香港政府が、今年はアカデミー賞の授賞式を放映しないと決定したことで、民主化を求める香港人の戦いに世界的な注目が集まりました。今年のアカデミー賞にノミネートされた映画の一つは、2019年に香港で起きた民主化運動「反送中デモ」に関するドキュメンタリーです。
ドキュメンタリー『不割席 / Do Not Split(ドゥ・ノット・スプリット)』は香港で物議を醸した最新の芸術作品です。
この映画は、2019年に香港の反抗議活動の最前線にいる参加者を追ったもので、アカデミー賞「短編ドキュメンタリー部門」にノミネートされています。ところが、香港の無料放送局であるTVB(無綫電視)は、これまで半世紀に渡りオスカー賞を放映してきましたが、4月25日の授賞式の放映はしないと発表しました。
この判断で香港の自由が危ぶまれています。「Do Not Split」のノルウェー出身の映画制作者アンダース・ハマー氏は、この決定により民主主義を求める香港の戦いに、より世界的な注目が集まるだろうと語ります。
映画監督 アンドユース・ハマー
「このドキュメンタリーは、事件の一部としてそのストーリーを語っている。表現の空間、報道の自由、その他の基本的な民主的権利が、香港でどのように失われつつあるかを伝えているのだ」
TVBは「今年のオスカーを放映しないことを決定したのは単に商業的な理由である」と述べています。
中共当局は昨年、暴力的な抗議活動に対応するため、香港国家安全維持法を施行しました。北京側は「秩序を回復するために必要だった」と国家安全維持法の必要性を主張しています。西側の政府や権利団体は、この法律が香港の自由を破壊していると指摘しています。
ドキュメンタリーに登場する米国在住拠点に活躍するジョーイ・シウ(邵嵐)氏は香港の学界国際問題代表団の元メンバーです。ジョーイ・シウ氏をはじめ多くの活動家は、活動を続けるために香港から脱出しました。
香港民主主義活動家 /ジョーイ・シウ(邵嵐)
「確かに『Do Not Split』がオスカーにノミネートされたことは、運動を維持するために懸命に努力している香港の人々にとって非常に励みとなり、モチベーションを高めるニュースになる。それを考えると、香港政府や親中派のテレビ局がそれを放送しないと決めたことは、ショッキングでも驚くべきことでもない」
香港ではここ数か月、芸術・メディア・文化に対する監視は厳しさを増しています。映画館は、地元で起こった抗議ドキュメンタリー映画の上映を中止し、報道写真展は禁止され、新しい美術館は、香港警察に新たに設けられた国家安全部門がコレクションを調査するとして、閉鎖されました。