広東省台山原子力発電所の放射性物質漏洩疑惑の報道を受けて、中共の国家核安全局は6月16日、燃料棒の破損を初めて認めたものの、放射性物質の漏洩については否定しました。 これに対し、東京工業大学先導原子力研究所の特任教授で、原子炉工学博士の奈良林直(ならばやし ただし)氏は、中共の規制当局に真実を明らかにするよう呼びかけています。
奈良林教授は、燃料棒の損傷で大量の希ガスが発生したことから、たとえ大規模な漏洩でなくても、かなりの燃料が損傷している可能性があると考えています。
原子炉工学博士、東京工業大学先導原子力研究所 奈良林直特任教授
「非常に過酷な事故、大問題な事故ではないとしても、穴が空が開いた状態でかなりの燃料が損傷して希ガスが外に出てしまっている事象だと思う。 欧米社会であれば、燃料が1本か2本、ピンホールが開いて漏洩することはある。その場合にはすぐその部分に制御棒を挿入して燃料の核分裂反応を止める。そうすると、放射性物質の漏洩が止まる。それができていないということは、かなりの燃料が損傷しているということになる」
台山原子力発電所の建設と運営に協力したフランスの原子炉製造会社「フラマトム(Framatome)」は、米政府に送付した書簡の中で、中国の安全規制当局が台山原発の運転停止を回避するために、外部の放射線量の許容限度を引き上げていると警告しし、技術支援を求めました。
いっぽう、中共当局は5本の燃料棒が損傷し、希ガスの漏洩を招いたと発表しました。これについて奈良林教授は、報道されている5本という本数について、原子炉を停止して燃料の検査を行うまではわからないので、信用できないと述べています。
原子炉工学博士、東京工業大学先導原子力研究所 奈良林直特任教授
「これが出てるということは、燃料ピンに穴が開いていると、それもかなりの多数本開いている。報道によると5本だと言っているけど、5本かどうかは原子炉の蓋を開けて中の燃料を点検しなければ、最終的にはわからない。それをしてないということなので、5本という値は信用できない」
原子力発電所の安全性を高めるために、各国は互いに協力し、真剣に取り組んでいます。奈良林教授は、安全性に関する問題を速やかに公表しない中国のやり方に対し、大きな違和感を持っていると述べています。
原子炉工学博士、東京工業大学先導原子力研究所 奈良林直特任教授
「我々は非常に真剣に取り組んで、安全性を高めようということで、ヨーロッパ、それからアメリカの人達と一緒に協力していて、頑張っている。私もアワードをいただいたけども、それだけの努力を払っている国と、中国の安全性に対しての速やかに公表しないという、あるいはそれを止めて点検するとしないということに関して、大きな違和感を持っている」
今年4月、中共外務省は福島第一原発の処理水の海洋放出に対し「無責任だ」と非難しました。台山原子力発電所ではこれまでに大規模な漏洩事故は起きていませんが、多くの不透明要素が残っており、今後の動きが注目されています。