武漢の封鎖が「中国製造2025」の心臓部を直撃

新型コロナウイルスの感染拡大が「中国製造2025」の心臓部である武漢を直撃し、現地の自動車製造業やハイテク産業に深刻な影響が出るのではないかと日本経済新聞が報じました。

武漢市内では通りを歩く人もめっきり少なくなり、商店のシャッターも締め切ったままです。新型コロナウイルスの感染が広がったため市内の交通は封鎖され、市民は通勤することもできません。日本経済新聞は、工場の生産能力が直接打撃を被り、武漢で発生した肺炎が「中国製造2025」の中核都市である武漢を直接的にまたもや痛めつけていると指摘しています。

台湾光電科技工業協進会総監の林穎毅氏
「現地の武漢ではもともと過剰生産と成長の減速という現象が生じていた。そこに(肺炎が)現地の産業(の衰退)にさらに追い打ちをかけた」

武漢市は2000年から、国家レベルハイテク産業開発区の一つである武漢東湖新技術開発区の中に光電子部品の生産基地を設け、「中国光谷(オプティカルバレー)」と称し、米国のシリコンバレーと肩を並べることを目指してきました。世界の光ファイバー・ケーブルの約25%が武漢で生産されており、光通信部品や光伝送設備技術は、5G関連産業の発展と連動しています。

台湾の光電科技工業共進会は、武漢地域で新型コロナウイルスが食い止められても、光通信産業のサプライチェーンが深セン市に移転し、産業ニーズが少なくとも四半期から半年遅れると予測しています。しかし、感染が再び拡大した場合は経済全体が衝撃を被る恐れがあり、その影響は計り知れないとも考えています。

台湾光電科技工業協進会総監の林穎毅氏
「彼らは職場復帰を一週間、二週間と遅らせており、間もなく彼らの生産額と生産能力に影響が出るだろう。特にこの第一四半期の経済活動全体にペースの遅れが出るだろう」

武漢は中国の交通の要塞でもあるうえ、主な工業都市でもあり、自動車メーカー500社余りの合弁会社が設立されているほか、国有企業の半導体メーカー紫光(しこう)集団は、武漢を3D NAND(スリーディなんど)フラッシュメモリの量産地に選定しています。また電子部品メーカーの京東方科技集団(BOE)も武漢にパネル工場を建設しました。統計によると、武漢の年間生産額は1兆元(約15兆7000億円)を超え、中国の都市の9位にランクインしています。さらに湖北省の経済規模は中国経済全体の4%以上を占めているため、経済面で被る打撃は大きく、外部の予想をはるかに上回っています。

財団法人台湾経済研究院の顧問で研究院の劉佩真氏
「そのうえ、その他の電子部品は現在、供給面に関していくつかの懸念がある。つまり、その他のパネルや受動素子、あるいはPCBの部分も含んでいるという点だ。下半期の一部の新品についても、現時点では(生産が)延期されると思われる」

新型コロナウイルスによる肺炎の流行が収束するきざしは見えず、バンク・オブ・アメリカの元上級ヴァイスプレジデントで研究者の呉明徳(ごめいとく)氏は、感染の広がりによって中国のGDPが15%減少すると分析しています。また、ゴールドマン・サックスの経済学者は中国の今年のGDPの成長率はこれまでの5.9%から5.5%に下がるだろうが、感染の拡大を防ぐことができなければ、今年の成長率は5%まで下がるだろうと予測しています。

財団法人台湾経済研究院の顧問で研究院の劉佩真氏
「外資系を含む一部の電子機器メーカーは、(生産拠点の)グローバルなレイアウトを行っているため、感染問題のように今後も続く可能性のある一部の問題や米中間の科学技術戦争も含めて、この生産拠点を継続させるかどうかを考慮して、台湾や東南アジアの別の地域に移転させるだろう」

今後、感染拡大を防ぐことができなければ、外資系企業やサプライチェーンの今後の発展に影響が及びます。米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、2020年の中国銀行業界の不良債権は5兆6000億元(約88兆円)に上り、金融の健全性に試練をもたらすだろうと予測しています。

 
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