河南省鄭州市では連日の豪雨によって洪水が発生し、多くの死傷者が出ています。水は引いたものの、市民の安全はまだ保障されていません。7月23日には複数の箇所でビルの傾斜や倒壊を知らせる情報が相次いでいます。
河南省鄭州市では連日の豪雨によりがけ崩れや洪水が発生し、多数の現地住民が死傷しました。
雨は降り止んで水も引き、住民らは自発的にブルドーザーを使って被災した住民を運んでいます。7月23日午後2時17分、災害救助情報から、鄭州市27区大同路3号のホテル「大同賓館」が倒壊しそうだとの重要通知が通達されました。
それとは別の住宅地でもビルの傾斜が伝えられ、住民が緊迫した様子で早く下りてくるよう大声で呼びかけている姿が撮影されました。
「15号ビルは早く下りて来い!ビルが傾いている。15号ビルの人はすぐに下りてこい。ビルが傾いている!」
鄭州市民は洪水から逃れられたものの、車は水に流され、住む家さえ確保できない状態です。
鄭州市は今回の洪水によって路面陥没が多数発生し、穴に落ちてしまう歩行者が後を絶ちません。そのため路床の品質に問題があったのではないかと疑う声もあります。2018年に鄭州市が打ち出した「スポンジ都市建設計画」にはこれまでに534億8000万元(約9120億2900万円)が費やされました。都市化が進むにつれ、元々は農村部にあった河川が塞がれたり埋め立てられたりして、市街地の水の排出システムが機能しなくなっています。当局は、今回の洪水は過去の記録を更新する「1000年に一度」の災害であり、すでに排水システムの負荷の上限を超えていると発表しています。
ドイツ在住の水利専門家、王維洛氏は「鄭州市に対する当局の発展計画が、今回の悲惨な災害を直接的にもたらしている」と述べています。
鄭州市洪水・干ばつ対策本部は内部通知「内部明電」のなかで、常庄ダムの堤防に深刻な漏水が発生したため、急遽放水を行うと記されています。
王維洛氏は、鄭州市は黄河下流に位置しており、黄河の全ての水は三門峡(さんもんきょう)のゲートバルブを通過するが、ゲートバルブは手動で開閉するとして「放出による洪水は人為的な調節によって起きたものだ。放出によって起きる中国のこうした洪水は、人の手によって生まれており、放出量は人が調節できるものだ」とも述べています。
ドイツ在住の水利専門家、王維洛氏
「もしこの水が裏側の場所から流れてきたのであれば、とても小さい。それは堤防からの漏水だ。つまりその水流が水の圧力を受けて、ダムの裏側に発生するのだ。もしその時に何の措置も講じられなかったらダムが決壊するだろう。決壊しそうなことが分かったり、漏水や危険性を察知したりしたらすぐに放水する。だが放出された水は、下流で起きている洪水のほとんどの部分を占めているのだ」
官製メディアの人民日報は7月20日の22時30分に、常庄ダムに危険な状況が生じたため、20日夜に放水が行われたと発表しました。一方で鄭州市の公式ウェイボーアカウント「鄭州発布」は7月21日午前1時、鄭州市中牟県(ちゅうぼう-けん)の常庄ダム洪水防止対策が非常に厳しい状況に置かれたため、20日午前10時30分に常庄ダムは下流に向けて水の放出を始めたと報じています。中央電視台は「上流に位置する常庄ダムでは20日19時に最高水位131.1メートルに達し、最大放出量は525立方メートル/秒」と報じました。
王維洛氏
「(官製メディアは)下流の水の最大流量は600立方メートル/秒だと報じているが、我々は600平方メートル/秒の洪水のうち525平方メートル/秒がダムから放出された水であることを知っている。それは彼らが放水したものだ。つまりこの洪水は彼らがダムから放水して発生させたものであって、自然に生じたものではないのだ。なぜなら彼らが水量を調節したからだ」
7月20日の豪雨前の24時間で鄭州市にはすでに150ミリメートルを超える豪雨が発生していました。20日午前に気象局は赤色警報を発しましたが、政府は出勤停止や地下鉄の運休、浸水地帯での走行規制といった措置は講じませんでした。
ある中国のネットユーザーは「鄭州の豪雨は本当に『千年に一度』のものだったのか?」「中央電視台は最初、40年に一度と言っていたのに、夜になるとメディアが『千年に一度』と言い始めた。翌日の早朝になると河南省のある部門は『5000年に一度』にレベルを上げた。これはつまり、『大禹(だいう)の治水神話』以来、中国史上最も深刻な豪雨だったと言いたいのか?」と投稿しています。
官製メディア「環球時報」の胡錫進編集長は、河南省の水害についてウェイボーアカウントに、「鄭州で発生した1時間201.9ミリメートルの降雨は異常気象による必然的な結果だ」と投稿しました。ネットユーザーは、「このように言えば人為的な(放水による)責任はないということになる」と投稿しています。