南アジアへ目を向けてみましょう。2015年以来、中共は密かに隣国の土地に、3つの村を建設してきました。その隣国とはブータンです。メリーランド州より少し面積の大きい国です。
ブータンはアジアの二大勢力である中国とインドに挟まれた特異な位置にあります。
米ニュース誌「フォーリン・ポリシー」の報道によると、中共はブータンの北部に、3つの村と5つの軍の前哨基地、7つの道路等の建設を行いました。現在まで少なくとも100人の住民がその村に移り住んでおり、中共政権はこの動きを恥じてはいません。
中共メディアの報道は、当局者の一団がその新しい村々の住民を訪問する様子を写真や映像で紹介していますが、その土地がブータン領土であるという肝心な情報は省略されています。
ブータンはこれまでのところ沈黙を守っています。ブータンの政治評論家は、「2つの大国に挟まれた小国」であるブータンの戦略は「いずれの国とも不要な争いを避ける」ことだといいます。
しかし中共政権は、その土地を掌握することを最終の目標としているのではなく、政権はもっと重要な何かを狙っているようです。中共が建設を進めているのは、ベユル(Beyul)という地域周辺です。そして中共政権は90年代からこの地域の領有権を主張し、交渉の材料として利用してきました。
もしブータンが西側の国境沿いにある大きな土地を中共に譲渡するなら、中共政権はベユルの領有権を放棄してもよい、という提案をしています。
その西側の地域は、中共にとって重要な意味をもちます。この地域を押さえれば中共政権はインドとの軍事的競合で優位に立つことができるからです。その地域とは、インドの弱点の一つである、インド本土と北東部をつなぐ細長い回廊地域です。インドはこの地域を「チキンネック(鶏の首)」と呼んでいます。しかしブータンとの交渉はうまくいっていません。
中共政権は数年来、様々な方法でブータンに圧力をかけています。すでに国境を越えて兵士を送り込み、国境を越えて道路を建設しています。
中共は最近、さらに圧力を強めているようです。しかし、ブータンに対する中共政権の戦略は、必ずしも特異なものではありません。
中共政権は、他の係争地域に対しても同様の戦術を駆使しており、中共はインドとの係争地域でも同様に村を建設しています。
また南シナ海では、ベトナムやフィリピンが領有権を主張している岩礁に人工島を建設しました。中国共産党の習近平総書記がオバマ元大統領に対して「そのようなことはしない」と約束したにもかかわらずです。