米国のバイデン大統領は5月28日、7,150億ドルの国防予算を発表しました。中共政権の軍事力増強に対抗するためのプログラムに、より多くの予算を投じる計画が示されていますが、一部の防衛専門家は、中共を凌駕するための十分な予算かどうかについて懸念を示しています。
バイデン大統領が発表した2022会計年度の国防費要求額は7,150億ドル(約78兆5000億円)です。これに加え、他の機関の国防関連プログラムに380億ドルが計上されています。これにより、国家安全保障予算の総額は7,530億ドルとなり、前年度比で1.7%増加しました。
しかし、国防予算の専門家であるジョン・G・フェラーリ氏は、この増加分ではインフレにも追いつけないと懸念しています。
アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所 客員研究員 ジョン・G・フェラーリ氏
「最近では、Iボンド(i-Bond)の利回りが3.5%になった。そうでしょう? もしそれが3.5%のインフレを予想しているのだとしたら、その省庁は大変なことになる」
国防予算要求では、軍隊の即応性、宇宙、及び核兵器技術のために予算を投じるとしており、また中共に対抗し、インド太平洋地域の情勢に対応するため、レーダー、衛星、ミサイルシステムに資金提供をする「太平洋抑止イニシアチブ(PDI)」に50億ドル以上が投じられます。
アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所 エレイン・マカスカー氏
「中国(共)の脅威と太平洋抑止イニシアチブに簡単に触れ、サイバーセキュリティの重要性を指摘しているが、中国(共)と軍事的な競争に必要な投資については何も強調されていない」
米国の保守系シンクタンク・アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)のレジデントフェロー、エレイン・マカスカー氏は、中共政権の国防予算が実際に米国を上回っていることに対し懸念を示しています。2021年、中共の軍事予算は6.8%増の1兆3,500億元(約2,090億ドル)となりました。
アメリカン・エンタープライズ公共研究所 レジデント・フェロー エレイン・マカスカー氏
「中国(共)は米国にとって長期的で最大の課題であり、中国(共)に対する抑止力を強化するためには、国防総省が他の国家権力と協調して取り組む必要がある」
また、国防予算要求では、米国の核戦力の「トライアド(三本柱)」すなわち大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の近代化に向け277億ドルを投資し、宇宙軍への予算を20億ドル増の174億ドルにするとしていますが、海軍の造船要求については、トランプ前政権下では12隻の計画だったのに対し、8隻の軍艦を建造することになっています。
フェラーリ氏は、艦船の人員不足が海軍の最大の課題だと考えています。
バイデン大統領の予算要求は、一般的には議会との交渉のための概要と出発点であり、最終的には議員が資金の使途について決定します。