8月14日未明、中国の官製メディア「環球時報」の付国豪(ふ・こくごう)記者が、香港国際空港で殴打されましたが、中国の官製メディアは付国豪氏をヒーローと讃え、大々的に報じました。一方、付国豪は記者証を持っていないばかりでなく、二つの名前を持っていたことが指摘されると、中国メディアの報道が急にトーンダウンしました。
事件発生と同時に、中国の官製メディアは付国豪氏が香港空港でのデモ隊に殴られたと大々的に取り上げました。「人民日報」は「報道の自由はどこに?法制はどこに?」と題した論評を掲載し、中央テレビのニュース番組も付国豪氏を取材しました。しかし、天地を覆い隠すような勢いで展開したこのヒーロー劇は10数時間後、急にトーンダウンし、大量の関連記事が削除されました。
事件発生後、ネット上では付国豪氏の真の身分に関する疑惑が提起されました。事件当時、付国豪氏の所持品からは身分証明書のほか、同一銀行で作った異なる名義の2枚の銀行カードが発見されました。さらに身分証明書の住所は、北京市海淀区万寿路にある国家安全部の職員寮の住所でした。また、「観光ビザ」で8月6日に香港入りし、有効期限は8月13日までで、事件発生の14日にはすでに期限が切れていたのです。
付国豪氏を環球時報記者であると認めた胡錫進(こ・しゃくしん)編集長はVOA(ボイス・オブ・アメリカ)の電話取材を受けた際、付国豪氏が国家安全部の職員であることを否定しましたが、記者証がないことは認めました。
広東省広州市人権活動家 郭さん
「環球時報の記者は偽物だ。間違いなく政府が派遣した者だ。記者は政府への登録が必要だが、彼は登録されていない。不法アルバイトではあるまいし、これは違法行為だ。官製メディアの報道内容を、私は逆にとらえる。一つの声しかなく、人々には何も教えない。彼らだけが声を出す、つまり嘘だということだ」
調べによると、付国豪氏が「環球時報記者」の身分で環球時報のウェブサイトに文章を発表しはじめたのは8月8日からでした。文章ではいずれも香港警察を支持し、デモ参加者に対しては激しい言葉で批判しています。付氏は13日深夜11時頃に香港空港に現れ、プレスの黄色ベストを着用し、抗議集会に参加している若者たちの顔を撮影していたため、中国本土または香港の警察関係者と疑われました。
上海の人権活動家 顧さん
「環球時報は共産党が管理する官製メディアだ。だから彼らの視点から報道する情報は、客観的事実とは異なる。私は官製メディアは一切見ない」
香港メディアによると、付国豪氏は当初英語で自分は観光客であると言いましたが、のちに所持品から「香港警察を愛する」と印字されたブルーのTシャツが見つかりました。しかし、中国ではこれらの問題点は報道されませんでした。