一国のために二制度を抹殺 全人代で国安法通過も首相の対米態度は温和

中共の全人代が香港版国家安全法を可決し、5月28日に閉幕しました。外界からは、香港立法会を迂回し、「一国」のために「二制度」の犠牲をいとわない悪法だと批判されています。しかし、中共国務院の李克強首相は、当局は「一国二制度」をしっかり守っていると対外的に主張しています。

5月28日午後3時10分、第13回全国人民代表大会で香港版国家安全法の採決が行われました。ゴム印の全人代と揶揄されてきましたが、最終的には賛成2,878票、反対1票で可決されました。

午後4時、李克強首相は記者会見を開き、中国と外国のメディアからの質問を受け、記者から出された各質問に対し、長い回答をしました。しかし香港鳳凰衛視(フェニックステレビ)記者の、「香港版国家安全法は一国二制度を放棄するものなのか」という質問に対しては、わずか44秒で簡潔に回答し、 北京当局は一貫して一国二制度を守っていると主張しました。

中国国務院総理 李克強氏
「中央政府は一国二制度の全面的かつ正確な貫徹を始終強調している。香港人による香港の統治、高度な自治、憲法と基本法に基づいて厳格に行っており、特区政府と行政長官の法による施政を支持している」

また、世界的な疫病流行のなか、中共が香港版国家安全法を可決したことで、米国から制裁が行われ、さらには「新たな冷戦」が勃発する可能性さえあります。

一方、李克強首相は今回、米国に対して温和な態度を見せており、米国への非難は一言も発しませんでした。米国と中国の間で多くの新たな問題が生じたことを認めたうえで、米中関係は「非常に重要だ」と述べ、北京当局は冷戦について考えておらず、米国と中国のデカップリングは何のメリットもないと強調しました。

全人代で修正された香港版国家安全法草案では、修正前の草案と比べて、「香港独立」などの活動は国家の主権に著しく危害をもたらす、香港問題への外国勢力や海外勢力の介入などが序文で取り上げられています。 第2条では、「国家権力の転覆」の文字を削除され、「国家安全保障に危害をもたらす行為」の後に「及び活動」の文字が追加され、対象範囲が拡大されています。

香港版国家安全法が全人代で可決された後は、全人代常務委員会が立法作業を進めることになります。そのため、今年の8月または10月に国家安全法の草案が可決され、その後正式な法案として成立することになます。

このほか、香港立法会では引き続き中共国歌への侮辱行為を禁じる「国歌法」の第二読会が行われており、6月4日には第三読会の採決が行われる可能性があります。

 
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