今年3月、中国の漁船220隻が南シナ海のウィットサン(中国名:牛軛礁、フィリピン名:ジュリアンフェリペ礁)に侵入し、南シナ海情勢に緊張が走りました。フィリピン側は、侵入したのは中共の海上民兵だとして強く抗議しました。米国メディアは4月12日、この海上民兵部隊「小藍人」について詳しく報じました。
船体の色から、彼らは海上民兵「小藍人」(リトル・ブルー・メン、Little Blue Men)部隊と呼ばれており、すでに南シナ海の一部地域で広く活動していますが、中共政府は彼らの存在を否定し続けています。
今年3月、「小藍人」の中国漁船220隻がフィリピンの排他的経済水域(EEZ)にあるウィットサン海域に進入したため、フィリピン政府はこれら漁船の船員は中共の海上民兵だとして厳重に抗議しました。これに対し中国側は、漁民らは風を避けるために停泊しているに過ぎないと回答しましたが、停泊は1か月に及んでいるうえ、フィリピンメディア「ABS-CBN」のニュースチームが4月8日に船で現地を取材した際に、中共軍の022型ミサイル艇 (紅稗型)から追跡されました。
時事評論家の横河氏
「フィリピン政府は、彼らは普通の漁船ではなく中共の海上民兵だと考えている。この考えは非常に的を射ている。つまり、この中共の漁船は必要に応じて武装船になることができる」
外交部報道官は中共の海上民兵の存在を否定していますが、福建省で漁業を営む王さんは、沿岸部の省の民兵制度は80年代、90年代にはすでに存在しており、現在は一部地域で廃止されたものの、まだこの制度が生きている地域もあると語っています。
福建省で漁業を営む王さん
「たった今福建省泉州の人に聞いたところ、この種の政府機関はまだ存在しており、この機関、つまり民兵組織は村の中にあるという。なぜならその対岸が台湾だからだ。今後たとえば戦争になった場合、武装民兵を組織したり、後方で援助業務をしたり、兵士を補充したりできるからだ。昔は私の村にもあった。万が一戦争が起きた場合、これらの民兵すべてが出動する」
王さんは、一部の問題については「国家安全保障」に関連するため、これ以上明らかにすることはできないと明かしました。
しかし「小藍人」の装備は以前とは比べ物になりません。米CNNが4月12日、米太平洋軍統合情報センターの元作戦責任者、カール・シュスター(Carl Schuster)氏の話を引用し、これらの民兵は漁業は行わず、彼らの「漁船」は自動化された武器と堅牢な船体を有しており、最高速度は18ノットから22ノットで、世界の9割の漁船を上回っていると報じています。
米国海軍は昨年12月にも報告書を提出し、その中で「北京は海上民兵を利用して他国の主権を転覆させ、違法な主張を行っている」と指摘しています。米国海軍兵学校のアンドリュー・エリクソン(Andrew Erickson)氏は、「この部隊は政府が組織し、発展させコントロールしており、軍の指揮系統の下で直接活動し、中共政府の支援活動を行っている。これらの民兵と中国の漁船団を合わせると、中国には約18万7000隻の漁船があることになり、その規模は世界一だ。だがその中に海上民兵がどれくらいいるのかはいまだにわかっていない」と述べています。
時事評論家の横河(おうが)氏は、中共は海上民兵を使った戦術を好んでいると指摘し、その理由は周辺国への圧力を調節しやすいからだと述べています。
横河氏
「彼らは特定の場所を占領するために侵入する。そしてそこに長い間居座って動かない。するとそこは彼らのものになる。必要とあらば、海軍は漁船の保護という名目で、紛争を正規軍レベルに引き上げることができるし、撤退する時は漁船が風をよけるためだという理由をつけて、体面を保ったまま撤退できる」
また、「小藍人」の維持費は軍艦より安く、他国の軍が民間の漁船に手出しできないことも、中共当局がここ数年、南シナ海や東シナ海に大量の「小藍人」を送り込んでいる理由です。
横河氏
「中共は民間人を盾にすることを最も得意としている。周恩来はかつて、漁船1000隻を尖閣諸島海域に進入させたが、あれはならず者戦法であり、彼らは戦わないので、相手軍も手を出せない。彼は実際には、他国に対し正規の作戦を実行するための軍隊を自分では派遣せず、他国の軍は民間人を攻撃しないことを見定めてから、このような方法を使って他国をいじめている」
米国の専門家は、「小藍人」は各海域に堂々と配備され、軍事衝突の懸念が高まっています。最新の情報によると、フィリピンはすでにウィットサンや南沙諸島に、海軍軍艦4隻を含む船を多数配備しています。