中国で豚肉の価格が高騰し、過去最高を記録しました。中国各地で豚肉の買い占めが起きたため、中国当局は購入量の制限を打ち出したほか、政権の打撃となることを恐れ、豚肉の増産を「重大な政治任務」に位置づけました。
米中貿易戦争とアフリカ豚コレラの影響を受け、中国では豚肉が不足し、1キロ当たりの卸売価格が35元(約530円)まで値上がりしました。9月に入り一部の地域では、豚肉の供給制限や価格制限が行われています。
胡春華(こ・しゅんか)副総理は先日、豚肉の増産は「重大な政治任務」であると発表しました。これにより、任務が遂行できなければ関係者が処罰されることになります。
中国メディアは豚肉の買い占めが起きた理由について、アフリカ豚コレラの蔓延により豚肉が不足しているためだと強調しています。
時事評論家 唐靖遠氏
「アフリカ豚コレラによる豚肉生産量の減少は一つの側面に過ぎず、原因は米中貿易戦争だ。中国当局は米国に報復するため、米国産の高品質で低価格の豚肉の輸入を停止した。さらに米国産大豆の購入も停止したため、大豆を主とする豚用飼料の価格が高騰している。これらすべてが、豚肉の価格を制御できなくなった重要な原因だ」
米国在住の政治経済アナリスト、秦鵬(しんほう)氏は、中共の行う盲目的な報復政策こそが、豚肉の供給をコントロールできなくなった主な原因だと考えています。
在米政治経済アナリスト 秦鵬氏
「豚肉の関税追加は2018年4月からすでに三回実施され、税率は72%に達している。これでは肉の価格が上がるのも当然だ。米国産豚肉は安価で、関税を追加しても優位性がある。だが中共は企業や個人の判断、もしくはマーケティング判断によるのではなく、直接輸入禁止を行う。これは米国に対してだ。孟晩舟事件があったため、カナダからの豚肉の輸入も禁止した。そして中国はアフリカ豚コレラに感染したロシア産の豚肉を輸入した」
秦鵬氏は「中国当局はアフリカ豚コレラの流行地域であるロシアから豚肉を輸入した。その後その情報を隠したことでアフリカ豚コレラがさらに蔓延した。加えて、中国東北部を豚肉の一大生産地に変えるという政策を実施したがコストダウンに繋がらず、返って豚コレラの急速な蔓延を後押した」と分析しています。
在米政治経済アナリスト 秦鵬氏
「中共はここ数年『環境保護』を口実に多くの養豚場を強制的に閉鎖し、畜産禁止区域に指定した。補償もせず、多くの民衆の心を傷つけた。これもまた生産量不足の原因となっている。今になって中共は養豚を呼び掛けているが、豚コレラはいまも広がり続けている。当局の政策は朝令暮改だ。誰が従おうと思うだろうか」
中国は世界最大の豚肉消費国で、年平均で約7億頭の豚が消費されています。貿易戦争がこれからも続くのであれば、将来的には豚肉だけでなく、エネルギーや食糧などの購入も配給切符の時代に逆戻りするのではないかと考える人もいます。
在米政治経済アナリスト 秦鵬氏
「中国人は忍耐強く、苦しみに耐えられる人たちだが、意志は体の真実の反映を完全に代替できるものではない。家族や子どもは肉を必要としている。反米だの愛国主義だのと言ったところで、中身がない。うそっぱちだ」
評論家は、中共が貿易戦争を行う実質的な意味は、14億の国民の基本的な生存ニーズを奪い、支払うべき代償を準備することだと考えています。
時事評論家 唐靖遠氏
「米国に代わる超大国になると吹聴している国が、突然豚肉すら食べられなくなった。これは中共のイメージを大きく損なうだけでなく、民衆が実質的にパニックを起こす恐れがあり、中国が治安維持に費やすコストも大幅に増加する可能性がある」
このほどオープンした米国企業のコストコ上海店に買い占めを行う顧客が殺到しました。中国メディアは「驚くべき消費力」と形容しましたが、多くの市民がコストコに詰めかけたのは、豚肉が市場価格より3割も安い値段で販売されていたためです。
時事評論家 唐靖遠氏
「庶民は表面的には党メディアに従って反米を叫ぶだろうが、彼らの行動をみると米国産豚肉が高品質で低価格だと正直に認めており、米国製品が歓迎されていることも認めている。これは実質的には、行動によって中共の反米宣伝に平手打ちを食らわせているに等しい」
米中貿易戦争の激化に伴い、多くの外資機関が来年の中国の経済成長の見通しを下方修正しています。オックスフォード・エコノミクス、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、UBS、ブルームバーグ・エコノミクスなどはいずれも、中国の来年の成長率は6%未満になりうるとの見方を示しています。
UBSの専門家は、2020年までに米国と中国は貿易協定を結ぶのは不可能で、その過程において中国の経済成長は下降に向かうさらに大きな圧力にさらされるだろうと予測しています。