中国貴州省の極貧の女子大生吳花燕(ご・かえん)さんが1月13日に亡くなりました。中国の慈善機構が吳さんの名義で100万元(約1600万円)を募りましたが、実際吳さんのために使われたのはわずか2万元だったことがあきらかになり、物議を醸しています。
貴州省極貧大学生 吳花燕さん
「他の子のように、私は親におねだりできない。私には親がいない」
貴州省の24歳の女子大学生、呉花燕さんは、4歳の時に母親を、18歳の時に父親を亡くした後は、精神障害のある弟と、毎月300元(約4800円)の生活保護で暮らしていました。しかし、弟の治療費を捻出するため、呉さんは食費を切り詰め、一番安い味付け唐辛子をご飯にかけて食べていました。このような生活を5年も続けた結果、呉さんは極度の栄養不良に陥り、心臓と腎臓に障害が生じ、髪の毛や眉毛も抜け落ちました。23歳の時、呉さんの身長は135センチ、体重はわずか21キロでした。
昨年10月、呉さんは深刻な心臓弁膜症で入院しました。医学資料によると、栄養不良は心臓弁膜症誘発の原因の一つです。呉さんの境遇はメディアの報道によって、中国で広く知られるようになり、ネット上では様々な募金活動が行われました。
呉さんの入院後、中華少年兒童慈善基金会の9958プラットフォームは呉さんの治療費の名目で100万元(約1600万円)の寄付金を募りました。
しかし、呉さんが亡くなった1月13日にまでに、この基金会が貴州第二病院に支払った医療費は2万元のみで、寄付金の6%を手数料として差し引いていることが明らかになりました。
呉さん本人に残りの寄付金を渡していないことについて基金会は「寄付金は呉さんの手術および回復の段階になって使う予定で、医者からは呉さんの体重が30キロ以上になってから手術が可能だと言われた」と説明しています。しかし、呉さんの体重は30キロに達せず、手術を受けられませんでした。
時事評論家 唐靖遠氏
「寄付は吳花燕さんの命を救うためだ。この寄付金でもっと良い治療を受け、栄養問題を解決し、手術できる状態になるように使えたはずだ。もし本気で彼女の命を助けたかったら、多くの措置があったはずだが、彼らはそうしなかった。そうすると、彼らが寄付
金を募ったのは、彼女を救うためだったのか、それとも6%の手数料が目当てだったのか?」
呉さんの居住地である貴州省は中国で最も貧しい地域の一つですが、官僚の不祥事は後を断ちません。2018年には、官僚が貧困削減基金を横領した事件が複数発生しました。
今年の1月12日には、汚職容疑で拘束された王曉光(おう・ぎょうこう)元副省長が1.7億元(約27億円)もの不法所得を得ていたことが報じられました。さらには、自宅の部屋には高級酒「茅台酒」(マオタイしゅ)が4000本以上保管されていましたが、証拠隠滅のために、王曉光は多くの「茅台酒」をトイレに流しました。
中国のネットユーザーは、これはまさに唐の詩人、杜甫の名句「朱門(しゅもん)には酒肉(しゅにく)臭(くさ)きに、路(みち)には凍死(とうし)の骨有り」の現実版であると嘆いています。
歴史学者 劉因全氏
「今の中国は、中共のこのようなリードの下、独裁官僚資本主義体制が出来上がっている。彼らが政治、経済、文化など社会の全ての資源を独占し、庶民にはわずかな生存空間しか残されてない。だから現在の体制ではこれらの問題は解決できない」
中国共産党当局は2020年末までに貧困を撲滅し、「全面的な小康」を実現すると宣言しました。しかし、貧困脱却ラインは年収4000元、月収にすると300元(約4800円)に設定されており、これは呉さんが生前送っていた生活と同じレベルなのです。