中国では珠江、湘江、長江流域は連日の暴雨による洪水の発生が危ぶまれる一方で、河南省、山東省、江蘇省などは深刻な干ばつに見舞われています。農作物がほぼ全滅し、収穫の見込みがない中、中国当局は7月末、今年上半期は豊作で、過去最高水準を維持していると発表しています。
7月3日、中国メディアは江蘇省泗洪県(しこうけん)が干ばつに見舞われていると報じました。田畑は乾燥してひび割れが生じており、8つのダムのうち4つは貯水量がゼロとなったため、ダムに隣接する水田も乾燥が進み、水田約28平方キロメートル(7000ムー)の収穫が絶望的とみられています。
江蘇省に位置する中国第四位の面積を誇る淡水湖ー洪沢湖も、干ばつにより干上がっています。
7月23日に洪沢湖で撮影された映像では、湖が完全に干上がり、湖で養殖されていた魚やエビが大量死して、いたるところに死んだ魚や貝の殻が散乱している様子が見られます。
中国各地を襲う洪水と干ばつにより、今年の収穫が危ぶまれる一方で、中国政府は7月30日、今年上半期の作柄は良好で、昨年比で293万トン増加し、過去最高水準を維持していると発表しました。
7月29日、ツイッターアカウント名「薬丸時報」さんは、「河南省の大規模な干ばつで農民は収穫が望めない。南部の洪水と同じく、地方政府に災害救援する力はない。中国共産党の宣伝部門は言論統制し、中央メディアはこの件から目をそらしている」とツイートしています。
このツイートにアップロードされた動画では、作物がほぼ全滅し、農民の女性がトウモロコシ畑で泣きながら「どうしたらいいのか?」となげく様子がみられます。
どうしたらいいの?
河南省だけでなく、山東省も大規模な干ばつに見舞われています。
山東省蓬莱市検察院の劉培亮(りゅう・ばいりょう)さんは、SNSのウェイボー(微博)で、蓬莱のある村(新港街道営子李村)の共産党書記の話として、「新湊街道営子村を空撮したが、実際に目で見なければ、農民たちの腹をえぐられるような絶望など絶対に想像できない。黄色の麦わらの中に、数本のトウモロコシの苗だけが生きている。極度の干ばつで水を引くことができず、本来ならもっと大きくなっているはずのトウモロコシがまったく成長していない。畑100ムーあたり4万元(約60万円)を投じているため、損失は少なくとも3倍だ。農民は井戸を掘って命を繋ぎたいと切に願っているが、それには10万元(約150万円)が必要で、農民にはとても出せない」と語っています。
あるネットユーザーは「6月の1か月間、山東省には雨があまり降っていない。故郷の山の山椒の木もぜんぶ枯れてしまった」とコメントを残しています。
別のネットユーザーは「これは天災ではなく人災だ。これは中国共産党の毒だ。南で洪水、北で干ばつ。三峡ダムはどこにいった?南水北調(南部の水を北部に送る水利プロジェクト)はどこにいった?」と投稿しています。
これらの干ばつの情報を伝えているのは一部のポータルサイトのみで、7月に入ってから河南省は降水量が少なく、気温が高く、37の県と市では連続20日間雨が降っておらず、省の66%の県と市で干ばつが深刻で、そのうち39%は特にひどい干ばつに見舞われていると伝えています。河南省気候センターは7月26日、気象干ばつオレンジ色警告を発表しました。
ツイッターに投稿された動画から、多くの地域で、作付けされたトウモロコシや落花生などの作物のほとんどが枯れてしまったことが分かります。
河南省鄭州市西部に住む李さんは「この地域の干ばつは数か月続いている。この数日で雨が降るには降ったが量が少なく、田畑には何の役にも立たなかった。一部の地域の灌漑条件が整っていない農地はまったく収穫が見込めず、政府は何の救済措置も講じていない」と語っています。
河南省鄭州市西部 李さん
「わが家のように水を引くことのできない一部の地域では、多くの木や農作物が枯死した。灌漑に条件がある場所では、灌漑不足でかなりの面積の収量が落ちた。政府はこうした農業従事者に対し、何の保障もしていない」
李さんは「条件のある農民はすべて都市部に出稼ぎに出たり、廃品回収をしたりしている。70歳の老人もだ。条件のない農民は山に入ってタンポポなどの薬草を摘み、それを売って命を繋いでいる」と語っています。
中国の農業研究者、王さんは、ここ数年、さまざまな災害が中国で頻繁に発生しているが、政府がこの件についてやることなすこと、すべて人々を激怒させていると述べています。
広西省の農業研究者 王さん
「今年水害が起きたとき、ウェブサイトで発表された政府の情報は一人当たり2元(約30円)を補助するというものだった。その後、湖南省の湘江の堤防が決壊したら、一人当たり約0.3元(約5円)となった。中国政府は特に最近は、貿易戦争という対外的な問題、香港問題、台湾問題などで、国民に目を向ける暇などないのだ」
王さんは「庶民が災害に見舞われたら政府は災害救援を行う必要がある。だから当局はずっと逃げている。もし大地震などが発生したら、世界中が注視する中、当局は救援しないわけにはいかない。また外国人に対しては非常に気前がいい。だが干ばつや水害は毎年あるのに、当局は適当にあしらっている」と述べています。
中国当局は最近、カンボジアに対し総理府修繕費として1億6600万元(約25億円)を援助しました。7月までに中国当局がカンボジアに提供した今年の援助総額は60億ドル(約6365億円)に上ります。
王さんは、中国共産党は本質的に「友好国には与えても、自国の奴隷には与えない」と指摘します。そのため、中国の現状を変えるためには、中国共産党を解体するより他に方法はないと考えています。