米中貿易戦争や疫病、台風の影響を受けて中国のトウモロコシ価格が上昇しています。トウモロコシの平均スポット市場価格が4年ぶりに上昇し、国家穀物倉庫のトウモロコシの備蓄がないため価格の上昇を招いただけでなく、飼料用作物トウモロコシとトウモロコシ加工品の価格までも上昇し、「連鎖反応」が起きて物価指数の上昇も起きています。
中国の飼料産業情報網が発表したデータによると、今年の10月初めの連休が明けてからトウモロコシのスポット価格が1トン当たり2600元(約4万円)を上回り、4年ぶりの高値を更新しました。2017年の安値と比較すると上昇率は62%で、1トン当たり1000元(約15000円)増加しています。
中国の国家穀物倉庫の作業員は、中国は米国からトウモロコシ1000万トンを輸入する予定だが、早くとも到着までに半年かかることから急場に間に合わないため、短期的に国内のトウモロコシ価格が下がることはないだろうと明かしました。
中国の国家穀物倉庫の作業員
「トウモロコシ価格が急上昇しているのは、国の穀物倉庫が空っぽだからだ。私のところの倉庫の穀物は今年ほとんど売り払われ倉庫に穀物はない。国は価格を統制できない。国際情勢の影響を受けて輸入量が減り、現在農民はトウモロコシを売り惜しみしている。トウモロコシ価格が上がって飼料代がかさみ、養豚業者の豚肉生産コストもかさんでいる。全体が絡み合って物価指数が上昇している」
現在、中国の主要生産地ではトウモロコシの収穫が終わって市場に流れる季節を迎えており、これまでの慣例に従えばトウモロコシ価格は安定が維持されるはずですが、これまでより価格が上昇していることが分かっています。その理由は大部分の農家が売り惜しみし、企業が高値で買い付け、「穀物争奪戦」が繰り広げられているためです。
中国のトウモロコシ農家、梅さん
「全部この地で収穫したばかりだ。1元(500g)だ。よく売れる。今の市況はこんな感じだ」
トウモロコシは中国の主要作物であると同時に、家畜の飼料の主要原材料の一つでもあります。トウモロコシ価格の上昇は飼料価格の上昇も招き、飼料1トンの価格は400元以上上昇しました。また、トウモロコシ加工品のコーンスターチやアルコールなどの価格も急上昇しています。
中国のトウモロコシ業者、張さん
「国は通常、穀物を数年に一回入れ替える。それらは新しく収穫した穀物よりも安い。基本的に国は各穀物倉庫に十数万から20万トン以上のトウモロコシを備蓄しており、穀物倉庫が開放されたら基本的にはその市場価格は下がるはずだが、今年は国にトウモロコシの備蓄がないのだろう」
東北地方は中国最大のトウモロコシ生産地帯で、黒竜江省、吉林省、遼寧省のトウモロコシ作付面積は全国の31.6%を占めています。8月末から9月上旬にかけて、3度の台風が東北地方を襲い、トウモロコシの生産量が減少しました。また、トウモロコシ価格の上昇は米中貿易戦争と、中共が米国産大豆の輸入量を減らしたことにも関係していると考えられています。大豆は重要な飼料用作物であり、中国の大豆供給量が減少してトウモロコシで代替する必要があるため、トウモロコシの需要が高まって価格の上昇を招いています。