中国が深刻な高齢化社会の到来に直面した今、かつてはその人口ボーナスを自慢していた中共当局が重い腰を上げ、出生率の向上に取り組み始めました。５月31日、中共は子供三人計画政策の施行を提起しましたが、中国のネットユーザーは一様に「産めるけど育てられない」と反応し、今回の政策に対し態度を保留しています。
中共当局は2016年に子供二人までの出産を認めましたが、中国の出生率は継続的に低下しています。
高齢化問題が深刻化し、かつての人口ボーナスも望めなくなった今、５月31日に習近平国家主席は中共中央政治局会議で「夫婦一組につき子供３人まで産んでよいとする政策を実施する」と発表しました。人口減少に直面した今、この人口危機の解決はすでに主な任務となっているようです。
米カトリック大学人権研究所研究員の陳光誠氏
「計画出産政策（一人っ子政策）はこのほど３人までなら産んでよいと改められたが、実際のところは中共が中国を統治し始めてから現在に至るまでの間の2/3以上推進されてきたこの悪政が間違いだったことは、すでに知られている。これ（計画出産政策）には何の合理性も正当性もない。この政策が強力に推進されたことで、人々に大きな災いがもたらされ、中国社会に深刻な後遺症を与えたのに、それを否定するつもりは毛頭ない」
中国では子供の養育費があまりにも高く、若い夫婦は出産を躊躇しています。ロイターは、今回の子供三人政策について中共の官製メディア「新華社」がウェイボー公式アカウントで世論調査を行ったところ、回答者３万1000人のうち２万9000人がまったく考えられないと回答し、またコメント欄も荒れ、この調査はその後削除されたと報じました。
５月11日、中共国家統計局が延期を重ねてようやく2020年国勢調査の結果を発表しました。それによると、中国の総人口は14億を超え、新たな出生人口は2019年から1.5倍に増えたとしています。この件についてはインターネットでも議論が沸き起こりました。今回のデータの信憑性に中国人ですら疑問を抱いており、中国の出生率の低下は深刻な問題として認知されています。
「三人目解禁（開放三胎）」がウェイボーのトレンドキーワードに挙がり、ネットユーザーの間では「民は安心して生活できない（民不聊生）」という言葉が話題に上っています。その意味は、現代の若者は子供を持ちたいと思ってはおらず、その話はしたくもないという意味です。
陳光誠氏
「原因は、中共が一人っ子政策という殺人政策を長い間継続してきたからだ。もう40年にもなる。中国に住んでいるすべての人に影響し、人民の願いに完全に背いた、暴力的に行われた邪悪な政策だ。中共が一人っ子政策を今のように三人までに改めたのだからいいじゃないかという話ではない。正常な社会や政党において、人民が産む子供の数を決定できる権利を誰があなた（中共）に与えたのかということが問題の根源なのだ」
中共の一人っ子政策は、人口増加問題を緩和し、繁栄し始めた経済をサポートする必要があるとして実施されました。当時この政策に違反した家庭はすべて罰金を科せられ、職を追われ、堕胎を強制されました。現在「計画出産（一人っ子政策）」政策は「子供三人」政策に改められましたが、過去に苦しんだ人たちに対する償いを誰が行うのでしょうか。大勢のネットユーザーは当局を名指しで非難し、中共に謝罪を要求しています。
陳光誠氏
「社会全体の道徳が中共によって破壊されほとんど消えてしまった。将来的に中共が崩壊し、中国が民主化の道を歩んだとしても、破壊された道徳は数十年かけても取り戻せないだろう。ではこの一連の罪は謝罪すればそれで終わりになるのだろうか。中共は国際法廷で人道に反する罪に問われるべきだ」
ある評論家は、「中国社会の若者は、社会のリソースはすでに分配が終わっているため、彼らは血のにじむような努力をしなければ生きていけないと感じている。多くの若者が家を買わず、車も買わず、結婚も出産もせず、物を買わず、最低限の生存レベルの状態を維持することを選択している。彼らは『横たわる主義（躺平主義）』を重んじており、子どもを産みたいと思っている者などいない」と指摘しています。
陳光誠氏
「中国の現状は、すべてを自由化しても解決できない。なぜなら中国はすでに悪循環に陥っているからだ。中共の独裁政権、党のコントロールによって、社会全体の資源分配がおかしくなってしまった。多くの人が資源を手に入れることができず、平等な機会を得て生活し、発展することができない。だから子供一人育てるのが非常に重い負担となってしまった」
山東省臨沂市出身の陳光誠（ちん・こうせい）氏は盲人の人権派弁護士でした。地方政府による暴力的な一人っ子政策に対する抗議活動の先頭に立っていたことで、中共から凄惨な迫害を受け、のちに中国から脱出しました。陳光誠氏は取材を受けた際に、40年以上も前から行われている「一人っ子政策」という中共の人道に反する殺人政策が、中国にもたらした深刻な被害がすでに表面化していると指摘しています。
