中南米の大国、ブラジルで中共ウイルス肺炎が猛威を振るっています。96万人以上の感染が確認され、4万6千人余りが死亡し、中国とイランを除き世界で2番目に多い国となっています。現在の状況は、ブラジルと中共の密接で全方位的な関係性と深く関わっていることが分析により明らかになっています。
5月上旬にメディアは、ブラジル最大の都市、サンパウロの共同墓地に1万3000あまりの墓穴が掘られ、5分に一人が埋葬されていると報じました。5月13日以降、ブラジルでは毎日1万人以上、多い日では3万5千人の感染者が確認されています。また複数の政府高官の感染も確認されています。
ブラジルのボルソナロ大統領はこれまで封鎖措置に反対する姿勢を崩しませんでした。一方、ボルソナロ大統領の強力な反対者であり、中共とも深い関わりを持つサンパウロ州知事、ジョアン・ドリア (João Doria)氏は3月末に厳格な「完全封鎖」を開始しました。しかし4月上旬になってもサンパウロは依然として疫病の震源地でした。
米国在住の時事評論家、唐靖遠氏
「サンパウロ州は防疫が最も早かった。にもかかわらずサンパウロで流行が深刻化し、死亡率と感染率のいずれも高いのはなぜだろうか?中共と密接な関係を結んだり、中共に接近したりする国はすべて深刻な流行に見舞われる。中共との親密さの程度と流行の深刻さの程度は正比例をなしている」
ブラジル初の孔子学院はサンパウロ州立大学に設立されました。この孔子学院はブラジルに十数カ所設立された孔子学院の中で中共から最も重視された学院で、2016年には世界で13か所しかないモデル校の一つに選ばれています。昨年までにこの学院はサンパウロの13の都市と周辺の都市に、合計16か所の中国語教育所を設けています。
米国在住の時事評論家、唐靖遠(とうせいえん)氏は、ブラジルと中共の密接な関係は全方位的なものだと指摘したうえで、このことがブラジルで感染拡大が深刻化した原因だとして、その理由は孔子学院やファーウェイといった中共の最も代表的な拡張力をブラジルがほとんど受け入れているからだと指摘しています。
米国在住の時事評論家、唐靖遠氏
「ファーウェイは早くも2016年にブラジル教育省と高度な提携協議に署名し、提携プロジェクトの範囲を、ブラジルでトップのICT大学まで拡大した。双方はさらに戦略的提携協議にも署名した。2019年までに国際社会はファーウェイに対する危機感を強め、米国もファーウェイは中共の諜報機関だと多くの警告を発した。だがブラジルのモウラン副大統領は2019年5月の訪中時にファーウェイの任正非総裁と会談し、6月にはさらに『ブラジルはファーウェイを制限するいかなる計画も持っていない』と正式に述べている」
ブラジルと中国は1974年に国交を樹立し、2003年から2016年にかけてブラジルの政権を左翼の労働者党(PT)が握ったことから両国の関係は飛躍的に深まりました。2012年にブラジルは、中南米で初めて中共との全面的戦略パートナーシップを確立しました。
唐靖遠氏は「ここ数年で世界経済が下降する中、ブラジルと中国の二国間貿易は増加し続けている。2018年には一挙に1000億ドルを突破して過去最高を記録した。中共はブラジルにとって最大の貿易相手国であるだけでなく、主要な投資国でもある」と指摘しています。
米国在住の時事評論家、唐靖遠氏
「(中共の)赤色資本はブラジルで投資し、最初は農業や採掘などの分野から始まって今では電気通信や金融サービス、電力といった国のライフラインに拡大している。2016年の時点でブラジルは『中国・ブラジルハイレベル協議・提携委員会』を再開した。これは中国とブラジルによる非公式な同盟メカニズムに相当する。双方の関係の緊密性はこのことから推測できる」
ブラジルは一帯一路の加盟国ではないものの、中共党メディアは中国・ブラジル関係における緯度と意味合いが、一帯一路と非常に一致していると報じています。
米国在住の時事評論家、唐靖遠氏
「率直に言って、両国の間にはすでに一帯一路ではないが一帯一路よりも勝る提携関係がある。中共がブラジルの一連の大型インフラプロジェクトに確かに関与していることが分かる。2018年に中共の国有企業がブラジル第二の港であるパラナグア港を買収した。中共の赤色勢力はすでにブラジルの内陸まで広がっている」
2018年5月に中国葛洲壩(かっしゅうは)海外投資公司はブラジルの子会社を通じてサンパウロのサンロレンツォ水道システム社の株式の100%を購入しました。これは中共一帯一路の重点プロジェクトと呼ばれ、投資総額は8億6000万ドルに上ります。
これについて国外では、この中国資本の水道事業者が中共の脅迫手段になるのではとの懸念が広がっています。この会社が水の供給を止めればブラジルの150万人が水不足に直面するためです。これが中共の一帯一路の「表で援助し、裏で支配する」という本質です。
中共はブラジルの国民経済の生命線の掌握を意図していますが、現職のブラジル大統領はこの点を明確に理解しています。2018年の選挙の際にボルソナロ大統領は中共を「捕食者」「全ブラジルを買おうとしている」と批判したほか、以前にも共産主義イデオロギーを一掃し、中国によるブラジルのエネルギー資源とインフラの大規模購入を阻止するとも述べています。
ボルソナロ大統領は政治面で国内の左翼政党から攻撃されているだけでなく、軍の背景を持つハミルトン・モウラン副大統領などからの挑戦にも晒されています。本国の経済を守るために尽力する一方で、自国の反対勢力とも戦わなければなりません。
いっぽう、3月中旬にボルソナロ大統領の息子であるエドワルド・ボルソナロ上院議員が、中共が感染情報を隠匿したことをツイッターで非難しました。
これに対し駐ブラジル中国大使の楊萬明は「戦狼式」で挑発しただけでなく、ボルソナロ一族はブラジルの「巨大な毒」だと誹謗する内容を連続でツイートしました。
中共はあえて傲慢な態度をとっているのではないかと考える人もいます。これは中共がブラジルで長年にわたり浸透した結果といえます。
そして中共に謝罪したブラジルのダヴィ・アルコロンブレ上院議員が中共肺炎に感染したことが確認されました。
感染者が増え続ける中、経済的利益という誘惑と、ブラジル国民の安全のどちらを優先するのかという歴史的選択をブラジルは迫られています。この選択は生死にかかわる問題ともいえるでしょう。