ベルギーの大学に設置された孔子学院の宋新寧院長が、スパイ活動を行ったことでベルギーと欧州連合26カ国への入国を禁止されました。一部の西側諸国は国家安全保障のため、今回のベルギーの措置に続くのではないかとの見方があります。
ベルギー日刊紙ド・モルゲンは10月29日、ブリュッセル自由大学の孔子学院の宋新寧(そう・しんねい)院長が、スパイ活動を行ったとしてベルギーと欧州連合シェンゲン圏への入国を8年間禁止されたと報じました。
宋新寧はベルギー赴任時に10年以上、豊富な人脈を駆使して中国共産党の情報機関のために働いていたとも報じられています。
ブリュッセル自由大学もこの件を把握していましたが、同大学の副学長はメディアの取材に対し入国禁止には触れず、宋新寧の就労ビザが7月で切れ、妻と共に中国に滞在中だと述べるにとどめました。
中国人民大学欧州問題研究センターの主任だった宋新寧は2007年にベルギーに赴任し、2016年にブリュッセル自由大学と人民大学が協同で設立した孔子学院の中国側院長に就任しました。
宋新寧は欧州の官僚と緊密な関係にある多くのシンクタンクや大学と密接な関係を築いていました。また、宋新寧が中共情報機関に情報を流し、中国人留学生やビジネスマンの中からめぼしい人物をスパイに勧誘していたことを示す証拠も見つかっています。
時事評論家の田園氏
「ブリュッセル自由大学の事件によって、入国を禁じられた宋新寧が自分のさまざまなコネクションによって学術界の著名な研究者をスパイに勧誘していたことがはっきりと分かった。アジア系、中国系の研究者だけでなく、白人や欧米の中国系研究者にも彼らの手が及んでいるはずだ」
宋新寧のスパイ活動をきっかけに、ベルギー当局は警戒を強めています。宋新寧はもともと10月3日にベルギー王立国際関係研究所で欧中関係に関する報告を行う予定でしたが、就労ビザの延長を申請するまで自身に対する入国禁止措置を知りませんでした。
カナダの中国人作家、盛雪氏
「これは非常によい進展だ。なぜなら全世界が孔子学院の本質を絶えず認識する過程で必然的に発生した事件だからだ。長年にわたり、我々は孔子学院に反対し続け、孔子学院は教育や文化、言語、学術交流などとは一切関係ないと強調し続けてきた」
カナダ在住の作家、盛雪(せいせつ)さんは、孔子学院の最も大きな特徴は、中共のイデオロギーを民主主義国家に根づかせることだと指摘しています。中共は民主主義国家で党の意志を実現するため、いわゆる教育、教学、文化交流などを行ってきましたが、その過程こそがスパイ活動だと指摘しています。
ベルギーのニュース週刊誌Knack(ナック)は早くも昨年、ブリュッセル自由大学は国の安全部門が発した孔子学院に対する警告を無視していたと報じています。
ベルギーの大学が中共安全部門にサービスを提供する大学と提携関係を結んだ経緯など、当時の副学長、Jan Cornelis(ヤン・コルネリス)氏と中共が結んだ提携には問題があったため、同副学長はすでに退職しています。ブリュッセル自由大学は中共との提携プロジェクトに対する内部審査と外部審査を行いました。
ブリュッセル自由大学は主にオランダ語教育を行う大学で、学校側は中国共産党政府から経費として毎年20万ユーロ(約2400万円)を受け取っていたことを認めています。
時事評論家の田園(でんえん)さんは、これまでに中共が各国で行ってきたやり方を見ると、孔子学院の設立目的はその国の情報や技術を収集することだと語っています。
時事評論家 田園氏
「世界の国々は中共の正体をはっきり認識すべきだ。孔子学院、孔子教室、『漢辦』のマークの付いた中共のすべての『学術機構』を駆逐すべきだ。そうしなければ自国の安全は保証できない」
ブリュッセル自由大学以外にもベルギーの多くの大学に孔子学院が設立されています。
国境なき記者団(RSF)は報告書の中で、中共は大使館や孔子学院のネットワークによって、世界の国々に「情報の審査とコントロール」を「輸出」する目的を果たそうとしていると警告しています。
ここ数年、米国、スウェーデン、フランス、オランダ、カナダなどで多くの孔子学院が、その国の学問の自由に干渉したとして続々と閉鎖されています。