2月12日、新型コロナウイルス肺炎を発症したアカウント名称「伯曼児」の武漢の女子大生が、瀕死の状態で中国共産党と政府に「感謝する」と発言した動画がネットに公開されました。その前にこの女子大生は発症したため自主的に隔離を決断したが、病院で治療してもらえないと当局を非難していたことが注目を集めていました。その後、女子大生のウェイボーは2月17日と27日に更新されましたが、以前とは違い、写真なしの文字のみで、27日の投稿では今後は更新しないと記しています。多くのネットユーザーは、この女子大生はとっくに死亡しており、当局が勝手に書き込んでいると考えいています。
新型コロナウイルスに感染し、自主的に隔離を求めて入院したこの女子大生が最後にアップした動画は、意外にも「党に感謝する」と述べたものでした。
武漢の大学生、伯曼児さん
「私はすでにはっきり説明している。私にはたくさんのファンがいるが、私のファンたちがデマを流したりはしないと信じているし、そう望んでいる。あなたたちは私を励ましてくれる。私の家族も私が家に帰ってくるのを待っていると私は信じている。私も頑張ってこの病気と闘っていく」
続いて女子大生は「私たちは国を信じ、政府を信じなければならない」と話しました。この時、彼女は両目をかたく閉じていました。
2月2日の投稿でも同じような内容が記されていました。その後十日余り、新たな投稿はなく、ネットユーザーらは彼女がもう病気に耐えられないのではないかと憂慮していました。
あるネットユーザーは、彼女はウェイボーで武漢がコントロール不能な状況に置かれていることを暴露したために、中共から愛国・愛党を示さなければ治療を受けさせないと脅されたのではないかと疑問を呈しています。生きたいという強い思いから、仕方なく愛国を口にしたものの、最後にはどうすることもできず、この世を去ってしまったのではないかと推測しています。
別のネットユーザーは、この女子大生は2月2日夜8時27分に亡くなったと投稿していますが、今のところ事実確認はできていません。
女子大生のこの動画は瞬く間に広まり、多くのネットユーザーが注目しました。
あるネットユーザーは「彼女の表情や目の動きを見ると、絶えず周囲を気にしている。これは治療を受けるためにやむを得ず行った演技ではないか。感染地域に住む人間として、生きたいという強烈な望みと現実に対する失望が感じられる」と投稿しています。
米国在住の中国人研究者、呉祚来(ご・さくらい)さんは、女子大生がもし動けるのなら、彼女は座って動画を撮って無事を知らせただろうと語っています。
米国在住の中国人研究者、呉祚来さん
「だが、彼女はベッドに横たわって酸素吸入を受けており、非常に深刻な状態にある。このような時に彼女はネットユーザーらに『党と政府が病気を治してくれると信じている』と話している。これは宣伝部門か関連部門が彼女に圧力をかけた結果に違いない」
呉祚来さんは、彼女はネットに武漢の状況の真相を語ったため、中共がこれを容認できず、彼女を脅してこの動画を撮らせたのではないかとも語っています。
米国在住の中国人研究者 呉祚来さん
「共産党による言論の弾圧や、言論の自由の抑制は、この病気に対する抵抗を超えていることが分かる。ある友人は、彼らが治安維持費の十分の一をこのウイルス対策に充てていたならば、このウイルスは発芽の段階で消滅していただろうと語っている」
中共が情報封鎖と言論統制を行うなか、新型コロナウイルスの蔓延は制御できなくなりました。流行の初期段階で、中共はウイルスに関する真実の情報を伝えた李文亮医師を始めとする複数の医療従事者を処罰し、ウイルスは予防と制御が可能であり、ヒト-ヒト感染は起きていないと宣伝しました。その後に感染が広まると当局は広範囲な都市封鎖を断行すると同時に、民衆の発言も厳しく封じました。
新型コロナウイルス肺炎に感染したこの女子大生は1月29日、「自分は旧暦の大みそかの夜、隔離されるために自主的に病院へ向かったが、地獄へ行くことになるとは思ってもみなかった。医者は薬も出さないし点滴も打ってはくれず、病院で放置されている」とウェイボーに投稿しています。
彼女の投稿が注目を集めると、警察は家族を脅したうえ、逮捕すると彼女を脅迫しました。その後、病状が悪化し続けた彼女は一週間の間、助けを求め続けましたが黙殺されてしまい、「もう私はだめだ。遺書も書いた」と書き込んでいました。
2月1日にはさらに、「病院は私が死んでいないのを知ると、私の酸素吸入を止めた。彼らはグルになって私を殺そうとしている。このままでは死んでも死にきれない。私は生きたい!」と投稿しました。
女子大生がこれらの投稿を行ったところ、警察からの圧力に加え、中共の五毛党や若い世代の民族主義者からも激しく非難されるようになりました。
中国のネットユーザー、呉さん
「中国人が14億人いるなかで、この女の子のような状態に置かれている人は数えきれないほどいる。ただ気の毒な女の子はもう死んでしまった。まだ死んでいない人がたくさんいるというだけの話だ。だから我々は彼女に対しあれこれ言う資格はない。実際には、我々の身近なすべての人が、基本的には同じ状態に置かれているのだから」
感染の広がりをコントロールできなくなった中国で、この女子大生のケースは特別なものではなく、さらに数えきれないほどの患者の家族が絶望的な状態に置かれながら生きたいと願っています。
過去1~2カ月の間にインターネットには助けを求める大量の投稿がされています。2月10日から中共は武漢地域の実情がインターネット経由で広まるのを防ぐため、武漢の一部地域でネット封鎖を行っているとの情報もありましたが、3月1日からはネット管理の新規定が施行され、「国家の安全を損なう内容、経済や社会の秩序をかき乱す情報の発信を禁じる」としています。当局にとってネガティブな情報を発信した場合、処罰の対象になるとのことです。