あるドイツ人が英語メディアとのインタビューで、 中国の刑務所で過ごした約7年半を語りました。
3部構成シリーズの第3部で、刑務所で耐え忍んだ肉体的・精神的拷問について、ロベルト・レーダーさんが語ります。
ロベルト・レーダーさんは 2011年から2018年にかけて、中国の刑務所で 7年7か月を過ごしました。そのほとんどの時間、中国南部の広東省にある東莞(とうかん)刑務所にいました。そこで彼は 日常的に行われている拷問、暴行、その他の虐待を目撃しました。
レーダーさんによると 、 刑務所の看守は受刑者の肉体も精神も拷問して完全な服従を強いるといいます。受刑者は 働くことを拒否したり、 38もある刑務所の規則のいずれかを破ったりすると、 厳しい懲罰を受けるころになります。
懲罰の1つに悪名高い「虎の椅子」がありますが、 囚人の腕と脚を鉄製の椅子に縛りつけます。
ドイツ人 ロベルト・レーダーさん
「椅子には角ばったパイプがいくつか付いている。それに長時間座っていると 本当に苦痛だ。この椅子に1〜2週間ずっと縛り付けられた人もいた」
パイプが四肢に食い込むと、 やがて麻痺し、腫れ上がります。
レーダーさんによると、「虎の椅子」は 受刑者たちを威嚇するために、 皆に見えるところに置かれています。しかし、検査官の訪問予定があるときは、「虎の椅子」は屋根裏に収納されるといいます。
また、拷問が行われる場合、監視カメラはいつも反対方向に向けられるのです。
人権団体「Human Rights Watch」によると、中国の警察は日常的に「虎の椅子」を 容疑者や良心の囚人を含む受刑者に使用します。
また、 囚人が謝罪または罪悪感を示すことを拒むと、警察は他にも電気警棒を使いますが、そのダメージは一生残るものです。
ドイツ人 ロベルト・レーダーさん
「電気棒を頭につけて放電し続け、私たちはそれを「脳の電気椅子」と呼んでいる。また、先端を体の他の部位につけるのだ。人間を崩壊させるのに使うものだ。もし脳に高圧電流を流したら
、その人は本当にバカになってしまい、”正気を失い まともに話せないし 動きも緩慢になり、脳が損傷を受けたと分かるのだ」
レーダーさん自身は約10㎏の鎖で拘束され、ベッドに縛りつけられました。刑務所の劣悪な医療に不満を漏らしたため、報復として罰せられたのです。
ドイツ人 ロベルト・レーダーさん
「座ることもできず、歩くこともできず、こんな感じになる。恥ずかしい思いをして ただの屈辱だ。特に、普通なら絶対しないことがあったり、真っすぐ歩けなかったりするとね」
レーダーさんにとって幸いなことは、 弁護士がそれに気づいたため、 半日後には解放されました。しかし 彼は「治療を受けていないと嘘をついた」として、 謝罪を強いられました。
レーダーさんは、独房に最長2か月間も拘禁されていた数人の受刑者の話も語ってくれました。室温がたびたび38度近くになる独房に入れられるのですが、鎖で縛られるうえ、シャワーの権利も清潔な服もありません。看守は彼らに睡眠を許さず、飲み水の中に排尿したり 殴ったりするといいます。
その後、受刑者は首に「自分のしたことが恥ずかしい」と書かれた板をかけられて、刑務所内を歩かされるのです。
刑務所の看守は他にも様々な心理的拷問を行っており、レーダーさんは多くの囚人が圧力に屈するのを目にしたといいます。
ドイツ人 ロベルト・レーダーさん
「看守はあなたを破壊したいのだそして多くの人々が壊された。彼らは精神に異常をきたし、そしてあきらめ、その後まるで死人のようになる。彼らはもはや耐えらなくなり、人格を失ったのだ」
レーダーさんは彼が経験した拷問や強制労働について、 何度も広州市のドイツ領事館に報告しました。
ドイツ外務省は新唐人からの問い合わせに対し、 「中国の刑務所にいるドイツ人から、拷問や強制労働に関する具体的な証拠を何一つ受け取っていない」と返答しました。
アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)や他の人権団体は、中国の刑務所や拘置所、強制労働収容所での拷問は広範囲に及んでいると報告しています。
拷問に反対する国連条約には、北京当局も署名しています。
現在13名のドイツ人が中国の刑務所で服役しています。レーダーさんの経験は、 釈放後にメディアに体験を語った、広東省の東莞刑務所の元受刑者の話の内容と一致しています。
ニュージーランド人のダニー・カンシオン氏もその一人で、 彼は2012年に釈放されました。
レーダーさんは、悲惨な状況の中でどうやって対処したかについても説明してくれました。
一つは、彼はドイツ市民権を持っているので、彼の状況を定期的に確認するドイツ領事館の存在が一種の生命保険として役立っていたといいます。
刑務所内で何があったにせよ、看守は自らの監督下で、ドイツ市民の死亡事故を起こしたくないのです。
その一方で、看守らは中国人受刑者の命に対しては、どうでもいいような「使い捨て」と考えているといいます。
時の流れと共に、レーダーさんは 前向きな心理状態を保つことを学んだと言います。
ドイツ人 ロベルト・レーダーさん
「自分の内面を見つめ始め、自分が何を考えて 何を恐れているかについて分析するようになり、それらを克服して向き合い始める。そうすると 、目まぐるしく周囲の状況が変化しているのが分かり、生活がぐっと良くなることがわかる」
彼はまた、 周りの人を敵と見なした故に自分自身を破滅させた受刑者を目撃したといいます。
彼は違う対処法を選択しました。
ドイツ人 ロベルト・レーダーさん
「私は警官を敵と見なさなかった。もちろん 悪い人もいたが、親切な警官もいた。それは『人による』と言うしかない。だからそんな場所でも 時として許さなければならない。ええ。目の前にいる警官はあなたが刑務所にいることに責任がない。それがシステムだから」
レーダーさんは2018年12月に釈放されました。合計7年と7か月を刑務所で過ごしました。彼は「縁起の良い数字だ」と言います。
しかしドイツでの生活に再び順応するのは、容易なことではありませんでした。
再び日常生活の感覚を取り戻すのに時間がかかったと、レーダーさんは言います。初めて買い物に行った時は、多種多様な選択に圧倒され、すぐに立ち去ってしまったといいます。
レーダーさんは出所後1年間は、自らの体験を執筆しながら、ドイツの北部にある島で過ごしました。
他の受刑者のためにも、中国の囚人がどのように扱われているかを話す義務があると彼は考えています。彼はこの7年間の経験は「最高の手土産」だと語りました。
ドイツ人 ロベルト・レーダーさん
「自分自身がしてほしいように すべての人に接すると、すぐに手応えを感じるだろう。相手に敬意を払えば 相手も敬意を払うだろうし、相手を困らせるなら 相手もあなたを困らせるだろう」
レーダーさんは現在、デイトレーダーの仕事をしています。中国の刑務所での強制労働や拷問の実態について、そして世界各国と中国の関係がいかに中国の人権侵害を助長しているかについて、自分の体験が人々を目覚めさせることを願うと彼は語りました。
そして 何よりも、私たちがそれについてできることがあると人々に伝えたいのだといいます。