7月31日、中国で開催されたアイスホッケーの試合中に、11対2で試合をリードしていた香港チームの選手に対し、中国チームの選手7人が突然殴りかかり、審判はこの行為をしばらく放置しました。香港チームのコーチは、中国チームは絶対に負けられないと思って理性を失ったのだろうと考えています。
インターネットに投稿された動画には、中国人選手2人がこぶしで香港チームの選手の頭を殴り付けている様子が撮影されています。その他の4人の香港選手も別の中国人選手5人から殴られていますが、香港チームの選手は反撃せずに頭をガードして身を守っています。
この事件は河北省承徳市で開催された「第二回全国青年運動会」のアイスホッケーの試合で発生しました。7月31日、香港チームと中国チームの少年アイスホッケーの試合中に、最終的に香港チームが11対2でリードしていたところ、深センチームの選手7人が香港選手5人に突然殴りかかりました。
香港チームのコーチはインスタグラムに「香港チームがリードしたため、中国チームは『理性を失った』。殴られた選手5人はただ身を守るだけだったが、審判は何もせず、立って眺めていただけだった」と投稿しています。
コーチはさらに「我々は正々堂々とスポーツマンシップにのっとった試合をしたかっただけだが、中国大陸では不可能だ。反則を行い、卑劣でスポーツマンシップのない選手しかいなかった。コーチとして彼らを助けることができなかった」とも述べています。
北京体育学院の卒業生で、天安門事件の被害者でもある方政(ほう・せい)さんは「中国チームの選手は長年にわたり中国共産党から洗脳されて、いわゆる国家・民族感情を注ぎ込まれている。よって彼らには基本的にスポーツマンシップや試合における品格などは備わっていない」と考えています。
北京体育学院の卒業生で天安門事件被害者 方政さん
「スポーツでひとたび負けたり小競り合いが起きたりしたら、彼らはすぐに過激に反応し、我々中国が見下されたのではないか、我々の民族が侮辱されたのではないかという推測が広がる。そのため、こうした強烈で過激な反応が返ってくる」
あるネットユーザーは、「暴力が過ぎる。この憎しみはどこから来たのか?試合に負けるからか?11対2のレベルではまだ問題を説明できないのか?心も非常にもろいのではないか?」と投稿しています。
別のネットユーザーは「まさか少年チームだったとは。昨日見た時にはてっきり成人だと思っていた。将来の希望が憎しみを背負っているが、憎しみの根源を探し出そうとはしていない。希望が絶望に変わる!」とコメントしています。
事件が明るみに出た後、中国アイスホッケー協会広報部は香港メディア「香港01」の取材に対し、これらの行為は「試合中にぶつかっただけ」で「殴打事件」ではないと回答しました。
北京体育学院の卒業生で天安門事件被害者 方政さん
「これのどこが接触なのか?ほら、こぶしを振り上げているじゃないか。選手は防具を身につけているとはいえ、彼らは頭や顔、身体を殴ったり蹴り上げたりしている。このような行為を適切で単純な試合中の接触だと言える?平気な顔で嘘ばかり並べたてている!」
8月1日、香港アイスホッケー協会はこの件について、中国アイスホッケー協会が深センチームの選手三人に対し、一年間の試合停止を命じたと発表しました。
アイスホッケーの試合には喧嘩を許容するファイティングルールがありますが、必ず一対一でなければならず、複数で一人を殴ることはできません。またその際に選手はグローブを外してスティックを置く、鋭利な刃のついたスケート靴で攻撃しないといった決まりを守る必要があります。
これについてネットユーザーは「ホッケーをまだ習得していないようだ。さきにケンカを習ったんだな」と揶揄しています。
方政さんは「中国のこの体制は、上層部から民間に至るまで、横暴な雰囲気が満ちている。特にいわゆる民族感情や国家感情といった愛国主義にかかわる場合、中国の民衆はこれらの感情をより独特な方法で表現する。スポーツの試合中にこうした表現が徹底している」と語っています。
北京体育学院の卒業生で天安門事件被害者 方政さん
「中国ではスポーツと政治が密接な関係にある。スポーツの試合がなぐり合いになり、耐え難いほどの恥知らずな行為に変わる。審判もすぐには止めず、こうした感情の拡大を放置している。非常にまずい」
ある中国人の球技ファンは、中国の少年アイスホッケーチームの行為が、香港で行われている逃亡犯条例改正反対運動の影響を受けている可能性を排除できないと考えています。中国当局が7月から、香港のデモに関するネガティブな報道を始めているためです。
中国の球技ファン
「当局は香港の一部独立派と外部勢力が関わっていると報道し、共通の敵に立ち向かうよう 恨みを引き出そうとしているが、これは文化大革命式の宣伝方法だ。このタイミングで殴り合いが発生したのも、このことと関係があるかもしれない」
河北省出身のネットユーザーは「承徳市や河北省は私の故郷だが、赤くて独占的で、左寄りで、共産化レベルは驚くべきところまで進んでいる。香港人に対しこうした態度を取ることについて、身内で問題を処理する時の野蛮な方法を、公の場に持ってきたとしか言いようがない。こっけいで情けない!」と厳しく批判しています。
方政さんは、中国共産党の独裁体制を打ち破らない限り、中国のスポーツマンが平等な競争の中で、個人のスポーツ人生を表現することはできず、スポーツマンとしての精神と風格を真に示すこともできないと考えています。