日本政府は福島原子力発電所の処理水を希釈したのちに太平洋に放出すると決定しました。これに対し中共外交部の趙立堅報道官は、日本が処理水を処理するツケを世界に負わせるべきでないと批判しました。一方、あるネットユーザーは中共の国家核安全局文書を引用して、広東省の大亜湾(だやわん)原子力発電所の核施設6基の年間排出量は液体トリチウムだけで福島の年間排出予定量の10倍になると指摘しました。その後ネットユーザーの予想通りこの文書は削除され、国家機密とされました。
2011年3月11日に日本で発生したマグニチュード9.0の大地震で発生した津波によって、福島原子力発電所の全ての電力システムが破壊され、原子炉内部の燃料棒の冷却のため、継続的な注水が不可欠となっています。高濃度放射性物質を含む大量の汚染水からトリチウムを除くほとんどの放射性物質をろ過装置で除去した後の水が「処理水」で、この「処理水」は現在、一日当たり140トンの割合で増え続けています。
4月13日に日本政府は、飲料水と同じ放射能レベルまで希釈して、2年後から30年かけて福島県沖の太平洋に放出する方針を正式に発表しました。菅首相は、「汚染水の処理は避けて通れない課題であり、基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に、海洋放出が現実的と判断した」と発表しました。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、日本の処理水海洋放出を支持すると表明しました。
核物理学専門家の黄慈平氏
「今回の日本の決定だが、実際には(原発事故から)もう何年も過ぎている。ということは、彼らは海洋放出をよく考えて決定したはずだ。しかも太平洋の海流に乗って(処理水は)米国にも到達するはずだ。ということは、米国も同意したということだ」
日本政府が処理水の海洋放出を発表すると、現地住民が福島県庁前で抗議活動を行いました。彼らは、原発事故から10年もの間、福島産海産物の安全性を消費者に訴えてきたのに、処理水の排出によってその苦労が水の泡になると憂慮しています。
中共当局も日本政府を批判しました。中共外交部の趙立堅報道官は、海洋放出された福島原発の水を飲んでも大丈夫だというのなら、麻生副総理が飲んでみればいいと述べました。
黄慈平氏
「疫病の世界的流行にどう対処するかが現在の世界中の目標になっているため、中共は人々の注意をそらすためこの件を大きく取り上げる必要があった」
趙立堅報道官はさらに、日本側の処理水のツケを世界に払わせるべきでないと述べ、この発言の直後に中国版ネトウヨー小粉紅(しょうふんこう)から歓声が上がりました。
黄慈平氏
「日本が120万トンの処理水を海洋放出するこの時に乗じて、彼らは別のニュースを大々的に宣伝して人々の注意をそらすことができると思っている。だが実際には120トンの排水の広大な太平洋に対する割合は非常に小さなものだ。これについて研究者の計算があり、受け入れられると思ったから彼らは放出を決定したのだ。だから中共や彼らの小粉紅(ネトウヨ)たちががなり立てても、何の道理もない」
一方、多くのネットユーザーが、「2017年に中共国家核安全局が大亜湾原子力発電所に宛てた認可書に大亜湾原子力発電所の核施設6基の年間排出量は、トリチウム溶液だけでも福島の年間排出予定量(主にトリチウム溶液)の10倍だと記載してある」と指摘しました。ネットユーザーの予想通り、この文書はその後削除され、国家機密とされました。
あるネットユーザーは、大亜湾原子力発電所の2002年の放出量は42兆ベクレルで、中国では44基の原子力発電所が稼働していると指摘しています。またあるネットユーザーは、健康を守るため、近くの原子力発電所に注意したほうがいいと述べています。
評論家は、日本国民が抗議するのは心理的要因があるからで、韓国人は原発への反対から抗議しており、中共の戦狼青年がわめいているのはバカだからだと切り捨てました。
黄慈平氏
「主な理由は、私はやはり中共だと思う。中共が憤青(怒れる青年)を煽って抗議させた。これらの青年たちは、君子だけを批判し、小人(つまらない人間)の機嫌を損ねることを恐るのだ。中共はこんなにたくさんの原子力発電所を建設し、それら自体がある程度の汚染を引き起こしている。さらに潜在的な危険性として、原子力発電所からの放射能漏れもある。この放射能漏れについては、これらの憤青たちは何も言わない」
米国在住の時事評論家、藍述氏
「世界中が今、中国の新疆、チベット、法輪功といった問題に注目している。これらの人権問題について、西側諸国すべてが注目している。そうすると中共はその視線をそらすことのできる機会を狙う」
あるネットユーザーによると、原子力発電所職員と思われる人物が中国のQ&Aサイト「知乎」(ちこ)に投稿された処理水問題に関する質問に対し、「規則に従って正規に処理されたのであれば影響はそう大きくない」と回答しました。しかしその結果、その職員は通報されました。
中共の戦狼たちが必死になって攻撃しているのには、別の理由があるとの分析もあります。現在、日米同盟がますます緊密になっているため、中共は日本に圧力をかけると同時に、国内で民族主義情緒を煽り、日中関係悪化の可能性に対処しているとの見方もあります。