中国版バミューダトライアングル 30年間で200隻がの船が失踪

大西洋のバミューダトライアングルは、船舶や航空機などの失踪事件で有名な場所です。実は、中国江西省にも「バミューダ」があります。船の失踪事件が頻繁に発生したため、十大旅行禁止区の一つに指定されました。

「中国バミューダ」は鄱陽湖と長江がつながる所に位置しています。長さは南北に約27キロ、幅は平均8.9キロ、東岸に老爺廟があったため、「老爺廟水域」とも呼ばれます。この水域では船の沈没事故が多くありました。最も注目されたのが1945年の「神戸丸」の沈没事故です。

第2次世界大戦終戦前の1945年4月16日、この日は穏やかな天気でした。「神戸丸」は200人余りの兵士と大量の骨董品や掛け軸、金銀財宝を載せて、鄱陽湖を航行していましたが老爺廟水域を通過するときに海が荒れ狂い出しました。

巨大な波が空に舞い上がり、濃霧が立ち込め、暴雨が降り注ぎました。「神戸丸」は瞬く間に断裂して瞬時に沈み、湖面から消えました。しかし、その後すぐ雲が割れて青空が現れ、穏やかな天気に戻ったのです。5分の間の出来事でした。

九江駐在の日本海軍部隊はこのことを知り、すぐさま捜査隊を派遣しました。事故現場の水面は湖底まで僅か30メートル余り、隊長の山下提昭大佐が7人の潜水員を率いて潜りました。時間がかなり経って、日が暮れる頃、隊長だけが水面に現れました。しかし隊長は周りがいくら声をかけても、ただ呆然としており、とうとう精神喪失しました。

1946年夏、米国の有名な海洋サルベージ専門家エドワー・ポルトン博士は、神戸丸を引き上げるために国民党政府に招かれ、老爺廟水域を訪れましたが数か月の時間と100万元以上の資金を費やしたものの、何も見つからない上に、潜水員まで何人か行方不明になってしまいました。ポルトン博士と生還した潜水員らはこのことについて誰も語りませんでした。40年後、博士は回想録でこのことを明らかにしました。その中の一節にはこう記されています。

当時、彼らが水の中で約1キロ捜索したときに突然、1束の眩しい白い光が彼らに近づいてきました。湖水は激しく揺れ動き、耳を刺すような音が鳴り響きました。混乱の中、博士は大きな力に引っ張られ、渦に吸い込まれました。博士は目がぐるぐる回り、意識が薄れていきましたが突然、腰部に強い衝撃を受け、意識が戻ってきました。博士はそばにあった長い岩にしがみつきました。すると、一本の長くて白い光が湖の底で強く回転しながら動き回っているのが見えました。一緒に潜った何人かの潜水員はその白い光に巻き込まれて渦の中に消えました。その後、何度も捜索しましたが、潜水員たちの遺体は見つかりませんでした。

80年代、中国海軍は老爺廟水域を科学調査する一環として、潜水隊を派遣しましたが同じく何も見つかりませんでした。捜索を率いた海軍中尉・申大海氏はその結果を認めたくなく、単独で再び捜索することにしましたが帰らぬ人になってしまいました。彼の遺体は翌日午後、老爺廟水域から15キロ離れた昌芭山湖で発見されました。

昌芭山湖は20キロ平方メートル未満の小さな内陸湖です。湖面は鄱陽湖より12メートルも高く、山に囲まれていて鄱陽湖とはつながっていません。「都昌県政府サイト」の資料によりますと、50年の航海歴を持つベテランでも老爺廟水域は謎めいていると感じています。ここでは嵐が瞬く間に発生し、十数分間で収まり、すぐ静まり返ります。全く前兆もなく起こる「悪魔水域」なのです。ここを行き来する船乗りたちの言葉からも怖れの念を垣間見ることができます。老爺廟を参拝することは船乗りたちの習慣風俗になりました。

「九江旅行サイト」ではかつて、老爺廟水域を中国十大旅行禁止区の一つとして取り上げました。1960年初頭から1980年末までの30年間で、沈没した船は200隻、行方不明者は1600人に上り、精神喪失になった人は30人に達しています。「都昌県志」には、1985年8月3日だけで、13隻の船がこの水域で失踪したと記されており、世界においても珍しいことです。この水域で沈没した船は全て跡形も無く消えています。2013年にようやく、地元メディアから「初めて沈没船を発見」の報道が出ました。

「中国バミューダ」の謎は未だに解明されていません。鄱陽湖出身の程宇昌博士の研究によると、朱元璋は陳友諒と鄱陽湖で交戦した際、神の使い、「黿」が現れ彼を助けたといいます。「元将軍」の伝説はここに由来します。「黿」はスッポン科に属する動物で、スッポンに似ており暗緑色をしています。

程宇昌博士は、民間で老爺廟を建てたのは「元将軍」を記念し、忠誠心と霊験を表すためだと考えています。明・清時代、「元将軍」は鄱陽湖地域の民間の主要信仰の一つだったといいます。老爺廟はその周辺地域の各地で見られています。数百年来、老爺廟の参拝者は後を絶ちません。予測つかない危険なこの水域が主な原因でしょう。

 
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