「1000億チップ詐欺」と呼ばれている「武漢弘芯半導体(HSMC)」は先日、全従業員に対し解雇を通知しました。同社の看板はすでにオフィスビルから外され、プロジェクトは現在も操業停止状態にあり、人の出入りもみられません。
米国の技術封じ込めに対応するため、中共は半導体業界で世界トップを目指すとの野心を抱き、国を挙げて半導体産業を後押ししたことで、中国各地で雨後の筍のように半導体企業が乱立しました。なかでも武漢弘芯はこのブームを牽引した企業の一つで、多くの専門家が政府の呼びかけに応じてこのプロジェクトに積極的に参加しました。
2017年11月に設立された武漢弘芯は、1280億元(約2兆1235億円)もの投資プロジェクトを抱えていると喧伝したほか、「14ナノメートルのロジックチップ製造工程という自主開発技術を有しており、1年後には7ナノメートルの製造工程の実現が計画されている」と発表したことで、中国の半導体業界で大いに注目されていました。
しかしその後、同社の構造的な問題が徐々に明るみに出ました。当初の巨額の投資資金は、2020年7月に武漢政府に されるころになると、残高がわずか1000万元(約1億6589万円)を残すのみとなり、現地当局は「弘芯の事業は継続できず、数十億元もの公的資金を投入しても問題を解決できなかった」と発表しました。
操業停止から1年以上たっても再開の見通しの立たない武漢弘芯は先日、全従業員に対し3月5日までに退職手続きを済ませるよう求める解雇通知書を送付しました。
武漢弘芯が経営破綻した理由として、資金不足、プロジェクトの停滞、従業員に半導体製造経験がまったくなかったことなどが挙げられています。掛け声だけで終わってしまった中国半導体業界への投資熱は、巨額の投資を水の泡にし、半導体詐欺の温床に変り果ててしまいました。
米国在住の政治・経済アナリスト秦鵬氏
「今回、我々が目にした武漢弘芯は代表例である。当然ながらほかにもたくさんあり、この種の数百億、数千億の半導体計画が、最後にはすべてパアになった。だから今こんなことになっている。別の言い方をすると、これは中共の体制によって決定づけられたことだ。変えようがないことだ」
評論家は、中共は通信や航空、宇宙、軍事分野において外国製のチップ技術への依存度が非常に高いため、中国の技術は外国と切り離して自国で発展することはできないと指摘し、中共はハイテク技術の開発やチップの製造を国が主導する計画を立てているが、詐欺を働かせるくらいしかできないだろうとも考えています。
元ファーウェイ南京研究所エンジニアの金淳氏
「短期間で中国の半導体業界は倒産の嵐に見舞われるだろう。中国の半導体業界はすべて、中共という政権の力、国の力によって支援されているからだ。だが中共政権という全体主義体制は、ハイエンドの半導体業界には合致しない。この体制の下では、こうしたハイテクイノベーションはそぐわない。自由で健全な文化が欠けているからだ」
中国では過去にチップメーカー「漢芯一号」が外国から輸入したチップのブランド名をこすり落として、その上から自社ブランドを貼り直して販売したという不祥事も起きており、このことで「中国には偽装技術はあるがイノベーション能力はない」と印象付けられました。
秦鵬氏
「イノベーション型プロジェクトを行うには、実際には長い時間をかけて、スタッフや人材などを育成する必要がなる。だが実際には政府高官には、非常に短期間で政治成果を上げなければならないというニーズがあるため、彼らは待ってはいられない。その結果、企業や科学研究機関、技術者、そして政府などが結託して詐欺を行う」
トランプ政権は以前に、中国企業が米国の最新のチップ製造技術を取得することを禁止しましたが、旧式の生産設備については制限を設けませんでした。市場関係者は、中古設備の9割が中国に流れ、中共のローエンド半導体の製造体制を後押ししていると明かしています。
金淳氏
「ないよりはましだからだ。ローエンド製品であってもある程度は中共の科学技術力を支援することができる。中共の邪悪さを知っていれば、そして米国政府が対処方法を分かっていれば、民間企業のふりをした中共企業に一部の設備を高値で売り渡すべきだし、重要技術サービスを提供すべきでない。このようにしなければ中共の資金をできる限り消費させ、科学技術の面で中共を完全に弱体化させることもできない」
人工知能(AI)に関する米国家安全保障委員会は3月1日、AIと半導体のサプライチェーン分野の研究を対象に、敏感な技術が中共軍に盗まれるのを防ぐため、個人情報と企業情報を含むデータベースを構築すると報告しました。半導体連盟には欧州の主要チップ生産国、韓国、台湾が含まれるとみられます。