7月11日、キューバで数千人規模の反政府デモが行われました。こうした抗議活動はキューバでは異例で、国際社会からも注視されています。現地の様子をお伝えします。
7月11日から、キューバの首都ハバナを含む複数の都市で反政府デモが同時に行われ、数千人が路上で「独裁政権反対」「我々は自由を欲している」などのスローガンを掲げて抗議しました。
マイケル・ロドリゲスさん
「我々がここにいるのは(政府が)国民を弾圧するからだ。彼らは今我々を餓死させようとしている。ハバナは今破綻しており、我々には家もない。我々には何もない。だが彼ら(共産党政権)にはホテルを建設する金もあるのに我々を飢えさせている」
怒りに満ちた人々は現地の共産党本部を取り囲んで「キューバはあなたたち(共産党)のものではない」と叫びました。
今回のデモはキューバ建国以来最大規模の反政府抗議活動となりました。バイデン米大統領は7月12日、キューバ国民への支持を表明しました。
バイデン米大統領
「キューバ人は今、独裁政権に対し彼らの自由を強く求めている。我々はこうした抗議を久しく見ていなかったように思う。米国は彼らが普遍席な権利を守る時、断固としてキューバ人と同じ場所に立つ。我々もキューバ政府に暴力を行使しないよう促す」
キューバは今、過去30年で最も深刻な経済危機に見舞われており、食品や医薬品、電力供給が不足しているほか、疫病に対する政府の対応にも民衆が不満を抱いています。さらに共産党政権が長年にわたり国民の人権と自由を制限していることも、抗議活動がおきた要素の一つとなっています。
抗議デモに対し、キューバのディアスカネル大統領はテレビを通じて、米国による制裁が国内の不満の原因だと述べました。
キューバのディアスカネル大統領
「我々は米国政府の影響を受けたいかなる反革命分子も許容しない」
これについてホワイトハウスのジェン・サキ報道官は7月12日に記者会見で回答を述べました。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官
「これらの抗議活動はキューバの過酷な国民生活によって引き起こされたものであり、別の国が興したものではない。昨年だけで米国はキューバに対し1億7600万ドル(約194億円)相当の物資を輸出した。今年の上半期で米国は更にキューバに対し1億2300万ドル(約136億円)相当の鶏肉を輸出した」
キューバで政府に対する抗議活動が行われることは稀で、キューバで許可が得られる集会は通常、共産党の活動に限られます。これについて政治評論家の胡平(こへい)氏にお話を伺いました。
米国在住の政治評論家、胡平氏
「この種の国には国民が集まって抗議する自由や権利がない。ということはこの手の活動がひとたび起こったら、そこには間違いなく積もり積もった、様々な方面に及ぶ要求があるはずだ。キューバ社会の中には、彼らの体制内部も含め、改革を求めるかなりの勢力が存在すると推測する」
キューバのディアスカネル大統領は今年4月、キューバの最高指導者に正式に就任し、キューバを独裁しているカストロ一家に忠実な後継者とみられています。抗議活動が起こった後、キューバの治安部隊が出動し、私服警官が路上で抗議者を殴打している場面も撮影されています。また、キューバ当局がインターネット封鎖を行っているとの情報もあります。
胡平氏
「現在のキューバ共産党は、ソ連や東欧の共産党のように民意に従って政治を行う改革を望んでいないが、中国で89年の民主化運動が起こって政府が戦車を街に出動させ、あのようなことが発生するのも憂慮している。だからキューバはその中間の状態にある。よって、こうした状況で米国や国際社会が、キューバ国民の抗議活動に注目しているという意思表示をし、それらに対する支持を表明することは、非常に重要だと考える」
現在、すでに複数の米国議員がキューバの抗議活動に対する支持を表明しています。フロリダ州では100人以上のキューバ系住民が11日、キューバ国民を支持する活動を行いました。ほとんどの参加者の上の世代は1960年代にカストロ政権からフロリダ州に逃れてきた人たちです。
キューバの情勢が今後どうなるかについて、引き続き注目する必要があります。