ウクライナ最大の航空宇宙関連企業が中共の支配下に置かれることを防ぐため、ウクライナ政府は、中国の「北京天驕航空産業投資有限公司」( Skyrizon、スカイリゾン)」に制裁を科すことを定めた法令に署名しました。同じ時期にリトアニア政府は国家安全保障上の懸念があるとして、国内の国際空港3か所に対し、中国最大の空港保安設備メーカー「同方威視」(Nuctech、ニュークテック)の設備の採用を禁止しました。
ウクライナ政府は、中国国内企業4社と中国人1人に対し制裁を科すことを定めた、即日発効の法令に署名しました。3年間を期限として資産の凍結、貿易の制限などが定められたほか、ウクライナ国外への資金の移転も禁止することも規定されています。
制裁対象は「天驕飛機(てんきょうひき)持株有限公司」、「香港天驕持株有限公司」、「北京天驕航空産業投資有限公司 ( Skyrizon、スカイリゾン)」、「北京信威科技集団株式有限公司」の4社と中国国籍の男性、王靖(おうせい)氏です。信威集団はその他の3社の親会社で、王靖氏は信威集団の会長兼CEOです。
2014年以降、ロシアがウクライナの領土を占拠し続け、モトール・シーチ社のロシアでの売り上げも減少し続けるなかで、王靖氏の持株会社である天驕航空がモトール・シーチ社の株式を50%以上取得しました。
モトール・シーチ社はウクライナのヘリコプターと航空機エンジンメーカーで、特殊な航空機用エンジンとその部品を生産しています。同社は衛星や巡航ミサイルの分野に極めて高い潜在的発展力を有しており、それらの技術は中共当局に不足している部分です。
米国在住の時事評論家、藍述氏
「今回、ウクライナが天驕公司などに制裁を科した。中共航空工業に関連するこれらの軍需企業によって、実際にはこのプロセスにおける力比べのなかで、我々はパフォーマンスの一幕を見せられていた。つまり中共にはロシアからこれらの技術を直接取得する方法がないため、彼らは遠回りしてウクライナから技術を得ようと考えた。
2017年にウクライナ保安庁(SBU)は調査を理由に、北京天驕(Skyrizon)が保有するモトール・シーチ社の株式を凍結しました。これに対し中国側はウクライナに対し、35億ドルの仲裁案を提示しました。
また王靖氏は昨年9月23日にウクライナビジネスマンのアレクサンダー・ヤロスワフスキーと、ウクライナ独占禁止委員会に対し「モトール・シーチ社のすべての株式の共同購入要求申請」を提出しましたが、最終的には独占禁止委員会が拒否しました。
米国在住の時事評論家、藍述氏
「米国や西側国家はすでに、中共の国際的な勢力拡大の抑制に連携して着手している。一帯一路の拡大だけでなく、太平洋の南シナ海での島の建設もだ。南シナ海における軍事的拡大について、我々は米国と西側国家の政府がここ数年間で太平洋の第一列島線の防衛を強化し続けており、インド太平洋戦略の強化も行ってきたのを知っている。ウクライナ政府が天驕公司と中共の航空宇宙産業企業に制裁を科したが、我々はその背後に米国や西側国家の影が見え隠れしていると感じている」
米商務省が1月14日に発表したエンティティリストには、北京天驕航空の名前も挙がっています。当時のウィルバー・ロス商務長官は「北京天驕は中国国有企業の一つで、外国の軍事技術を購入してローカライズしており、米国の国家安全保障と外交政策面での利益に大きな脅威を構成した」と指摘しています。
米国在住の時事評論家、邢天行氏
「中共のこれらの企業は軍事分野とつながっている。これらの企業は米国の国家安全保障分野に非常に大きな潜在的問題を構成しているだけでなく、その他の国にも同じような国家安全保障問題が潜在的に存在している。実際に国家安全保障問題に発展したら、それは金だけの問題ではなくなる。彼ら(中共)はウクライナだけにこうしたことをやったのではないはずだ。彼らはほかの場所でもこのような手段を使って株式を購入し、それから主導権を握って浸透している。いずれにせよ彼らは、国外で発展したこれらの先進技術を手に入れようとしてあらゆる手段を講じている」
1月29日に北大西洋条約機構(NATO)加盟国のリトアニアは、国家安全保障上の問題があるとして、リトアニア国内の国際空港3か所に対し、中国の保安検査設備メーカー最大手の「同方威視」(Nuctech、ニュークテック)の設備の導入を禁止しました。リトアニア議会国家安全国防委員会は、同社の安全検査設備は、乗客や荷物のデータを収集して中共政府や情報機関に提供する可能性があると指摘しています。