新型コロナウイルスの蔓延を防ぐため、マスクの着用が求められていますが、到底足りません。医療従事者用ですら足りません。なぜマスク不足が起きているのでしょう？
ようこそ アメリカ・アンカバードへ。クリス・チャペルです。
米国国内でコロナウイルスの流行が続く中、50万人以上の感染者が確認されています。
流行が続くにつれ、最大の問題の一つが、医療用品、特にPPEと呼ばれる医師や看護師が患者を診察をする際に、感染予防のために必要な個人用防護具の不足です。
PPEとはフェイスシールド、手術衣、使い捨てグローブ、そして最も重要なマスク、通常の医療用マスクや、コロナウイルスからの保護機能が高いマスク、N95のことを指します。マスク不足は深刻で、病院が医療関係者に、使い捨てマスクを再利用するように指示するほどです。
そして今、CDC（米疾病予防管理センター）は一般市民に布製マスクの着用を推奨しています。なぜなら、医療従事者用の医療用マスクすら不足しているからです。
なぜ米国で医療用マスクが不足しているのでしょうか？資本主義のせい？それともトランプ大統領の貿易戦争のせいでしょうか？
アメリカ・アンカバードでは、つまり、これは複雑な問題なのです。
マスク不足の第一の原因は、単に基本的な需要と供給の問題です。病院は通常、パンデミックに備えて数百万枚もの予備マスクを購入し、保管したりしません。そして今、実際にパンデミックが起き、文字通り大勢が数百万ものマスクを購入したがっています。トイレットペーパーも同様で、需要増に対して、供給が限られているのです。
トイレットペーパーと違って、マスクの代わりにティッシュペーパーや滑らかな石を代用することは出来ません。供給不足と需要増は、供給を増やして不足を助けたい善良な人々と、供給不足に乗じて利益を得たい人々が対立する、異常な市場を引き起こしました。
こうしたなか、病院、地方政府、連邦政府の間で争いが起きています。誰もがマスクを購入したい。ところが、そもそも十分な数のマスクが生産されていないのです。
唯一、米国に拠点を置く医療用マスクの生産会社、Prestige Ameritechは、何億ものマスクの注文を断らざるを得ませんでしたなぜなら、単にそんなに多くの注文を受けられないからです。ではなぜ、もっと多くのマスクを生産できないのか？生産強化には時間がかかるからです。もっと多くの従業員を雇用し、教育し、もっと多くの生産装置を調達するのです。
3M社が米国で使用されているほとんどのN95マスクを製造しています。彼らは国内工場で1か月あたりのマスクの生産数を、3,500〜4,000万枚にまで増やすことが可能だと発表しました。しかし、それには数週間かかる見込みです。
これは単にマスクそのものではなく、マスクの原材料の問題です。例えば、N95マスクは、微粒子を捕集する特別なプロピレン不織布でできています。
ある米国の生産会社では、200トンものプロピレンの問い合わせがありました。現状、問題なのは、1日に1.5トンしか生産できないということです。
マスク市場は争奪戦です。業者は注文を満たすために、従業員に破格の条件を提示しています。
ある工場のオーナーはこう言います。「みんな、どこかに魔法の工場でもあると思っているのか」「電話一本で100万もの注文なんて叶えられない」
あれ？チャーリーの魔法の工場は？ウンパルンパがいて、プロピレンと医療用マスクの川とか例え魔法のマスク工場がなくても、米国には戦略的国家備蓄という、緊急用マスクがあるはずです。
戦略的国家備蓄とは、州や地方政府の備蓄から救急医療用品を補うためのものです。
連邦政府の医療用品の国家備蓄は、高機能N95マスク1,200万枚、医療用マスク3,000万枚です。十分な数に思えます。しかし、これは米国保健福祉省が1年間に必要だと算出したマスク数、35億枚のほんの1％に過ぎません。
朗報は、米国政府が、今後18か月にわたってマスク5億9,500万枚を買い付けると発表したことです。しかし専門家は、それでは全然追いつかなそうなため、国家備蓄に頼るだけではだめだと言います。
この国家備蓄は1999年に設けられました。しかし、もっと標的が限られた、生物学的緊急事態に備えて用意されたもので、物資不足を補うことはできるが、長期的な緊急用品として備えられたものではありません。しかも国家備蓄は予算の問題で、都度補充されてはいません。
例えば、2009年のH1N1（新型インフルエンザ）の流行時に、国家備蓄から8,500万枚のN95マスクを出しました。しかしその後、十分な数が補充されていません。
2009年新型インフルエンザの流行といえば、パンデミックの大きな懸念の一つは医療用マスクの不足でした。誰が、また同じ事を繰り返すと予測していたでしょう。少なくとも一人の男が予測していました。後ほどお話しましょう。
2009年のマスク不足の一つの大きな原因は、現状と同様、グローバルサプライチェーンです。
新型インフルエンザのマスク不足に関する報告書によると、サプライチェーンの大部分は海外生産で、緊急時に米国市場では利用できない。なぜなら、輸出制限や製造施設の国有化問題があるからです。
中国でコロナウイルスの流行感染が初めて起きた時、中国は直ぐにマスクの輸出を止めました。コロナウイルスが発生する前、世界の医療用マスクの半数以上が中国で生産されていました。そして今、中国はマスクを貯めこんでいます。
さらに中国は、世界中からマスクの買い占めを始めました。中国がどのくらい輸入したのかは分かりません。なぜなら、1月以降、情報開示がされていないためです。米国を含む各国もまた、中国に医療用品を寄付しました。
そして、コロナウイルスが世界中に広がるにつれ、ドイツやフランスなどの国々はマスクの輸出を止めました。しかし、大量のマスクが中国で生産されていたため、それが大きな問題なのです。
トランプ政権は中国共産党による、3M社のような米大手化学メーカーの事実上の国有化を非難しました。
N95マスクを例にとると、これは中国の典型的な問題です。つまり、中国は大量のマスクを生産しています。彼らが最初にした事は、輸出制限です。次にした事は、米国企業を国有化することです。３Mは事実上の国有化です。米国への医療用品の輸出を阻止したのです。
３Mが出した声明によると、中国の輸出制限が出る前も、中国製マスクの殆どが中国向けだったとのこと。良いニュースは、３Mと米国政府が、３Mの中国工場から、1億6千万以上の人工呼吸器を米国に輸入するために動いているといいます。
しかし、このような問題に直面しているのは米国だけではありません。
カナダの医療用品メーカー、メディコムの中国工場もまた、輸出が規制されています。
コロナウイルスの流行感染が数十年にわたる米国の国外現地生産が犠牲になったことを暴露しました。特に中国、今回のパンデミックで信頼のおけない国です。
米国政府によると、95％の医療用マスクと70％のN95マスクが海外で生産されています。N95の生産装置を製造している米国企業のCEOはこう言います。「医療用品、原材料、機械を中国から購入するのは簡単なことだ。ボタンを押すだけだ」
しかし今、そのボタンが壊れているのです。簡単であるはずのボタンとはどんなボタンでしょう。
だから専門家らが、コロナウイルスがグローバルサプライチェーンを大きく変えるだろうと言っているのです。
もし誰かがこうなるのを予見して、米国に警告してさえしていれば・・・
はい、一人の男がしました。少なくとも警告しようとしました。
先程話に触れた、唯一、国内で医療用マスクの製造をしているPrestige Ameritechの共同オーナーで副社長のマイク・ボーウェン氏。
2009年、彼は国産マスクの重要性について警告をしようとしました。彼は、米国保健福祉省は問題があると分かっているにも関わらず、医療業界にそれを伝えようとしないと言いました。事実、彼は2006年以来、米国政府に対し、これは国家安全保障問題だと伝えてきました。
私は14年間各地で人々に呼びかけてきました。下院議員や軍の将官らに話しました。オバマ大統領には、手紙を6回は書きました。彼は額縁に入れるに相応しい大統領告示を送ってきました。
2009年、Prestige Ameritechは、新型インフルエンザのマスク不足を補うために生産を増やしました。それは殆どビジネスにはなりませんでした。
Prestige Ameritech 副社長 マイク・ボーウェン氏
「10年前、H1N1が流行していた頃に我々は多くの従業員を雇用し、生産強化をしました。その後、危うく倒産寸前になり、150名を解雇して潰れそうになりました。多くの病院が問合せをしてきました。我々はより大きな工場を購入し、生産装置を構築し、従業員を150人増員しました。そして危機が過ぎると、我々が助けた人々は海外製マスクに戻っていきました。そのため、我々は最終的に増員した全従業員を解雇しなければなりませんでした。それは非常に辛い状況でした」
ボーウェン氏によると、米国製の医療用マスクは1枚約10円、一方中国製は約2円、5倍も安いです。しかし今、中国製マスクの全国的な不足が、多くの人が想像するよりも、はるかにコストがかかる結果になりました。
我々の報道を楽しんで頂けたら、patreon.com/americauncovered もよろしくお願いします。YouTubeに収益剥奪されたため、皆さんのサポートがなければ、番組を続けていくことができません。
さて、みなさんはどう思いますか？全てが収束した時、コロナウイルスのマスク不足の教訓が、米国や各国に、海外生産から国内生産への回帰を後押しするようになるのか、または安価なグローバルサプライチェーンに戻ってしまうのか。
あなたの意見をお待ちしております。
