9月2日、ロイター通信が、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が「辞任したい」と述べた録音を公開しました。録音の中で長官は「とてつもない混乱を起こしてしまった。可能なら辞任し謝罪したい」と述べています。
ロイターが入手した24分にわたるこの録音は、先週開かれた財界関係者との非公開会合で録られたもので、林鄭氏は冒頭で「自分のせいで香港に言い訳のできない大混乱を招いた」と述べています。
林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官
「何の問題が出たのか、どうして問題が出たのかなどに、皆さんの時間を浪費したくない。しかし行政長官として、香港にこれほど大きな混乱を起こしてしまったことは、許されることではない。選択肢があるならば、真っ先に辞任したい。深く謝罪する方法は辞任しかない。それで許しを請いたい」
録音の中で、林鄭氏は北京当局は危機を終わらせる期限を設けていないとしたほか、軍隊を派遣して鎮圧することも絶対にないと述べています。
林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官
「私が保証できるのは、北京は最後の期限を設けていない。彼らも事態がさらに拡大していくことを知っている。10月1日までに解決できるとは期待していない。もう一つ、議論や自分の感覚を通して、中央政府が人民解放軍を送り込む計画は絶対ないと保証したい」
林鄭氏は、北京当局は国際社会で苦労して築いてきたイメージを簡単に破壊したくないため、市民の体力と意志を消耗していく「長期戦略」を取るだろうと直言しました。
また、香港の混乱は米国との緊張が高まる中国にとって国家安全保障・主権の問題となっているため、自身によって解決する余地は「非常に限られている」と説明しています。
6月の大規模デモからわずか3か月で、行政長官の声望は地に落ちました。録音の中で林鄭氏は、市民の抗議に遭うのを恐れて外出もできないと述べています。
林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官
「現在私は、外出も困難だ。街にもショッピングにも、美容院にも行けないし、何もできない。私がどこかに行こうとすると、すぐにSNSで広まり、黒服黒マスクの若者の群集が待ち受けていることが予想される」
しかし、3日の記者会見では、中央政府に辞任を申し出たことは一度もなく、辞任を考えたこともないとして、辞意を否定しました。
記者会見では記者が、政府関係者が録音を意図的に流出させたとの疑惑について質問しました。
記者
「行政長官、教えてください。ビジネス界関係者にはなぜ、辞任の選択肢がないと言ったのか。辞意を伝えたが北京から拒否されたことはあるのか。ないのなら、なぜ選択肢がないと言ったのか。二つ目の質問はロイターの報道についてだが、長官または政府関係者が、世論に影響を及ぼすために、あるいは北京に責任を転嫁するために故意にこれらをメディアに漏らしたとの噂が流れているが、これが長官の狙いなのかどうか、説明してほしい」
林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官
「当初から今に至るまで、中央政府に辞任を打診したことは一度もない。私的会合では、個人として、非常に困難な状況に置かれており、辞任は簡単な選択であると説明しようとしただけだ」
新唐人記者
林鄭氏が私的会合での音声が流出し、財界関係者の前で、香港に大混乱を起こしたことは許されないことだと認め、可能であれば辞任したいと述べました。しかし3日の行政会議では、中央政府に辞任を申し出たことは一度もないと何度も強調しました。
大紀元コメンテーター 李沐陽
林鄭氏は香港の行政長官であるにもかかわらず、香港の問題を解決する権限がなく、北京の同意が必要です。しかし中共は国際社会からの非難を避けるため、「香港は高度な自治が保障され、林鄭が主導している」と絶えず吹聴しているのです。こうなると、林鄭氏は口があっても何も言えなくなるのです。また、彼女には「罪人」というプレッシャーが付き纏っています。だから林鄭氏は自分の汚名をそそぎたいと思うでしょう。この角度から見ると、非公開会合の音声を流出させたのは林鄭氏で、外国メディアを借りて香港人にメッセージを伝えているのかもしれません。同時に北京にも伝えたいのでしょう。こうすることで、まさしく一石二鳥です。自分の汚名をそそぐことができるだけでなく、責任を北京に転嫁し、香港人が矛先を中国共産党に向けるようにすることができるのです。
4日午後6時、林鄭月娥行政長官は「逃亡犯条例」改正案を撤回すると表明しました。