、中国大陸には現在、庶民に希望を抱かせるようなよいニュースがなにもない。民衆はただ無為に日々を過ごし、社会が大変革を迎えるのを待っているだけだと語っています。