北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記は6月17日、米国に対して「対話と対決の両方」の用意があると表明しました。これはバイデン政権が韓国大統領との首脳会談で対北朝鮮政策についての協議を行ってからおよそ1か月後のことです。報道をご覧ください。
北朝鮮の金正恩総書記は、バイデン政権について初めてコメントしました。
北朝鮮の国営メディアによると、金正恩氏は対話の必要性に加え、特に対決の必要性を強調しました。
これはバイデン政権が北朝鮮の完全な非核化という目標を繰り返し表明する一方、トランプ前政権が執った、一気に完全な非核化を受け入れさせる「グランド・バーゲン」を重視しないと述べたことを受けての発言です。
米国防総省元官僚でアジア問題専門家のジョセフ・ボスコ氏は、北朝鮮政権の声明は北朝鮮がどんな結果に対しても用意が出来ているという点で「比較的型通り」であるが、金正恩氏が対話にも言及したという事実は、それがいつものことではないだけに、良い兆候であると述べています。
しかし同氏は、パンデミックが北朝鮮に深刻な打撃を与えていると指摘し、農作物の不足や米国の経済制裁と相まって、このタイミングでこのような声明を出したことは、金氏がかなりのプレッシャーに晒されていることを示していると述べています。
米国防総省元官僚・アジア問題専門家 ジョセフ・ボスコ氏
「金氏は、バイデン氏が何らかの譲歩をしてくれるかどうかを見極めるため、バイデン氏に時間を与えていたが、彼は(譲歩)しなかった。彼ら(北朝鮮)は焦っており、出来るうちに取引をした方がいいと判断したのだと思う」
ジョセフ・ボスコ氏は、過去20年間において北朝鮮との協議で有効だった唯一の戦術は、トランプ前政権の「最大限の圧力」作戦だったといい、その作戦には3つの要素があると説明しています。
アジア問題専門家のジョセフ・ボスコ氏
「第1に経済制裁だ。これまで北朝鮮に課された中で、最も厳しい制裁だ。第2に軍事力による現実的な威嚇だ。トランプ前大統領は「炎と怒り」の声明を出し、北朝鮮が長距離ミサイル実験や核実験を続けるならば本気で軍事力を行使すると告げた。第3に人権問題だ。トランプ前大統領は国連と韓国国会での演説、一般教書演説の3つの主要な演説を行い、北朝鮮による残虐な人権侵害に大きくスポットを当てた」
ボスコ氏は、北朝鮮政権との協議で鍵となるもう一つの要素は、そのパートナーである中国に対して厳しい姿勢で臨むことだと言います。また同氏は、中共政権は北朝鮮の核戦力を自分たちの有利なカードとして利用していると指摘しています。
アジア問題専門家のジョセフ・ボスコ氏
「彼ら(中共)は、米国に対して北朝鮮というカードを使ってきた。北朝鮮問題で中国(共)が必要になるかもしれないと私たちに思わせて、人権・台湾や南シナ海・貿易等の問題で、厳しい態度を取らないように私たちを説き伏せるのだ。しかし実際に、彼らが助けてくれたことは一度もない」
ジョセフ・ボスコ氏は、バイデン政権は曖昧に妥協するわけにはいかず、厳しい姿勢で臨まなければならないと指摘します。
またボスコ氏は、バイデン大統領がトランプ前大統領の路線を継承することを期待し、その方が成功のチャンスは大幅に高まると考えています。