中共政府はここ数年間、一定の間隔をおきながら「不動産税」の増税に言及していますが、今後5年以内に増税が行われる可能性を専門家が指摘しています。また多くの専門家が次々と、不動産税の増税は不動産価格を下げるためではなく、不動産ブームが終わってしまって地方財政がさらにひっ迫したからだと述べています。
不動産税は本当に導入されるのでしょうか。2015年以降、一部の税務専門家は導入のタイミングを常に予測しており、2017年の時点で中共当局は不動産税を5か年立法計画に組み込んでいましたが、具体的な情報はありませんでした。
昨年12月21日、中国社会科学院財経戦略研究院はこのほど発表した『中国住宅発展報告(2020-2021)』の中で、今年の不動産価格の上昇率が鈍る可能性があると予測し、不動産税の徴収を急ぐよう提案しています。12月23日に財政部長の劉昆氏も官製メディアの「人民日報」に、「不動産税の立法と改革の積極的かつ着実な推進」を求めるとする記事を寄稿しました。
3月11日、中国の経済専門家、馬光遠(ば・こうえん)氏は2021年から2025年の間に不動産税が導入される可能性が非常に高いと予測しました。同氏はさらに、不動産税を徴収する主な目的は不動産価格の安定化を図るためではなく地方財政の救済だとして、この点をはっきりさせる必要があると指摘しています。
不動産税の導入が着々と現実味を帯びています。元広州交通銀行フィナンシャルプランナーの施華偉(し・かい)氏は、専門家が情報を流して民衆の反応をうかがっていること自体が不動産税の導入の予兆だと考えています。
元広州交通銀行フィナンシャルプランナーの施華偉氏
「不動産税は政府にとって税収が見込める分野だからだ。以前に不動産税と相続税が導入されるのではとの憶測が飛び交ったこともあったが、反対意見も多く、実施には至らなかった。だが地方財政は現在ひっ迫し続けており、一部の地方公務員には給料さえ支払われていない。それで財政難を補うため、不動産税の推進に力を入れている」
不動産税を導入すると不動産価格の暴落を招く恐れがあるほか、長期的な論争を引き起こす可能性もあることが、これまで導入が見送られてきた主な理由でした。米国在住の経済専門家の程暁農(てい・ぎょうのう)氏は、不動産業界が低迷している今、中共は地方財政のひっ迫を懸念して不動産税を導入しようとしていると考えています。
現在中国では重慶市と上海市で不動産税が試験的に導入されています。重慶市の課税対象は主に高級住宅で、2021年の高級住宅税は1平米当たり22106元(約37万円)以上の住宅に課せられています。上海市は新規に購入し、かつ2軒目以上の住宅を対象として、一人当たり60平米を上回った部分に税率0.6%の不動産税を課しています。
あるネットユーザーは「不動産税は一般的には大した額ではないが、普通の住宅購入者、特にどうしても住宅が必要だという人は、夫婦二人がそれぞれの両親と祖父母の『6つの財布』に頼って住宅を購入する。そうすると全員が生活費を切り詰めざるを得ない。その数千元はまたもや奪われてしまうのだ」と投稿しています。
中国の投資銀行関係者の鄭義氏
「このことは、庶民が『女性の過去にこだわらない男性』のようになってしまったことを意味している。彼ら(政府)はすでに不動産や供給過剰という土地に関する問題を庶民に負担させている。庶民の譲渡抵当や貯蓄を通じて、これらすべてが消化された。そして今、彼らは今度は不動産税を徴収すると言い出した。一人で複数の住宅を所有している庶民から今度は税金を徴収する。次々と『ニラを刈る(同じ手口で金をむしり取られる)』のと同じだ」
不動産関連の人気アカウント「房説君」さんは「都市部では売却に伴って土地が減少するなか、不動産税と空室税によって膨大な不動産投資家から税金を徴収して、地方の財政収入を補填するという目的を実現する。また2か所以上の不動産を所有している人に、余っている住宅を投げ売りさせて、不動産価格を下げることもできる」と考えています。
しかし不動産税が施行されると、市場に過剰に出回る中古不動産を誰が引き受け、それがどのような効果をもたらすのかという新たな問題が発生します。
施華偉氏
「不動産税が導入される云々という話以前に、現在の中国で正常な対所得比住宅価格を実現することはそもそも不可能なのだ。考えてもみてほしい。一生かけて、あるいは子供や孫の代までかかっても、正常な給料に基づいた場合、そもそも住宅には手が届かないのだ。よって不動産価格は適切ではない。値下がりは確実だ」
中国の投資銀行関係者の鄭義(ていぎ)氏は、先日世間を賑わした「両集中」政策も含め、不動産市場にはいびつな政策が多いが、中共には打つ手がないのだろうと指摘しています。
鄭義氏
「現在、彼らにも他に良い方法がないのだ。実体経済もなく、不動産企業もだめになって、銀行金融システムも振るわない。打つ手がなくなったのだ。不動産税や住宅から手段を講じる必要があるのも、主に衰退を遅らせるためだ」
程暁農氏は、どのみち中共は不動産税を徴収するだろうし、その結果地方政府が新たな財源を手に入れるだろうが、経済全体の消費活動は課税によって減少し、サービス業や製造業がさらに衰退するだろうと指摘しています。