英国のマット・ハンコック保健相が執務室で女性補佐官と抱き合っている姿が監視カメラに撮影されました。ハンコック保健相は6月26日に辞任を表明しましたが、この画像がなぜ外部に流出したのかについて注目が集まっています。ハンコック保健相の執務室に設置されている監視カメラは中国メーカーのハイクビジョン製と報じられています。ハイクビジョンの監視設備は国家安全保障上の懸念があるとして、かなり前に米国政府のブラックリストに収載されており、ハイクビジョンは中共のスパイツールではないかとの声もあります。
保健省関係者と名乗るあるネットユーザーが6月17日、問題の動画をまずSNSに投稿しましたが、そのアカウントはその後削除されました。英国メディアはこの件を重くみて、この画像の流出先は「外国勢力」であり、なかでも中国だと考えていると報じました。ハンコック氏の執務室に設置されている監視カメラは中国メーカーのハイクビジョンの製品であることから、ハイクビジョンが中共のスパイツールとして使われているのではないかと疑う声もあります。
豪州の中国系研究者、張小剛氏
「このシステムは彼の執務室内のすべての状況を録画して漏洩もできる。この種の機械の情報が、ある人々によって収集されるなら、これは非常に憂慮すべきことだ。そのシステム以外にも、その他の政府部門、たとえば軍事情報にかかわる機関もある。それらの設備にも同じような問題はないのだろうか」
閣僚の執務室に盗撮用カメラが設置されていたことについて、当局は保安上の脆弱性が存在するとして緊急調査を進めています。
「民主中国陣線」代表の秦晉氏
「まず初めに、この動画の出所をはっきりさせる必要がある。もし英国政府が設置したのであれば、保安上の目的があってのことだろう。取り付け中にどの技術が介入し、その技術の中で中国製カメラが非常に重要な部分を占めているのかどうか。そのカメラは大量の情報を得ることができる」
前保健相のジェレミー・ハント氏はBBCの取材に対し「セキュリティの見地から、大臣の知らない間に自分の執務室が撮影されているなら、これは到底受け入れられるものではない」「我々は、なぜこんなことが起きたのかを理解する必要が確かにあるし、執務室にいる大臣の安全を確保する必要がある」と回答しています。
フィナンシャル・タイムズは大臣の執務室職員の話を引用して、個人の執務室内の活動がすべて撮影されていることについて非常に驚いており、執務室における国家安全保障にかかわる機密が漏洩する可能性を憂慮していると報じました。元保健省政務次官のスティーブ・ブリン(Steve Brine)氏は、「私が思い至った問題点は、誰がこれらの映像を見るのかということだ」と述べています。
張小剛氏
「独裁政権は隙を見て入り込むため、西側諸国の一部のインフラの中に隠れたリスクが存在し、それが脅威となっている可能性が大いにある。そうすると、本当に衝突が発生したときに、国の安全保障に極めて大きな問題が生じる可能性がある。これらの設備に対し、さらに厳格なあらゆる審査を今から行う必要がある。これには私企業も含まれる。彼らと中共のこれらの技術企業の間の業務提携についてはすべて審査する必要がある」
ハイクビジョンは中共に監視設備を提供し、新疆のウイグル人の人権を侵害したことで、早くから米国のブラックリストに載せられていました。米国連邦通信委員会(FCC)は、ファーウェイやハイクビジョンなど中国メーカー5社の米国での通信・セキュリティ監視設備の販売を禁止する計画を可決しました。これはこれらの中国企業の製品を米国ですべて「購入してはならない」とすることに等しい措置です。
張小剛氏
「ファーウェイは、今は主に携帯電話メーカーとして知られているが、実際には彼らは以前からずっとインターネット設備を手掛けている。例えば、多くの家庭用モデム、インターネットに接続する際の中継設備などは、いずれも西側諸国で広く使われている。豪州が世界で最初に、ファーウェイを自国の5Gに関与させないと宣言した国になったのも、これが理由だ。なぜなら彼らは国家安全保障に影響が及ぶのを非常に憂慮しているからだ」
現在42歳のハンコック氏は英国の防疫対策で成果を上げ、今年のWHO総会で台湾のWHO総会へのオブザーバー参加を強く主張した人物でもあります。
ある閣僚は今回の件は中共政府と切り離せない関係にあり、ハンコック氏は中共から攻撃されたのではないかと考えているとも報じられています。
豪州在住の中国人研究者、張小剛(ちょう・しょうごう)氏は、今回の事件には良い面と悪い面があり、少なくとも西側諸国の注意をひきつけ、西側諸国に非常に大きな警鐘を鳴らすことにはなったと考えています。