魚の減る長江で10年間の禁漁措置 専門家は「三峡ダムが元凶」

中国大陸の長江流域は、長年にわたる堤やダムの建設、水質汚染やの乱獲などの影響によって、水域生態環境が悪化し続けています。長江の漁業禁止計画が2020年から10年間にわたり実施されますが、専門家は、単純な禁漁措置では生態環境の根本的な回復は望めず、かつて中共が「エネルギー問題」を解決するために、専門家の反対を無視して建設した三峡ダムこそが、環境問題の元凶だと指摘しています。

中共農業農村部公式サイトが、長江流域の重点水域漁業禁止範囲とその期間を通達し、2020年1月1日から、長江で10年間の漁業禁止計画を実施すると発表しました、中国メディアは、過去数十年にわたる魚の乱獲により、長江は「捕れば獲るほど魚は減り続け、生態環境が漁業によってますます悪化し、魚を捕れば獲るほど漁師は困窮する」状態に陥っていると報じています。

北京当局は過去に毎年三カ月間の禁漁期間を設けていましたが、毎年7月の解禁日から数日間で、三カ月間の禁漁の成果が乱獲によって相殺されていました。

中国のある研究者は、長江を通年禁漁にすると魚が増えて個体数が増加し、一部の希少な魚も十分な食物をとることができるようになるため、長江の生態システムが徐々に回復すると考えています。

一方で、ドイツ在住の水利専門家、王維洛(おう・いらく)さんは、通年の禁漁は生態環境の回復に何の役にも立たないと指摘しています。

ドイツ在住の水利専門家、王維洛氏
「私は禁漁措置には賛成しかねる。漁獲量を減らすのには賛成だが、禁漁ではない。禁漁は生態環境を保護する手段ではない。なぜなら人間は他の動物と同様に、環境の中の一つの要素であるため、生態環境を保護する過程に参与しなければならない。よって適切な量の漁獲は不可欠であり、それは生態環境にも有益だ。絶対的な禁漁は役に立たない」

水中の生物資源の深刻な減少に加え、長江の生物完全性指数も、最も劣る「魚がいない」レベルに落ち込んでいます。環境科学学術誌「サイエンス・オブ・ザ・トータル・エンバイロメント」にこのほど掲載された論文で、長江特有の生物「ハシナガチョウザメ」が絶滅したことが明らかにされました。

清華大学水利学部の元教授、黄万里さんの娘の黄肖路(こう・しょうろ)さんは、かつて父親は江沢民元総書記に三峡ダムの建設は百害あって一利なしだと訴える書簡を送ったが、この政治的プロジェクトは最終的に強行され、今日の悲惨な結果を生むことになったと指摘しています。

清華大学水利学部の元教授、黄万里さんの娘の黄肖路さん
「長江の10年間の禁漁措置とカラチョウザメの絶滅はいずれも、三峡ダムという国と国民に災いをもたらすプロジェクトのせいで起きたことだ。そしてこのプロジェクトを行った、非民主主義政府によってもたらされたものだ」

官制メディア新華網も先日の報道で、大型ダムや貯水池の存在が水文条件を変えたと認めました。2011年から2018年にかけて、三峡ダム貯水池では、長江でよくみられる四種類の魚の自然繁殖状況を調査する生態系管理試験を12回行っていますが、その漁業部門の調査によって、四種類の魚の繁殖数がいずれも約90%低下していることが明らかになりました。

王維洛さんは、魚類資源の減少と生物多様性指数の低下は二つの別個の問題だが、どちらも三峡ダムプロジェクトと直接的な関係があると考えています。

ドイツ在住の水利専門家、王維洛氏
「希少な固有魚類の絶滅は、漁業ではなくダムがその主な原因だ。今禁漁を始めて、漁業をやめて、数年後にどうなるか。恐らく我々は『長江のカラチョウザメが絶滅した。長江のアワビが絶滅した』というニュースを聞くことになるだろう」

王維洛さんは、長江の魚の減少にダムと直接的な関係があるのは当然だと指摘しています。

ドイツ在住の水利専門家、王維洛氏
「ダムの建設以降、泥や砂はダムの内側に堆積するため、川下に流れるのは澄んだ水だ。そうした水には栄養分が含まれておらず、栄養分はダムの中にとどまる。よって魚は十分な食物が得られず、個体数も減っていく」

統計データによると、1954年に42.7万トンあった長江の漁獲高は、現在10万トン未満まで落ち込んでおり、これは中国の淡水魚漁獲高のわずか0.15%にすぎません。1960年代には50数種あった主な換金魚類も、20数種類まで減少しています。

中国政府の記録によると、長江流域の重点水域における禁漁措置は、10の省と市における合法漁船11万3000隻、漁業従事者28万人に影響が及ぶことが明らかになっています。

 
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