中国がサバクトビバッタの飛来を警戒 食糧難とインフレの可能性も

中共林業草原局は3月2日、アフリカトビバッタが中国に侵入する可能性があると警告を発しました。専門家は、蝗害(こうがい)によって 穀物価格が上昇すると、中国では輸入農産品や食品に起因するインフレが起きる可能性があると指摘しています。

サバクトビバッタが東アフリカの農地を襲いながら東進し、インドとパキスタンに入りました。現地の農産物が壊滅的な被害を被っています。

ケニアの住民
「バッタが飛来したら、草に至るまですべてを食べつくす」

中共林業草原局は3月2日、アフリカトビバッタが中国に侵入する際に通る可能性のある3つのルートを挙げました。パキスタンとインドを経由した場合はチベットに、ミャンマーを経由した場合は雲南省に、カザフスタンを経由した場合は新疆ウイグル自治区に飛来すると予測し、イナゴの防御は「きわめて重要」であると警告を発しました。

国連食糧農業機関(FAO)ケニア代表 Tobias Takavarasha氏
「蝗害は食糧の安定確保に空前の脅威をもたらしている」
1平方キロメートルをカバーするイナゴの群れは一日で3万5千人分の穀物を食べつくすと推定されています。国連食糧農業機関は、イナゴを制御できない場合、今回の蝗害は今年6月まで続く可能性があり、イナゴの個体数は現在の500倍まで増える可能性があると予測しています。

ケニアの農家
「私が収穫できたのは一袋のアワとフジマメだけで、ほかはすべて食べられてしまった」

蝗害が中国まで広がるかどうかは確定されていませんが、国連食糧農業機関が警鐘を鳴らしたのは確かです。アフリカのソルガム、インドとパキスタンの小麦と綿花は蝗害によって減産すると予測しています。中国の投資銀行大手の中国国際金融(CICC)は、世界のソルガムの価格が上昇するリスクがあり、小麦と綿花の国際価格も12%〜16%上昇する可能性があると指摘しています。

中国は2018年に53億元(約815億円)分のソルガムと39億元(約600億円)分の小麦を輸入しています。よってこれらの国際価格が変動すると、中国も打撃を被ることになります。

米国サウスカロライナ大学エイキン校ビジネススクールの謝田教授
「中国の穀物生産量が被る影響はまだはっきりしないが、世界の穀物価格が上昇すると、少なくとも輸入農産品や食品に起因するインフレが中国で起きる可能性がある。中国は毎年1億トンもの穀物を輸入する必要があるからだ」

蝗害のほか、中国は昨年初めて発生したツマジロクサヨトウが、2020年に爆発的に広まるリスクも抱えています。

中国農業農村部は2月20日、今年1年間でツマジロクサヨトウから被る被害面積は1億ムー(約666万ヘクタール)に達し、中国のトウモロコシ作付け面積の50%以上が脅威にさらされると予測しています。中国のトウモロコシ生産量は3年連続で不足しており、2018年には40億元分ものトウモロコシを輸入に頼っています。不足がこれ以上深刻化すると、トウモロコシを原料とする家畜の飼料やエタノールの価格も上昇し、食肉価格も上昇する可能性があります。

米国サウスカロライナ大学エイキン校ビジネススクールの謝田教授
「中国の家畜の価格は飼料に影響されるため、この点も非常に重要だ。これら動物性たんぱく質の価格が上昇し、摂取量が減少すると、食料ニーズがさらに高まり、穀物価格が上昇する。なぜなら庶民は、肉があまり食べられなくなるとその代わりに穀物などを多く食べるようになるからだ」

蝗害が食糧難を誘発してインフレを加速させる可能性がある中で、中国経済武漢肺炎ウイルスの蔓延で停滞しています。この2つの要因が絡み合って、中国経済は「停滞型インフレ」の苦境に立たされる可能性があります。

 
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