中共の専門家・翟東昇(てき・とうしょう)氏のスピーチを撮影した動画がインターネットで話題になっています。彼はスピーチの中で、中共が数十年にわたりウォールストリートを利用して米国を打ち負かしてきたが、2016年からはトランプを「打ち負かすことができなくなった」ことを、実例を挙げて説明しました。翟東昇氏は中共とジョー・バイデンの息子のハンター・バイデンとの間に「ビジネス」関係があることにも触れ、バイデンに対し「善意」を見せることも戦略的かつ政治的価値があるのだと話しています。
11月28日、中国人民大学国際関係学院の副院長で、中共対外戦略研究センター副主任兼事務局長、国際通貨研究所研究員の翟東昇氏が上海の「観視頻工作室(カン・ビデオ)」のライブ放送で講演を行いました。
中国人民大学国際関係学院副院長の翟東昇氏
「トランプ政権は我々と貿易戦争をしているが、我々はなぜトランプを打ち負かすことができないのか。なぜ1992年から2016年の間には中国と米国との間の各種問題をすべて解決できたのだろうか。(1993年にCIAが中東航海中の中国の貨物船・銀河号に対し、対イラン輸出用化学兵器の有無を調べるために1か月以上徹底調査を行った)1993年銀河号事件や(1999年に在ユーゴスラビア中国大使館がNATOから誤爆された)1999年大使館爆撃、(2001年に南シナ海上空で米国と中国の軍用機が衝突した)2001年飛行機の衝突といったすべての危機は、『喧嘩をしても仲直りする夫婦のように』2か月以内に収束した。なぜだろうか。ここで私は暴論かもしれないが一つの可能性を挙げる。それは、我々のトップにある人がいたからだ。米国の権力の中枢に我々の古い友人がいたからだ」
中共の専門家がどうやって中共が米国の権力の中枢に浸透したのかを公に語ることは極めてまれです。この動画は瞬く間にネットユーザーによって拡散されました。しかし、ネットユーザーはすぐにこの中の「ユダヤ人の老婆」の話が削除されていることに気づきました。
ネットユーザーが保存した動画によると、翟東昇氏は2015年に習近平の訪米前に、中共のある部門が米国の著名な書店「Politics and Prose Store(ポリティクス・アンド・プローズ)」の『習近平談治國理政(習近平が語る政治、英語版タイトル:Xijinping:The Government of China』英語版の出版発表会でサクラを使って場を盛り上げ、翟東昇氏にホスト兼ゲストを依頼しようと計画していたことも明かしました。しかしこれは臨時に決定され、スケジュールはかなり以前に決まっていたうえ、書店オーナーが中共に対し独自の意見を持っていて協力を望みませんでした。この時「ユダヤ人の老婦人」が速やかに中共を支援し、翟東昇氏もこの「功労者」に会うことができました。
中国人民大学国際関係学院副院長の翟東昇氏
「その鼻の大きな老婦人を一目見てユダヤ人だと分かった。私が『あなたの中国語はとてもお上手ですね。私などいつまでたっても江蘇省の訛りが抜けないのに』と夫人の中国語になまりがないことを褒めると、彼女は得意げに『私は中国語を話せるだけでなく中国国籍も持っている。それだけでなく北京市の戸籍も持っている。長安街の東城区に四合院も持っている。北京に戻ってきたらお茶を飲みにいらっしゃい』と言った。…それで私はすぐにこれが我々中国人民の『古い友人』なのだと分かった。老婦人はどんな人なのだろうか。なぜ彼女は30年も中国に住んでいるのか。なぜ流ちょうな中国語をしゃべれるのか。先ほど私がお話ししたように、ウォールストリートのある有名な金融機関、トップクラスの金融機関のアジア地域の総裁だった」
その一方で翟東昇氏は、2008年以降ウォールストリートの地位は低下し、より重要なことは2016年以降、ウォールストリートはトランプを「打ち負かすことができなくなった」ともストレートに語っています。これらの「古い友人」は、貿易戦争で中国への支援を試みたが、力が及んでいません。
その後彼はすぐに話題を変えました。
中国人民大学国際関係学院副院長の翟東昇氏
「だが現在はどうかというと、バイデンが当選しましたね。従来のエリート、政治エリートらはウォールストリートと非常に密接な関係を持っている。だから人々はバイデンの息子がトランプから『あなたは世界中にファンド会社を持っている』と言われているのを知っているが、誰が彼(ハンター)のファンド会社を支援しているのか。分かるだろうか?そこにはすべてビジネスが存在する」
ワシントンの年金基金監査人の李恆青氏
「彼が言った意味は誰もが知っている。この言葉の裏にある真意は、誰が出した金なのかということだ。中共が出した金だということは言わなくてもわかる。彼はうっかり口を滑らせて、中共が西側世界でたやすく行っている金銭外交について思わず口走ってしまった」
翟東昇氏はハンター・バイデン氏の「ハードディスクゲート」スキャンダルの話を避けなかっただけでなく、中共が「適切な」手段によっていわゆる「善意」を表すのは、戦術的価値と政治的価値があるからだとも述べています。
台湾大学国家発展研究所の法律専門家、曾建元博士
「バイデンファミリーはおそらく本当に中国とさらに密接な関係を結んでいるのだろう。だが現在、この問題は米国市民や共和党から非常に注目されるテーマになってしまった。だから政治とビジネスに関係する経営は以前のように水を得た魚のようにはいかなくなった。私はそうした時代はすでに過去のものになったと思っている。もし今、中共の中にまだ従来のやりかたで国際社会を渡っていけると考えている人がいるとしたら、今後の国際情勢を読み間違っていると思う」
この日のフォーラムに参加した他の中共専門家の誰一人として翟東昇氏の見解に異を唱えませんでした。