ここ数年、中国では若者が兵役を拒否するケースが相次いでいます。彼らは当局から反面教師として宣伝に使われ、さらに厳しい罰も受けています。あるネットユーザーは、当局の狙いは彼らを見せしめにすることだと指摘しています。
中国官製メディアは、四川省雅安市の陳鵬さんが去年9月に河北省にあるある空軍基地に配属されたが入隊後は軍隊生活になじめず兵役を拒否し、度重なる説得にもかかわらず拒否し続けたため、軍側は陳鵬さんを除名して一連の罰を与えたと報じました。これには陳鵬さんの戸籍に一生消せない「兵役拒否」との記述を入れる、公務員への採用不可、今後2年間の出国と進学の不可といった罰が含まれるほか、2万6000元(約40万円)の罰金も含まれています。
別のケースは雲南省文山市で発生しました。現地の徴兵事務所によると、1998年生まれの黄さん(男性)が入隊後に自主的に事前訓練への参加を志願したが辛い訓練を恐れて脱退願を4日間で3回提出したため、軍側は最終的に黄さんの戸籍に「兵役拒否」と記載し、「信用失墜リスト」に載せたうえ、公務員への採用不可、今後2年間の進学不可、今後3年間の起業の禁止を命じたほか、1万2000元(約18万7000円)の罰金を科しました。
中国のネットユーザー、馮さん
「辛さを恐れる人もいれば共産党に命を売り渡したくはないという人もいる。兵士になれば逃げ帰った場合は捕まって間違いなく処罰される。罰金のほか投獄される場合もある。彼らを反面教師として宣伝しさらに多くの制限を設けているのは、恐らく見せしめのためだろう」
中国の退役軍人の陳さん
「若者は兵士になりたがらない。その理由の一つ目は社会的に不公平であること、二つ目は退役しても後が保障されないからだ。軍隊から逃げ帰って来て、彼らのために働かなかったり命を売り渡さなかったり彼らに忠誠を示さなかったりしたら間違いなく復讐される。公務員試験は受けられなくなるし、罰金を科される」
北京の時事・政治ウォッチャーの華頗(かは)さんは、「中共は一人っ子政策を実施した。中国の若者にしてみればこんなに辛くて自由もない環境に耐えられるわけがない。両親も子供を戦場に送りたくはない。何が起こるか分からないから」と述べています。
北京の時事・政治ウォッチャーの華頗さん
「軍隊は二番目の監獄に等しい。特に90後(1990年以降に生まれの人)、00後(2000年以降に生まれの人)といった若者はすでに軍隊という非常に苦しい環境になじめなくなっている。90後、00後は自由を尊んでいる。多くの90後、00後は兵役を拒否している。しかも一人っ子である彼らに何かあったらその親は身寄りのない老人になってしまう」
香港の軍事評論家、黄東さんは『アップルデイリー』に対し「軍隊は兵役を拒否した若者を罰している。今中国各地の徴兵事務所は繁忙期で、厳しく罰しなければ士気に影響すると案じているからだ。さらに現代の若者に対してはソフトな対処はすでに失敗しているので恫喝して処罰するしか方法がない。基本的には香港人への対処方法と同じだ。だが自由の風が軍隊に入るのを阻むことはできない」と語っています。