10月末に深センで閉幕した中国国際社会公共安全博覧会で、中国共産党が開発中の「感情識別技術」が注目を浴びました。ある政府高官は「感情識別技術」はすでに当局の厳格な監視下にある新疆ウイグル自治区で使用されているほか、各地の空港や駅にも続々と投入されているとしています。
英フィナンシャル・タイムズは11月1日、顔識別技術の次に中国共産党は、大衆監視分野において「感情識別技術」という新技術を開発したと報じました。この技術はすでに各地の空港や駅に投入されており、新疆ウイグル自治区にはすでに「感情識別システム」が配備されているとも報じています。
報道によると、新疆ウイグル自治区のアルタイ地区公安局治安支隊長の李暁宇(り・ぎょうう)氏は「感情識別技術」を使用して、ビデオ映像から人間の心理状態を分析して容疑者を迅速に識別できるとして、「すでに使用を開始した」と述べています。
李暁宇氏はさらに、彼らは新疆ウイグル自治区で、防犯カメラメーカーのハイクビジョン(海康威視)、IP監視カメラメーカーのユニビュー(uniview 宇視科技)や大華(ダファー )といった企業や、AI分野の巨頭、アリババやテンセントと提携し、新疆政府もこれに加わっているとも説明しています。
国連や複数のメディアはいずれも、新疆で100万人が再教育センターに収容され、洗脳と政治的宣伝を受けさせられていると指摘しています。中国共産党当局による新疆の少数民族の人権弾圧に協力している疑いがあるとして、米国は今年10月にハイクビジョンや大華など中国ハイテク企業8社による米国製品の購入を禁止しました。
10月末に公共安全博覧会に参加したバイドゥ(百度)の展示ブース代表だった甄文荘(けん・ぶんそう)氏は、「感情識別技術」を含む監視設備を備えている学校や公安部門は今のところ少数で、この技術を商業利用するにはまだ不十分だとしています。一方、顔認証技術で知られるメグビー(曠視科技)のある人物は、「感情識別技術」は政府内部、特に公安局ですでに広く使用されていると吐露しています。
評論家は、中共は監視技術分野で先端技術を追い求め、中国社会に恐ろしい未来をもたらすと考えています。
北京の時事政治ウォッチャー、華頗氏
「ハイテク技術で社会をコントロールするというこの一点について、中共は世界で初めてこれを綿密に整備したと言える。中国では一人一人が電子手錠をはめられて、大きな監獄に入れられているようなものだ」
中国のインターネット作家、荊楚氏
「人の感情は千差万別だ。こんなことをしているとこの社会に、暴政に対する憎しみと恐怖が生まれる。話したいことも話せないため、あるネットユーザーは『現代は敏感ワードの時代で、『国民』や『納税者』なども口にできない。これは非常に恐ろしいことだ』と投稿している」
官制メディアの中央電視台は9月、中国の科学者はすでに5億ピクセルの解像度を備えたカメラを開発しており、数万人の顔を同時に識別して特定の人物を探し出すことができると報じています。また「感情識別技術」の開発と応用からわかるように、当局はまだ満足しておらず、民衆の頭脳と心理状態をさらに知りたいと考えているとしています。
中国のインターネット作家、荊楚氏
「これは『誰も逃れられない』状況を作り出し、庶民の全てをコントロールするものだ。庶民の心の中が見えないので、彼らは恐れを感じ、この社会を信じられなくなった」
中国共産党政権樹立70周年を迎えて陥ったこのような状況を、荊楚さんは自作の小話で形容しています。
中国のインターネット作家、荊楚氏
「共産党は当時、人々を集めて国民政府をひっくり返し、民主化、自由、人権を叫んだ。もし彼らの当時の掛け声が真実のものだったとしたら、現在の状況は歴史の誤りだ。当時の彼らの掛け声が嘘だったのだとしたら、今日の結果は歴史に欺かれたということだ」
こうした無制限の監視技術に対し抗議の声を挙げた中国人研究者もいます。清華大学法学院教授で博士課程指導教員の労東燕(ろう・とうえん)さんはこのほど、個人のウィーチャットアカウントに長文を掲載し、国民の個人的な生物認証情報が当局に乱用されることを憂慮していると述べています。また浙江理工大学の客員準教授、郭兵さんは、動物園の年間パスポート規定が変更されて顔認証を求められたことに対し、パスポート所有者の同意のないままシステムを変更したとして、動物園に対する訴訟を起こしました。これは「中国初の顔認証訴訟」と呼ばれています。
北京の時事政治ウォッチャー、華頗氏
「個人の生物認証情報は個人のプライバシーに関するもののはずだ。だがもし誰かが犯罪者だったり容疑者だったりしたら、政府はこれらを把握する権利を持っている。もし全国民がそうだったら、全国民を容疑者として扱う」
フィナンシャル・タイムズはさらに、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの大企業が「感情識別技術」の研究開発に励んでいるが、成果は上がっていないと報じています。北京の著名なハイテク技術ブロガーの葛甲(かつこう)さんは、感情識別技術にはまだ笑い話のような要素があり、3年から5年以内に大規模に広がることはまずないだろうと指摘しています。